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ドトールで泣いていたスーツ姿のあなたに
都心から少し外れた、駅前のドトール。そのカウンターで泣いている、スーツ姿の女性がいた。涙を流していることを出来るだけ周りに悟られないように、声を押し殺しながらティッシュで目頭を押さえていた。
その人は自分の不出来さに絶望し、泣いていた。
新卒で入った会社で研修を終えると、飛び込み営業をすることになった。出来るだけ多くの企業を周って名刺を集めること、話をして商品を買ってもらうことがその人に課せられた業務だった。
必ず同期よりも良い成績をあげようと、初めは意気揚々と業務に取り組んでいた。不安もありつつ、ちょっとした自信もあった。学生時代に長期インターンでの営業経験があったので、同期たちよりも一歩、二歩くらいは先を行っていると思っていたからだ。
しかし、その思いはすぐにくじかれることになる。
1日に10km以上歩き、何十件もインターホンを押し、とにかく人に会う。名刺交換をお願いする。毎日毎日それをひたすら繰り返す。
1、2週間もするとちらほら受注を取ってくる同期が出てくる。
半年間の営業経験で作った一歩、二歩の差はあっという間に詰められて、簡単に追い抜かれていった。
自分は受注どころか、まだ見込みのある企業すら見つけられていないことに焦りを感じながらも、足を動かし、インターホンを押し、人と会いまくった。
営業の本も読みまくった。こんな自分でも出来るようになる方法がきっとあるはずだと信じて、とにかく読みあさった。
そんな日が2ヶ月続いたある日、ついにインターホンを押すことができなくなった。
今日も企業を周らなきゃ、名刺を獲得しなきゃ、まずはたくさん会わないとと思ってはいるのに、どうにも体が動かない。
少し前から心身の不調を感じるようになっていた。仕事を終えて家に帰ると何もする気が起きない。あんなに好きだったバラエティ番組も見る気にならない。朝起きるとお腹が痛い。とにかく仕事のある日は1日中憂鬱で仕方なかった。
途方に暮れて、駅前のドトールに入った。他の人が出来ているのに自分は出来ないこと、出来るようになる気がしないことに絶望して涙があふれて止まらなかった。
ーーー
4年前、人と比べて目の前が真っ暗になっていたあの時のわたしに、そして今希望を持って入った会社で絶望しているあなたに伝えたい。
自分を責めないで。どうにか「出来る」人になろうと自分の心を削らないで。あなたが輝ける場所は必ずある、と。
それは「逃げ」だと言う人もいるかもしれない。でも自分の心身を病んでまで、病みそうになるまで立ち向かわないといけないことなんて無いのだとわたしは思う。
頑張り続けるその先に、自分が本当にやりたいことはないのだと気が付いた時、そしてこのままでは自分は崩れてしまうと感じた時は逃げたっていい。
その代わり、決して諦めることなく自分が輝ける場所はどんなところなのかを考え続け、探し続けて欲しい。
それはすぐには見つからないかもしれない。それでも自分のやりたい気持ちに素直になり、全力でやってみて、振り返ることを忘れなければ必ず見つけることができる。
偉そうなことを言ってきたけど、実は今のわたしもまだまだ自分が輝けているとは言えない。何だよ口だけかよ、と思った方もいることだろう。それでも、今のわたしには自分の心に素直に「輝ける場所を見つける覚悟」をしたことで、少しずつ見えてきているものがある。
ふとした時に涙が出るほど仕事を辞めたいと思っているあなたへ。
今のわたしにできることは、泣いているあなたの背中をそっとさすることだけだけど。
逃げたっていい。あなたは必ず輝ける。
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