スーパーのエース、斉藤さん
みなさんお疲れさまです。
USBが何度やっても差さらない夏木です。
「あれ?反対か?いや違うな…。こっちか?…やっぱり逆なんかい!」
と無駄に時間を要してしまいます。
どこに挿れていいのか分からない童貞のようにあたふたしてしまうんですよね。
さて、今日は久しぶりに地元の町について書きます。
過去に何回か書いているのでご存知の方もいらっしゃると思いますが、渋谷でストリートファイトをする少女が育つような町です。
町に一軒だけのスーパー
都外の人だけでなく、今現在都内に住んでいる人の多くが、おそらく「東京には店がたくさんある」とお思いだろう。
ところが私の住んでいる下町は、店が極端に少ない。
れっきとした23区、通称・特別区内であるにも関わらず、この地は「触らぬ神に祟りなし」とばかりに店舗が出店してこないのだ。
理由は主に3つ。
1.人口が少ない
2.新規の店を地元の人間が潰しにかかる
3.交通の便だけは良い
1はそのままの意味で、出店側に利益が見込めないのだ。
2に関しては下記の記事を参照して頂くとして。
3が大きな要因だ。
腐っても23区内なので、電車1本で都心に出られてしまう。
地元の人間は小学生から渋谷や原宿で買い物をするため、自分の町にオシャレな店がなくても別段困らないのだ。
さてそんな私の町に一軒しかないスーパーで働く、天才的パートさんが今回の主役だ。
絶対的エース、斉藤さん
かつて中日で鉄腕として知られた権藤博選手を評して、世間ではこう言われた。
「権藤、権藤、雨、権藤」と。
斉藤さんは週5日ペースでスーパーへ働きに来ており、その圧倒的存在感から私は「斉藤、斉藤、雨、斉藤」と評している。
とにかく斉藤さんがいるといないとではスーパーの様相が変わる、と言っても過言ではないほどの働きぶりなのだ。
レジ打ちの速さはもちろんのこと、状況に応じて閉じていたレジを開け、列の混雑を解消する観察眼。
お年寄りには随時声掛けをし、会計の終わったカゴをサッカー台(荷物を詰める台)に運んでいくフットワークの軽さ。
そして常連客に対しては「あ、今日卵ミックスサイズ特売だけど、このLサイズ卵で平気?良かったら取り替えてくるよ!」という気配り。
控えめに言っても神である。
私は心のなかで斉藤さんをエース、いや大エースと呼んでいる。
沢村賞3回受賞、毎年のように2桁勝利を挙げてチームを優勝に導く絶対的エースなのだ。
通算防御率は驚異の0.83といったところか。
そんな斉藤さんは私のような半端者にも、とてもやさしい。
顔パスが利く
このスーパーは、毎週決まった曜日に「タバコデー」というものがあり、その日にタバコをカートンで買うと、1カートンにつきボックスティッシュ1個を付けてくれる。
禁煙の波が押し寄せる現代においては信じられないサービスかもしれないが、この町は喫煙者が多いため、この日はタバコが飛ぶように売れるのだ。
タバコデーにはカウンター内にあらゆる銘柄のタバコが詰まったダンボールが所狭しと置かれ、ボックスティッシュがテーブルに積み上がっている。
私も喫煙者なのでタバコデーを狙って買いに行くのだが、みなさんご存知の通りタバコはやたらと種類が多い。
〇〇の5mlだの、赤マルだのと、タバコに詳しくない人は右往左往だ。
しかし斉藤さんは違う。
タバコデーに私の姿を発見しただけで「タバコ買う?いつもの?」と声を掛けてくれるのだ。
「あ、お願いします!」
「8mlだったよね。はい、じゃあこれね」
素早く私の銘柄を発見し、お会計してくれるのだ。
そこには何の邪心もなく、ただただ私を「常連のお客さん」として覚えてくれている。
さらにすごいのは、斉藤さんはひとりで店の体質まで変えてしまったことだ。
変わるスーパー
先に「お年寄りのカゴをサッカー台まで運ぶ」と書いたが、実はあれは斉藤さんが独自で始めたサービスだ。
彼女の話によると、最初は「重いから運んであげたほうが良いだろう」という善意だったらしい。
しかし社員にある時指摘された。
「斉藤さん、そこまでしなくていいから。周りの従業員がそれに倣い始めたら負担が増えるでしょ」
「お年寄りはゆっくり動くから、レジ台から荷物を下ろすのに時間が掛かるんです。それを待っていたらレジ業務が一旦止まってしまう。だったら私達がサッカー台に持っていったほうがずっと効率的ですよ」
こうして社員を黙らせ、斉藤さんは今日もお年寄りの荷物をせっせと運ぶ。
この話を聞いた時、私は感動したと同時に、斉藤さんという人の能力の高さに脱帽した。
職業に貴賎は無いが、斉藤さんはスーパーのレジ打ちにしておくにはもったいない逸材なのだ。
しかし斉藤さんがいなくなれば、このスーパーは立ち行かなくなるのでは、というぐらいの影響力を持っている。
今は週に一度しか行けないが、斉藤さんの「夏木さん、タバコでしょ?」というイタズラっぽい笑顔を見る日が楽しみで仕方ない私です。
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