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ボディはやめときな

私には2つ下の弟と、9つ下の妹がいる。年が離れている妹は初めから可愛かったが、私が2歳の時に生まれた弟は、愛されランキング不動の1位だった初孫長女の私を脅かす存在だった。

弟が生まれて母と一緒に病院から帰ってきたとき、両親が何度弟のことを「ほら、〇〇くんだよ」と教えても私は決して名前を呼ばず、「赤ちゃん…」とどこか憎々しげに呟いていたらしい。

(ちなみにこの話をする時の母による私のモノマネを文章で再現すると「ア゛ッカ゛ッチ゛ャーン゛…」という感じで恨みつらみがこもっていて怖い)

そんな姉弟も時間が経てば打ち解け、姉の私は大好物のアイスを分け与えてあげるくらいには可愛がるようになった。

幼い私「〇〇くん(弟)にアイスあげたの」
焦る母「えっ?!アイスあげたの?!」※弟、当時0歳半
良かれと思ってやったけど何かまずいことをしたかもしれないと気付いた幼い私「だいじょうぶ、ひとくちだよ、ひとくち」

生後半年で姉にアイスを食わされたものの無事に成長した弟が幼稚園児、私が小学校の1.2年生くらいの頃だったと思う。

私は大人や身内の前では非常にお喋りで一丁前な口を利くタイプ。弟は素直で単純ですぐに丸め込まれる、口喧嘩は全くできない子供だった。この頃にはもう「自分が〇〇くんのお姉ちゃんだ」という自覚はあって、割と仲の良い姉弟だったと思うけれど、それでも2つしか違わない弟とは揉めることもあった。

この日も理由は覚えていないけれど、弟と喧嘩になった。確か日曜日の夜で、夕飯を食べてテレビを見ていた時だったと思う。どちらからともなく手を出し、当時弟の特技だった「噛みつく」が炸裂して、私は弟のことを蹴飛ばした。

「やめなさい!!」

母が大きな声を出して仲裁に入る。

「お腹には内臓が入っていて危ないからやめなさい。あと、足は手と違って力加減ができないから、蹴るのはダメ。」

……お腹じゃなければいいんだ?!そして足で蹴らなければいいんだ?!

衝撃だった。喧嘩を怒られるのかと思ったけれど(アニメでも絵本でも争いや暴力はよくないことで、誰かに止められる)、喧嘩はしてもいいけど条件があるということだったのだ。

レフェリーのような母の仲裁のあと、噛みつくのは良くないと弟も注意を受け、私は「足でお腹を蹴らなければいいのか?お腹じゃなくても足で蹴るのはダメなのか?」と確認した(確か足は制御がきかないから基本ダメだった気がする)。

人を叩いたりすることを大人に許されると思わなかったので、すごく驚いた。25年程経った今でも、あの時受けた衝撃を忘れられない。でも、お姉ちゃんだけど弟と喧嘩をするのはダメじゃないんだ!と少し嬉しい気持ちになったことを覚えている。


元々そんなに好戦的な方ではないので、この後に弟や他の誰かと、手が出るような大きな喧嘩をした記憶はないのだけど。でも、ふとした時に思い出して「お腹を攻撃するのと足で蹴るのはダメなんだよな」と思ったりするのでした。

他に教えてもらったこと絶対もっとたくさんあるのに「母の教え」といえばこれが浮かぶようになってしまった。ヤンキー親子かよ。

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