貴方との幸せを永遠に出来るなら、私は何だってやると思うよ。

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「 じゃあ、過去の話でもしようか 」


飲みも2軒目に差し掛かり、いい具合にお酒が入っていたのか彼は突然そう言った。


「 過去の話? 」

「 うん。あんまりいい話じゃないけど。話しとこうかなって。 」

「 ほう…聞かせてもらいましょう 」


彼の話した話は、過去にいわゆるソフレがいたとか、自分に気がある女をセフレにしてたとか。相手の好意を利用してるようなちょっとずるいなあ…くらいのものだった。でも、決して彼女がいる期間にはそれはしてなかったそう。


-- ふーん、そんなもんか。


素直な私の感想はこれだった。

もっと過激なものを想像していた。彼女が居たけど浮気してたとか、ワンナイトでたくさん食い荒らしてた時があったとか。まあ、彼がそんな人じゃないのも分かっているんだが。

分かってたから、つまらなかった。


私は、彼氏がいてもマッチングアプリを4つくらい併用してたし斉藤さんで男と電話してたし実際にアプリで知り合った男と飲んでキスやハグくらいは平気で何回もしていた。 そういう流れになればホテルだって行った。

当時の彼氏は歳上ですごく顔が良くて、趣味も合って話も面白くてすごくすごくすっごく、好きだった。

けど、連絡が遅い。電話してくれない。休みも合わない。寂しい。寂しい。寂しい。

だから手軽に「 好き 」「 かわいい 」と、私を満たす言葉をくれるような男性に着いていった。

着いていって結局得られるものは、罪悪感。自分何やってんだろうって鬱。その言葉を受け取っていた時は幸せだったはずなのに。後々涙を流すことはよくあった。



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彼の過去話のあと、私のこの話をした。


「 _あ、でも今はもちろん他に男いないから! 」


それは事実。今の彼とは、ちゃんと向き合おうと私なりに考えてマッチングアプリ等は全てアンインストールした。 

彼のことはしっかり大好きだから。この幸せを自分で壊さないために。普通の一途に恋する女の子になりたかったから。

 

「 …あのね、なつめちゃん。

そうやって男の人といる間は楽しいかもしれないけど、結果的に自分を傷付けてるんだよ。

なつめちゃんはもっと自分を大事にしなきゃダメ。なつめちゃん自身を大切にすることは俺の為でもある。

でも、もしもこの先俺と別れてしまうようなことがあっても、なつめちゃんは一生なつめちゃんと生きていくんだから。自分のことを一番に考えて大切にしてあげなきゃいけないんだよ。 」



すごく当たり前のことを、ありきたりなことをきっと言われたのかもしれない。

でも、私はこれを聞いて自分の瞳に熱いものが溜まる感覚がした。

お酒のせいもあるのか、ぼろぼろ泣いていた。


他人の評価で自己肯定感を埋めて生き繋いでいたつもりが、全く埋まっていなかった。ぽろぽろ零していた。自己肯定感は更に下げていた。私が今までしてきたことは私のためにならないことだった。

薄々気付いていたこの事実を、今一番大好きな彼から突き付けられた。

今一番、この過去を知られたくなかった彼に。言ってしまったのは私なんだが。



「 自分を大切にしようね。俺もお手伝いするから。 」



涙を流しながらハイボールを見つめる私の頭を、彼はぽんぽんと優しくたたいた。

彼は私より3つも歳下なのに。なんて情けない歳上彼女なんだろう。


でも、彼が一緒に私を大切にしてくれると言ってくれて嬉しかった。



「 なつめちゃんと付き合えるって考えた時、悩んだんだ 」

「 何を…? 」

「 なつめちゃん、3つ上だから24でしょ。結婚とか色々きっと意識し始めるじゃん。特に女の人は子供の事だってあるし…。

そう考えた時、俺はまだ大学生だから結婚とかすぐには出来ないから。俺との恋は、なつめちゃんにとっては " ただの通過点 " でしかないのかなって。

友達からは考えすぎだって言われるんだけど 」



そう言ってヘラリ、と笑いながらビールを流し込む彼を、私はまたもや泣きそうになりながら見つめた。

どきり 、とした。

同じこと、考えたことがあったから。

今まで歳下と付き合ったこともないし、ましてやまだ学生。付き合ったって将来はまだ見据えられないし私の婚期が遅れてしまうリスクだってある。

だから、とりあえず彼氏がいないフリーの期間を埋めるために付き合おう。付き合いながら、裏でこっそり色んな男性と出会って、素敵な人が見つかったら乗り換えちゃお。

そう考えたことだってあった。




「 …私もね、同じこと考えたことあるよ。もちろん結婚に憧れだって人並みに持ってるし。

でも、私が貴方を通過点にするというよりは、貴方が私を通過点にしていくんじゃないかと思ってたけど。

学生だしまだ遊びたい盛りじゃん。学校とかバイト先では同い歳や歳下のかわいい女の子との出会いだってきっとある。 そんな時に、歳上で将来まで考えられてる可能性があるような彼女がいるのは正直面倒じゃない?

…だから、もしも私より好きな女の子が出来たらちゃんと言ってね。私、ちゃんと笑ってお別れするから。それがきっと貴方の為だと… 」


「 なつめちゃん 

嫌なことは、ちゃんと嫌って言わなきゃダメだよ 」



そうやって私の手を掴んだ彼。

あれ、私、また、泣いてる ?

きっと彼の為なら笑ってお別れ出来ると思っている。 大好きな彼には、ちゃんと幸せになって欲しいから。でも、欲を言ってもいいのなら。


-- 貴方の隣は、ずっと私がいいな。



「 結婚はもちろん学校を卒業して社会人になってからになるだろうから、待たせてしまうと思う。

でも、俺はなつめちゃんとの恋を最後の恋にしてもいいと思ってるよ 」



なにそれ、プロポーズじゃん。

思わず笑ってしまった。

私も、わがまま言っても嫌われないかな。言ってもいいかな。



「 私も、貴方との恋を、私の人生最後の恋にしたい。ずっとずっと、一緒に居たい。他の女の子のとこ、行かないで欲しい… 」


「 当たり前じゃん。だってなつめちゃんにゾッコンだし 。

一生、一緒にいようね 」





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まだ付き合って日が浅いのに、何言ってるんだろうって思う。

未来の気持ちなんて誰も予測も保証もできない。実際にかわいい女の子がいたら彼はそちらに行ってしまうかもしれないし、私だって歳上の好みの男性にアプローチされたら揺らいじゃうかもしれない。

でも、歳下の彼がちゃんと私との結婚まで視野に入れてくれたことが嬉しかった。

本当に、彼を好きになってよかった。




「 私からはきっと貴方に別れを告げない気がする 」

「 俺だって…あ、でも今までの彼女は全部俺が別れを切り出してるわ 」

「 あー、私もだ 」



そうやって2人して笑った。


未来の保証なんてものは何も無いけど、

貴方が許してくれる限りは一緒にいたいと思ってます。




「 …今日のなつめちゃん、本当にかわいいな 」

「 何、急に。ありがと 」

「 肩出しの服まじで似合う。かわいい 。今日の髪型もすごい好き 」

「 …一生この髪型にしよ 」





貴方との幸せを永遠に出来るなら、私は今なら何だってやると思うよ。





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