「妊娠出産は命懸け」ポストで感じたこと①
40代の女医なつ🌱です。
こんににちは。
本日は雑談です。
Xで炎上したポスト
先週、Xで女性のポストが香ばしく燃え上がっていました。
そしてX上の医師たちもかなり怒っていらっしゃいました。
私も最初読んだ時は「イラァッッ!!」としてしまいした。
私は産婦人科ではありませんが、大学病院時代リスク妊婦さんもコンサルでたくさんお会いしたので、どうしても感情が動いちゃいましたね。
ポストの内容はこちらです。
この方は、
「女性社会も辛いけど、男性社会も辛いですよ、男性は黙って耐えてますよ。お互い支え合っていけるといいよね。」
と、実は言いたかったとおっしゃってました。
いやいや、ちょっと無理がある。
もし本当にこの深い(?)真意を伝えたかったのなら、伝え下手すぎる。
読む人の読解力がないとか、前後を読んでないとか、短いポストだからとか、言い訳を足してみてもどうも厳しい。
このポストにある言葉選びだと、
「出産は命懸けと思ってる女性」に喧嘩売ってるとしか見えない。
喧嘩売って炎上商法なら大成功。
そういう仕事も必要なこともあるでしょうから、大変ですね、ほんと。
人の争いにはいつも学ぶべきことがある。
以前もXで炎上した産休クッキーについてnote書きましたけど、人の争いはいつも学ぶことがあるなと思います。
THE「人の振りみて我が振り直せ」ですね。
https://note.com/natsujoi/n/nece2ab2dadab?magazine_key=m1ce96b773f7a
これも考えさせられたな。
お、どちらも妊娠にまつわるお話ですね。
私は人間観察がわりと好きで、子供が生まれてからは、子供に将来こういう状況の時なんて説明しよう、こんな気持ちの時になんて寄り添ったらいいだろうか、考えているので、
人の良いところや悪いところ、欲望が、対面じゃないからこそ抑制なく思考が文章となって丸出しになっている「X」は本当に興味深いし、勉強になるなと思います。
というわけで、今回このポストにまつわるあれこれで個人的に感じたこと、勉強になったな、って思うことをつらつら描いてみようと思います。
(え?ここから本題なの?ドン引きー。キグー、私も〜。)
医師たち(特に産婦人科)の怒り
「妊娠出産は命懸け」かどうかは個人の感情論。という話は置いておいて、X上で怒りをあらわにした先生方の気持ちは本当によくわかる。
産婦人科の先生が安全な周産期目指して外来や(特にXにいる方は)SNSで、周産期リスクの啓蒙活動をしていることも知ってる。
マタ旅とか喫煙とか脳内お花畑で、リスクに自ら突っ込もうとする妊婦さんに「マジでお産舐めんな」って、外来で口酸っぱく言うてんのに、
頑張って仕事してる横で、
リスクも知らん経験もない素人に
「産科死亡率少ないじゃない?命懸けじゃないよ〜大袈裟〜」
なんて言葉、
知ったかぶりで言われて、しかも同調している人がいてバズってたら、使命感持って烈火の如く批判するわ。
しかも産婦人科の先生方は、目の前で、本当にミゼラブル(悲惨)な症例の経過をたくさん経験しているだろうから(20−40代の健康な女性が急に亡くなる、しかも子供も無事かわからない、なんて悲惨しかないからね)、そりゃあ「黙っとけ、この素人が。」って殺意湧くよね。
私も、患者が今後の加療でクリティカルな服薬を「自己中断しました〜、薬は少ないほうがいいし、飲んでも良くなった感じしないし♡」
みたいに言ってきた時は、心の中で「はーい!閉店ガラガラドーン!!もう外来来ないでねー!!♡」って思いながら、笑顔でもう一度説明してる。
対面だし、大人だし、患者のコンプライアンス悪いところまで受け止めて、伝えるところまでが仕事だから、頑張ってるけどね。(まあ時折投げ出したい時もある。)
医者っていうのは無意識の正義感がある
今回ポスト主も指摘されてるんだけど、劣化の如く怒り出した医者たちに対して「そんなこと言ってない、趣旨が違う、私は男性社会の大変さの話をしていた、見当違い、賢いはずなのに読解力がない、曲解して叩いてくる」って、批判も起きていました。
私個人としては、上記のように「そのポストでその趣旨が伝えたかった、は、言い訳にしても苦しいっしょ。」と思ってるんだけど、
まあ、確かに一個人の他人のポストだからね。
勝手に1人でつぶやいた個人の認識について、急に知りもしない他人が顔出して攻撃していくのは良くないよね。しかも多数で。
有名人だからって、影響力があるからって、どんな理由があろうと、急に出て来た知らない人に「お前の考え間違っとるわ!」って言われたら、誰でも「は?!!うるさいわ。」ってなる。
でも今回、それをわかっているはずの医師たち(わかってない、ただ叩きたい人も少なからずいるとは思うが。)が、敢えて一個人に意見していた。
それはなぜかというと「妊娠出産は命懸けではない」と言うパワーワードで、現妊婦やこれから妊娠するであろう女性、その配偶者たちが、妊娠出産のリスクを低く捉えて、自己での周産期管理が疎かになることを懸念してだろう。
私が思うに医者は良くも悪くもある程度勉強して医者になったくらいなので、公衆衛生の意識や医療における正義感は強い、意識して行動している人もいるが大多数は無意識だ。また、悲惨な症例、目の前で何もできなかった患者を見送った経験が、またその意識や正義感を強くする。
だから今回のようなことが起こる。
無意識の強すぎる正義感は争いを呼ぶことがある。戦争の根源は大体これだ。お互いの正義のもとに争う。これは医療者間でもたまに問題となる。
これは医者として意識して過剰にならないよう自己を管理すべきだと思っているが、話が長くなるから今回はこれ以上触れない。
「怒る」はその人が大事にしている事だから
また、「怒る」って行為はそもそもエネルギーがいる。
毎日怒っているアンガーマネジメントできていないパワハラ野郎もいるが、大多数の良識ある大人はできれば怒りたくないだろう。私は争いが嫌いな性分であるので、できるならもう一生怒りたくない。
喧嘩をして怒りあって相互理解するなんて、子供の時だけだ。(これも個人の意見です。)
大人が「怒る」時はその人の大事なもの、大切にしているものが傷つけられた時だ。それを守るために怒って戦う。
今回のポストは、医師たちの大切にしている患者教育、周産期リスクを低くするための日々の啓蒙努力を著しく妨害した。だから医師たちは、「怒って」声をあげたんだと思う。
怒ってしまったとき、自分の感情が昂っている時は、なんでこの事柄で自分の感情が動いているのか、冷静になった時にふり返ってみるのは、自分と言う人物を知る上で大事だと思う。
私も一医師であるので、今回はどうしても医師の気持ちに感情移入してしまった。
長くなったので続きます。
なんでこんなに文章が長くなってしまうんだ。
こんなに書くつもりなかったのに。
炎上ポスト内容と医者たちが怒ったことへの考察で終わってしまった。
もう少し感じたことがあるので、次回に続けます。
こちら。
懲りないで読んでいただけると嬉しいです。
今日のおすすめは、出産妊娠リスクの話なので漫画「コウノドリ」です。
医療ドラマとか医療漫画の医療系の創作って、ありえない医療も起こったりするし、私はどこか冷めた目で見てしまって苦手だったんですけど、この漫画だけは何も違和感なく、医療者が現実で実際に感じる産科リスクを体現している漫画だと思っています。
漫画家さんの努力と、監修の先生が本当に熱意ある方だったんだろうな。産婦人科の先生だとどう思うんでしょうか。読み物としても面白いし勉強になるし、医学生にもおすすめです。
臨月の妊婦さんは不安ばかり強くなってしまうので、生まれてからの読書をお勧めします!安産でありますように。
それではまた。
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