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戦争論より3 『戦争論』が説く最強のリーダーシップ

私が現代語訳した新刊の古典、
超約版・戦争論』(ウエッジ、本体1100円)
について、
クラウゼヴィッツが本書を書くに当たり、
影響を与えた人物が2人いる……という話で、
前にフリードリッヒ大王を紹介しました。

そこで今日はもう1人の人物、
クラウゼヴィッツも軍人として彼が率いる軍と戦い、
コテンパンにやられました。
ナポレオン・ボナパルトですね。

1769年にコルシカ島に生まれたナポレオンは、
フランス王国の軍に入ります。
その後、この国で起こったのが、
王政を打倒したフランス革命でした。

各国がこの革命を止めようと介入するのですが、
混乱したフランス国内で
若きナポレオンはことごとく他国軍を破り、
ヒーローにまつりあげられました。

その後、彼は皇帝に君臨して各国に反撃、
イギリスを除いたヨーロッパのほぼ全土を
支配するのですが、
ロシアへの遠征に失敗して以後、失墜。
最後はセントヘレナ島へ幽閉され、
怒涛の生涯を終えます。

そんなふうにあっという間に、
ヨーロッパ各国の軍を崩壊させたナポレオンですが、
クラウゼヴィッツは彼の天才性を認めていません。
彼を出世させた「ワーテルローの戦い」ですら、
「たまたま勝っただけ」と言っているんです。

では、なぜナポレオンが連勝したのかといえば、
彼のリーダーシップを認めています。

軍隊から登場し、部下たちの心を掴んでいた彼は、
リーダーのために命を懸けられる
多数の勇敢な兵に囲まれていた。

一方で他のヨーロッパの軍はほぼ傭兵に頼り、
モチベーションが低いどころか、
いざという場合に逃げてしまう奴らばかりだった
……というわけです。

「いくたびかの戦場での経験を通して
鍛え上げられた軍隊が
どれほどの武功を立てるかを知りたければ、
ナポレオンが侵略に用いるために訓練した軍が、
敵の激烈な砲火の中でも毅然と立っている姿を見ればいい」

実際に軍の将校であったクラウゼヴィッツは、
『戦争論』でリーダーのあり方について述べています。
その根本にあるのは、
どれだけ部下を「兵力」としてでなく
「人間」として見ているかなのでしょう。

たとえばナポレオンは遠征で兵隊たちが飢えないよう、
ときには略奪行為さえ認めていました。

しかし、そうせざるようにならないため、
常に補給を最優先の課題とし、
これが現代の「ロジスティック」という言葉になっています。

また「兵の1人ひとりが携帯できる食料」ということで、
開発されたのが「缶詰」だったんですね。
それだけ「部下たちが最高の状態で戦えること」に
頭を使っていたわけです。

この考え方は、もちろん会社のような
ビジネス組織にも当てはまること。
だから『戦争論』は、現代世界のリーダーにも
愛される本になっているわけですね。

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