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コンタクトレンズと生きていく

私とコンタクトレンズとの付き合いは長い。
かれこれもう20年以上になるだろうか。
普段コンタクトをしている人は大抵メガネと併用しているので「外ではコンタクト、家に帰ったらメガネ」と使い分けていたりする。
が、私はコンタクト一本槍だ。
万が一の為に一応メガネも持ってはいるが、登板機会はほぼ無い。
何故か?
それは私にとってのメガネとはブス製造機だからだ。


メガネにも種類がありまして

「メガネ=ブスとか最低!」とメガネ女子に怒られそうなので説明させてください。
度が入っていない、いわゆる伊達メガネや、そこまで度数が強くないメガネはオシャレです。
知的な雰囲気が出せたり、ファッションアイテムとして素敵だと思います。
全然ブスにはなりませんから安心してください。

問題は度の強い、極度の近眼用のメガネだ。
あれはいけない
あんな恐ろしいもの、あってはいけない。


小学生時代はメガネっ子だった

母は教育熱心な人だったので、私が生まれる前から娘専用の本棚を用意していた。
幼児用の絵本から偉人の伝記集、歴史小説や世界地図まで揃える気合いの入れようだ。
母の目論見にまんまと嵌まった私は、幼い頃から本を読み漁って育ち、小学校に上がる頃には立派なド近眼となっていた。

初めてメガネを作った頃はまだ「一番前の席でも黒板が見えにくい」程度だった。
しかし近視というのはどんどん進んでいくものなので、毎年の視力検査の度にランドルト環が見えなくなっていく。
当然メガネのレンズも徐々に分厚くなっていき、最終的にはキテレツ大百科の勉三さん並みの牛乳ビン底メガネに到達した。
また平成生まれには分からない例えをしてしまって申し訳ない。
今は技術の進歩により、度数に関わらずレンズを薄くすることが可能だが、当時は「度数を上げる=レンズが厚くなる」だったのだ。


初めて自分の顔を知る

そんな私に人生のターニングポイントが訪れる。
中学受験で志望校に合格した記念として、コンタクトレンズを買ってもらえることになったのだ。
恐る恐る目にレンズを入れ、鏡を見た時の衝撃は忘れられない。
「私って、こんな顔だったんだ…」

視力が良い人に私の近視度合いを分かりやすく説明すると、スマホの画面を目から10cmの位置まで近付けないとピントが合わないレベルだ。
つまり足元は全く見えないので、歩行にも危険を伴う。
そのため裸眼で外を出歩くことは死を意味すると言っても過言ではない。

小学生時代をメガネで過ごしていた私は、鏡に映る自分の顔はメガネ姿しか知らなかった。
裸眼で鏡を見るには、かなり顔を近付けないといけないため、目や鼻といったパーツだけを見ることはできても全体像が把握できないのだ。
コンタクトレンズのおかげで、ようやくメガネ特有の煩わしさから解放された。
ラーメンの湯気でレンズが曇るとか、お風呂の度に手探りでシャンプーを探さなければいけないとか、そうした小さな不満が無くなったのだ。
「もうメガネ生活に戻ることなんてできない」
生活する上での利便性から、私はほとんどメガネをかけなくなっていった。


コンタクトレンズの弊害

私はハードコンタクトレンズを使用しているため「ワンデーアキュビュー」のような使い捨てではない。
ソフトコンタクトレンズは使い捨てできるが、私のように近視に加えて強度の乱視が入っている人間は、ハード一択なのだ。
技術の進歩によりハードも使い捨てのものが出てきているが、極度の乱視用は店に取り置きが無いため、いちいち注文で取り寄せる必要がある。
しかも高価い。
そのため使い捨てではなく、1年間は使用可能なレンズを装着しているのだが、たまにうっかり失くしてしまう。
ハードはソフトと違い、目から弾き飛ばす要領で外すため、どこかに飛んでいってしまいがちなのだ。
そうなると急いで注文したとしても、2日間は片目で生活するわけで、非常に不便となる。

コンタクトレンズと生活を始めて10年が経った頃だろうか。
当時私はパソコンを使う仕事をしていたのだが、お風呂で片方のコンタクトレンズを失くしてしまった。
必死に探したが見つからない。
諦めて新しいコンタクトレンズを注文したが、連休が重なる時期だったため、届くのは3日後だった。
しかし締め切りは2日後。
仕事に支障をきたすわけにはいかないと、私は意を決してメガネ屋を訪問することになる。


そして2度目の衝撃

片目だけコンタクトレンズを嵌めた状態で、何とかたどり着いた駅ビルのメガネ専門店で、新しいメガネのフレームを選んだ。
いくつか試着して「あ、これカワイイかも」と思ったものを選択し、視力検査を経てすぐに私専用のメガネが出来上がった。
「装着具合などで微調整しますので、かけてみてください」
と店員さんに言われ、コンタクトレンズを外した状態でかけてみる。
うむ、視界は良好だ。
フレームから外れた場所はもちろんボヤケているが、レンズの範囲はしっかりくっきり見える。
「大丈夫です」
そう言って店員さんを振り返ると、何故かその顔が固まっていた
「で、ではお会計を…」
とキョドる店員さんに疑問を抱きつつも会計を済ませた私は、久しぶりのメガネにちょいとテンションを上げ、自分のメガネ姿を見ようとビル内のトイレに入った。
そして鏡を見て、2度目の衝撃を受ける。
「えっ…。なにこのブス…」


メガネがもたらす弊害

メガネの中でも極度の近眼用のレンズは、屈折率がハンパない。
そのため本来の目の大きさよりもかなり小さく見えてしまう
目の大きさは顔のパーツの中でも大きな比重を占めているので、どんなにキレイな女優さんでも「近眼用メガネ」をかけると途端にブスになるのだ。
これは「メガネを取ったら美人だった」という古来からの都市伝説を裏付ける証拠とも言える。

こうした経緯を経て、私はコンタクトレンズ一本槍を貫いている。
ちなみに上記の「緊急的にメガネを買った日」は、恥ずかしさのあまりタクシーで家に帰った。
自分のメガネ姿を世間に晒したくなかったのだ。

あの日買ったメガネは¥15000だった。
だが、買ってから3回も着けていない。
私は自分の美意識として「近眼メガネを着けた自分」をどうしても許せないし、未だにそのメガネ姿を夫にも見せていない。
もうコンタクトレンズと生きていくと決めた。
視力が悪くてメガネで過ごしている人には「アレルギーでコンタクトレンズを着けられない」といった理由が無いのであれば、ぜひコンタクトを検討してみてほしい。
メガネを外すだけで、世界は一変するのだから。

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