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『風鈴の夏』に憧れる

大人になって、風鈴の音をほとんど聴かなくなった。

子どもの頃にはもっと身近にあって、夏休みになるとどこかしらの家から”リン”と、涼しげな、夏を感じさせる音色が聴こえていたのに。
今では猛暑の影響で窓は締め切り、エアコンの稼働音が夏の当たり前の音になってしまっている気がする。
結婚して地元を離れた影響もあるかもしれないが、今住んでいる場所では、あの”リン”は鳴り響いていない。

そして毎年のお盆帰省の際も、やはり聴こえてこない。田んぼだった場所は住宅地に変わり、のどかでいいな~と思っていた地元はマンションのような高層住宅こそ少ないものの、様変わりしてしまった。

実家の隣に建っている日本家屋の祖父の家(正式には祖父の敷地内に実家を建てている)には縁側があり、夏になると南部鉄器(たぶん…)の風鈴が吊るされ、”りん”という音色が聴こえてくるのが定番だった。
数年前に祖父が他界し、その翌年、認知症を患っていた祖母も他界した。

今まで気にしたことはなかったけど、あの風鈴はどうなってしまったんだろう?

そういえば、今ほど風鈴が聴きたい!と思っていなかった7月初旬、神社に風鈴の天の川を見に行った。
チリンチリン~とたくさんの音に溢れかえっていた。
素敵だった。
ただ、現代病というべきなのか、『どう上手く撮影するか』に意識が向いてしまい、音色にはあまり意識していなかったと思う。惜しいことをした…

福岡県にある宮地嶽神社の境内にて
(嵐がCM出演をした、境内から一直線に夕日が見える光の道で有名)


あんなにたくさんの風鈴を見たが、私が心を奪われたのは、先日行った夏祭りに出店していたキッチンカーに吊るされていた、たった一つの風鈴だ。

夕暮れ時、ざわざわと賑やかな祭り、他のキッチンカーや露店に並ぶ長蛇の列、子どもの引率でグッタリだった私が「疲れたからアイスコーヒーを1杯飲ませて…」と、そのときは比較的並んでいなかった、自家焙煎珈琲の小型キッチンカーに買いに行ったとき、珈琲の薫りと一緒に耳に届いた”リン…リン…”という音色。

周りの雑音(表現がごめんなさい)に紛れて、確かにその音はしっかりと私に届いた。
(美味しい珈琲もありがとうございます!)

あの日から、私がいま欲しいものは風鈴だ。
風鈴が似合う雰囲気の場所には住んでいないけれど、エアコンもフル稼働しているけれど、そこに風鈴の音色をプラスしたいと思った。
きっと、少しは涼しい気分になると思う。

風鈴、お店に見に行ってみようかな。



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