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秘すれば花

今月5日から、カーリングの北京オリンピック最終予選がオランダで開催されている。

ニュースでも取り上げられているのでご存じの方も多いと思うが、大会直前にある問題が発覚した。

スポンサー企業の中にアダルトグッズ会社があったため、テレビ中継をしないという判断が各国で下されたのだ。

さて、アダルトグッズ会社はスポンサーとして相応しくない存在なのだろうか。



氷上の競技はロゴを簡単に外せない

問題となったのはオランダの企業「Easy Toys」。

実際にサイトを訪れてみたところ、いわゆるアダルトグッズの通販サイトで、ごく一般的なラインナップだ。
普段からアダルトグッズサイトを利用している私が言うのだから間違いない。

カーリングでは競技の舞台となる氷の中にもスポンサー名を入れるため、テレビ中継するとなると「アダルトグッズ通販サイトのロゴ」がバーンとお茶の間に映し出されることになる。
これを知った各国の放送局は、事態を重く受け止めた。

「問題になるならその企業名だけ取り除けばいいんじゃない?」と思う人もいるだろう。

しかし、カーリングのリンクはまず土台となるコンクリートにターゲットマークや企業名を描き、その上に氷を張っている。
そのため、製氷後にスポンサー名を消すにはまず氷を解かさなくてはならず、全体の作業に一週間はかかるのだ。

「品位や節度を守る」「青少年に及ぼす影響」という観点から、NHKは初日に開催されたミックスダブルスの試合を放送中止とした。



文化の違い

突然の事態に大会関係者は困惑した。
プロジェクトマネージャーのスティップハウト氏は「世界連盟と明確な合意を結んだ。許可をもらっている」と話し、当のEasy Toys担当者も「私たちはきちんとした会社だ」とお怒りのご様子。

だが、問題はきちんとした会社かどうかではなく、アダルトグッズを扱う企業が表舞台に立つ是非だ。

企業の商品にはターゲット層があり、その狙い通りの消費者が多く閲覧する場所に広告を出す。
朝方の女児向けアニメにはおもちゃのCMが流れるし、深夜番組には体力回復サプリや求人サイトなんかのCMをよく見かける。

ところがスポーツに広告を出す場合は、商品そのものよりも「企業名の認知度を高めたい」「優良企業としてアピールしたい」という狙いからスポンサードすることも多いのだ。

おそらくEasy Toys社は、自分達の仕事に誇りを持っている。
社会貢献をしているという自負もあるのだろう。

何故そこまで堂々と表舞台に出てくるのかというと、オランダという国が、ある意味で特殊な性教育を行っていることに関連している。



5歳から始まるオランダ式性教育

多くのオランダの学校では、5歳から社会における性的多様性を尊重することを学ぶ。

「相手の意思を確認する」「愛情の大切さ」といったところからスタートし、徐々に肉体的な接触や仕組みについても教えていく。

「セックス=妊娠」ではなく、「どうしたら安全なセックスができるか」「パートナーと安心して楽しむには」という視点からの教育を、子供の頃から多くのオランダ人が受けているのだ。

性を「秘め事」ではなく「ハッピーなこと」として捉える。

こうした土壌があるので、当然アダルトグッズ企業も堂々と前に出てくるというわけだ。

しかしだからといって「オランダの性教育は素晴らしい!」と手放しに褒めるわけにもいかない。

もちろん日本でも見習わなければならない部分は多いのだが、そもそもオランダを始めとした欧米では、キスやハグといった肉体的接触が生活の一部となっている。

日本のような「恥じらい文化」の国には、オープンな性というのはなかなか馴染みにくいだろう。



エロスと背徳感

カーリングの話に戻る。

問題の大きさをかんがみ、EasyToysは氷上の自社ロゴの上に「#equality for all(全ての人に平等を)」と書かれたシートを被せるという代替案を提出し、世界カーリング連盟がそれを了承した。
これによって11日からの女子・男子の試合がNHKで無事放送される運びとなった。

今回の問題を受けて「アダルトグッズ企業を差別するな!」という声も上がっている。
が、私は全く逆の意見だ。

アダルトなものは日陰にいてほしい

差別や偏見などではなく、むしろ大事に思っているからこそだ。

オランダの言う「笑顔で明るいセックス」は、私にとって気色悪いし第一全然興奮しない。

「イケナイこと」という背徳感があるからこそイイんじゃないか!

大和撫子としてそこだけは強く主張しておきます。


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