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医師国家試験とエアピアニスト

今年は発熱があったら医師国家試験が受けられなくて、再試験も無いようなので受験生は大変です。


僕の時は試験は3日間あったのですが、最近は2日間でやるようです。

だいたいこういう試験は、後の世代になればなるほど大変になる印象があるので意外でした。


僕より少し上の先生方は2日間の試験だったようで、さらにさらに大先輩の先生の時は1日で試験が終わる時代もあったようです。

僕の世代が一番大変だったんじゃないか、悲しい。


実際3日間の試験ってめちゃめちゃしんどくて、日に日にご飯が食べられなくなっていくんですよ。これまでいろんな試験を受けましたが、僕個人としてはぶっちぎりでしんどかった試験ナンバー1です。


僕が受けた試験会場では、1つの長い机に2人の受験生が座ってテストを受けました。隣の人は、不正をしないように必ず別の大学の受験生が座るようになっていました。


ですから、隣の受験生は全く知らない人なんです。

僕の場合、この隣の受験生がやっかいでした。


試験が終わったあとに、机でエアピアノを始めたんです。

カタカタカタと。


うっとおしいったらありゃしない。ただでさえ気が立っている状態です。最初の試験が終わった後に『うるせーんだよ!』と言ってやろうかと思いました。


しかし、当時、僕の感覚はめちゃめちゃ研ぎ澄まされていました。


待てよ、これは試されているのかもしれない。『北風と太陽』だ。


隣の席のエアピアニストとは、これから3日間同じ試験を受けないといけません。険悪な関係になるのは、どう考えてもメンタル的に良くない。イライラすると、落ち着いて考えれば解ける問題も間違えてしまう。


だから僕は一つ目の試験が終わった瞬間、彼に声をかけました。満面の笑顔で。


『さっきの試験難しかったなー!』


エアピアニストは知らない男からいきなり声をかけられてびっくりして、返事します。


『そ、そうだったね・・・・』


会話のキャッチボールが始まりました。こうなればこっちのもんです。どこ大学なん?研修先の病院は?何科志望?いくらでも共通の話題があります。


二つ目の試験が始まる頃には、エアピアニストはちょっとした知人くらいになっていました。

二つ目の試験でも、エアピアニストはエアピアノを始めました。


その瞬間、僕は自分の鉛筆で机をトントンと2回叩きました。


そうすると、エアピアニストはエアピアノをやめました。

その後3日間、エアピアニストはエアピアノを弾きませんでした。


結果、僕もエアピアニストも国試に合格しました。(相手の番号も隣だから覚えていた。)

この問題って、例えばマンションの騒音問題とかとも似ていて、上の階の人が知らない人でドタドタうるさかったらとても腹が立つでしょう。

しかし、知っている人、仲良い人なら同じドタドタでも腹が立たないかもしれない。逆に夫婦喧嘩かしら?お子さんは大丈夫?みたいに心配になることすらあるかもしれない。

もし騒音自体が凄く嫌な場合も関係性ができていれば注意もしやすい。


関係性の構築って大切だなーと思います。


つくづくあの時エアピアニストに怒りをぶつけるような対応をしなくてよかった。

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