見出し画像

【春になったら】第1話:細かすぎるあらすじ&感想

春になったら
第1話 2024/1/15(月) 22:00~

1月期のドラマも色々観ています!
というか大体観ています!
その中でも事前から期待していて第1話を観てやっぱり良かったのが、「春になったら」。

脚本は「まんぷく」などの福田靖さん。
監督は「きのう何食べた?」などの松本佳奈さん。
プロデュースは、「時をかけるな、恋人たち」の岡光寛子さん。
ということで、重々しくならない笑って泣けるストーリーと質感のある映像が楽しめそうなタッグ。
そこに奈緒さんや木梨さんといったキャストが集結。
今期はこのドラマについて細かすぎる視聴レポをしていこうかと思います。

それではさっそく第1話。

※ネタバレがありますので気になる方はご注意ください。




●「春になったら」第1話

1-1. 3か月後

助産院で佳乃が瞳を産んだ出産シーン。夫の雅彦がまわすホームビデオの映像。「頑張って!何か出来ることある?」と聞く雅彦に、「ない。居てくれるだけでいいから。」と佳乃。

現在。1月1日、元旦の日の朝、自宅にて瞳を起こす雅彦。
起きてきた娘の瞳。テーブルに並ぶ京都老舗店から取り寄せた豪華なおせちに喜ぶが、3万3千円したと聞き、驚き怒る瞳。
「明けましておめでとう。今年もよろしく。」の挨拶の後、報告があると雅彦。瞳も報告があるということで、お互い同時に言うことに。

-雅彦「3か月後に死んじゃいます!」
-瞳「3か月後に結婚します!」

少し無言で顔を見合わせ、お互いの報告に驚く二人。
自分の報告はそっちのけで瞳の結婚について聞く雅彦。
瞳は、今年の3月25日、自分の29歳の誕生日に、1年前から付き合っている川上一馬と結婚をすると話すが、一馬が芸名「カズマルくん」という38歳の売れないお笑い芸人であることを知り、驚き慌て、結婚を断固認めない姿勢をとる雅彦。とにかく一度会ってほしいと言う瞳。

一方、「3か月後に死ぬ」という雅彦の報告について、雅彦はステージ4の膵臓癌で余命3か月だと話すが、とても信じられない瞳は、自分の結婚に反対するための嘘だと思い込む瞳。
結婚すると言い張る瞳。ダメと言い続ける雅彦。

一方その頃、一馬は商店街の獅子舞役でアルバイト中。
瞳からの電話で、結婚に反対されたことを聞き、タイミングをはかって直接挨拶に行こうと話す瞳と一馬。
-一馬「明けましておめでとうございます。本当にいつもありがとね。瞳ちゃん、今年もよろしくお願いします。」
-瞳「これからもずっと、よろしくお願いします。」

出産シーンから始まる冒頭。
命の誕生と、これから描かれていくであろう命のおわり。
二つの視点で描かれる「命」が、物語を構成し視聴者の心を揺さぶる展開になりそうです。

なんてことない毎年恒例のお正月の様子。
木梨さんと奈緒さんのどこにでもいそうな父娘の様子がとてもナチュラルでした。

父親の報告に一瞬驚きながらも、嘘だと思い聞き流す瞳。
実際、こんな風にいきなり余命わずかだと知らされたら、なかなかすぐにそうですかとは信じられないですよね。
木梨さんおお芝居、声の大きさだったり、喋り方だったり、このわずかなシーンから感じられるキャラクターから、いつもこんな調子で冗談を言ったりするお父さんなのかなと思います。
これから命の終わりと向き合う二人が、どのような3か月を過ごしていくのでしょうか。

あらかじめテーマがわかっているからこそ、親子や恋人との間で当たり前のように交わされる「今年もよろしくね」の挨拶が、どんなに愛おしくかけがえのないものか感じさせます。
1年一緒に過ごして年末を迎えて、また新しい年を一緒に迎えられること。
当たり前のように、次のお正月もまた、一緒にいると思っている。
その当たり前が、当たり前でないことなんて、みんな知っているはずなのに、こうした作品に出会うと、いつもそのかけがえのなさをあらためて思い知ります。

1-2. 結婚反対

杉村助産院に新年初出勤をした瞳。助産師の瞳、杉村助産院では約1年ほど働いている。院長の杉村節子、同僚の斉藤愛里と新年の挨拶を交わす。

出産を間近に控えた草野夫妻の診察。10年待った待望の第一子の誕生を心待ちにする草野夫妻と助産院のメンバー。
「僕がついているからね」という夫の言葉を噛みしめる瞳。

帰宅した瞳。雅彦は動画サイトでカズマルくんのフリップ芸を観て「全然面白くない!どうしてこんなやつと。売れるわけねえだろこいつが!」と、今朝の瞳の結婚話に断固拒否の姿勢を続ける。
「つまんない嘘までついて娘の結婚ジャマしようとする人に言われたくありません。」と相変わらず雅彦の余命3ヶ月の話は嘘だと流す瞳は、結婚までにやりたい事リストを手帳に書いており、話を変える。
リストには、一人暮らしをする、旅行に行く、エステに行く、料理教室に通う、お父さんにかずくんとの結婚を認めてもらう、など書いてる。
「私はお父さんにちゃんと祝福してもらいたいの。」と雅彦に言う瞳だが、雅彦は話を聞かずに部屋に行ってしまう。

瞳は、叔母のまきに電話をかける。
余命3ヶ月という話を聞き、「雅彦はね、昔っからそういうとこあるのよ」と、昔小学生だった雅彦が、親が癌になったと嘘をついた出来事を思い出し、今回に冗談に決まっていると笑うまき。
瞳の結婚については、「雅彦の気持ちもわかる」と言い、もう少し考えてみればと諭すまき。
-まき「だってさ、色々ハードルあるわけじゃない。一馬さんが売れない芸人っていうのもそうだし、まあ歳もね。他にもあるでしょ。雅彦がもっと反対するに決まってる理由が。」

瞳がしている助産師の仕事。
仕事では命のはじまりと向き合い、プライベートでは父の死と向き合っていくことになる瞳です。
瞳は助産師としてのキャリアは長いようですが、杉村助産院での勤務はここ1年ほどとのこと。
約1年前に、実家があるこの街に戻ってきたのでしょうか。
まきとの会話の中で、「他にもあるでしょ」と雅彦が瞳の結婚に反対する理由にまきが触れた際、瞳が濁しましたが、瞳の過去に何かが隠されているような印象を受けました。

10歳年上の売れない芸人との結婚。
親心としてどうしてもすぐには祝福出来ない雅彦と、叔母のまき。
この二人のリアクションもリアルでした。
瞳が皆に祝福されて結婚を出来るまで、まだまだハードルはありそうです。


1-3. 初詣

近所の神社に初詣に来た雅彦と瞳。二人とも着物を着て正装している。
神社の境内で笑顔で2ショットを撮影する二人。
瞳の赤色の着物を見て、「やっぱ似合うよな、その着物。お母さんの娘だもんな。」と雅彦。

-雅彦「神様にさ、お礼言ったよ。62年間ありがとうございましたって。今年はあの世でよろしく、ともね。」
-瞳「私はかずくんと幸せになりますようにってお願いしちゃった。」
-雅彦「娘の目が覚めますようにっていうのもお願いしました。」
-瞳「お父さんに、理解ある父親になるように言ってやってくださいともお願いしました。」

言い合いになるが、お互い仕事の時間が迫り、慌てて家に帰る二人。
二人の家の佳乃の仏壇の横には、まだ瞳が幼いころに神社で3人で撮った写真が飾られている。
今瞳が着ている赤色の着物は、佳乃がその時来ていた着物。

自転車で出勤する雅彦。勤務先で仕事始めの挨拶。
雅彦は「グラッチェ椎名」という名で実演販売の仕事をしており、去年の売上No.1を獲得。
LOFTの実演販売コーナーで、油をこすらずに落とせるクリーナーの実演販売を始める。初売りに訪れた客が、雅彦のもとへ次々と集まってくる。

着物で初詣に行くのは、まだ佳乃が生きていた頃に家族3人で行っていた恒例行事なのでしょう。
当時は母が着ていた着物を、今は瞳が着て、父娘の二人で写真を撮る。
当たり前に続けてきたことを、今年も当たり前に行った二人。
来年は、きっと瞳一人。隣にいるのは、かずくんでしょうか。

自分の余命についてそれとなく話し始める雅彦ですが、相変わらず信じていない瞳は聞き流し、いつものように言い合いになる二人。
雅彦が、それとなくちょこちょこと隙あらば自分の余命のことを話す姿は、娘が嘘だと思うのも仕方ないと理解していて、少しずつ本当のことだと理解してもらうように探り探りアプローチしているように感じられます。

雅彦の実演販売の仕事、キャラクターにぴったりすぎますね(笑)
余命3ヶ月ということで、現時点ではそんなに身体も辛くなさそうではありますが、生きがいのような仕事をいつか辞めるタイミングも近いはず。
雅彦は仕事を通じて、人の心を動かし人を惹きつけることと向き合ってきたのでしょうから、その難しさを知っているからこそ、職種は違うとは言え、お笑い芸人という仕事の難しさに通じるものを感じ、娘の心配をしているのかもしれません。


1-4. 助産師の仕事

助産院にて、今日は妊娠30週目の妊婦の診察をする瞳。無痛分娩を希望されるが、助産院では出来ないと答える瞳。今からでも大きな病院に移れると提案するが、ここで産むと答える夫婦。

夫婦が帰った後、瞳と愛里の会話。
まだ若い夫婦、妊娠を機に妻は仕事を辞めなければならず、夫は専門学校を辞めて働いており、お金がないから助産院での出産を希望している。
-瞳「でも産む決心をしたんだから、その思いは尊重したい。」

自分も助産院で生まれたことを話す瞳。
瞳は6歳の時に交通事故で母を亡くしたため、自分が助産院で生まれたことは父から話を聞いたと話す瞳。父は、「とても幸せな出産だった」と言う。
-愛里「助産師になろうと思ったのは、お父さんのおかげなんですね。」
-瞳「…そうだねえ。そうだと思う。なってよかった。私、この仕事大好き。助産師ってさ、家族の新しい始まりの瞬間に立ち会えるでしょ。赤ちゃんが生まれて、夫婦が親になって、赤ちゃんと、お母さんと、お父さんと、新しい始まりの瞬間。」

一方、昼休憩中の雅彦。弁当を食べながらスマホでカズマルくんについて検索し、近々お笑いライブがあることを知る。

愛里が「助産師になろうと思ったのはお父さんのおかげなんですね」と言った時、笑顔で話していた瞳の表情がふっと真顔になり、少し揺らいで、少し間を空けてから、「そうだね」と言ったように見えました。
ただ単にきっかけを思い出していたのか、何か、実は別のきっかけがあったのか。
細かいお芝居をされる奈緒さんですから、もしかしたら今後の展開に繋がる伏線かもしれません。

奈緒さん、母が亡くなったことを話した際の愛里の「ごめんなさい」に対して、「ううん、いいのいいの」と笑って答えるところ、ここのお芝居がとても自然で、全然悲しさを感じさせない、相手の申し訳なさをすっと消してあげるような優しさがあって、ここでの奈緒さんのお芝居がとても素敵だなと思いました。

雅彦は、娘の結婚に反対しながらも、動画を見たり、検索したり、カズマルくんについて調べようとしているのが、父親らしいですね。
きっとお笑いライブ、行くんでしょうね。

1-5. 圭吾と美奈子

杉村助産院にて、草野夫妻からの電話をとる院長の節子。
明日が予定日なのに陣痛がまだなく、不安になって電話をした夫妻は、節子と話し、安心出来た様子。

一方、瞳は学生時代からの友人である美奈子と圭吾と3人で写真展を訪れている。
3人は大学時代に写真部で一緒だった友人同士で、美奈子と圭吾は現在も趣味で写真を続けているが、瞳はもう一眼レフもしまい込み、スマホでしか写真を撮っていないとのこと。
瞳と一馬の話になり、「まだ付き合ってんの?」と少し苛立った様子の圭吾。その流れで、結婚を決めたと報告する瞳。瞳と一馬は、圭吾と美奈子が誘ったお笑いライブがきっかけで出会っていた。
祝福する美奈子と、「まだ1年くらいしか付き合ってないじゃん」と慌てる圭吾。お笑い芸人と結婚したら絶対苦労すると止める圭吾と、私は味方だと喜ぶ美奈子。喜び合う美奈子と瞳の傍ら、不満そうな圭吾。

帰り道、二人で歩いている圭吾と美奈子。「意味わかんねえよ」と言う圭吾に、「あの時ライブに誘わなきゃよかったと思ってんの?」と笑う美奈子は、瞳の結婚にショックを受けている圭吾の横顔を見て、切なげな表情。

瞳の友人で、特にこれからの3か月間、瞳を支える存在になるであろう、圭吾と美奈子が登場しました。
3人は学生時代からの付き合いということですが、写真部だった瞳、父との残りの3か月の間に、一眼レフを引っ張りだして写真を撮るのでしょうか。
写真がひとつキーワードとなっていきそうですね。

3人のシーンから、圭吾は瞳に想いを寄せていることが分かります。
美奈子は、圭吾を見つめる表情から、圭吾のことが好きなのかな?
圭吾は、自分が瞳と一馬を出会わせるきっかけを作ってしまったことも後悔していそうですね。
瞳がどこかから地元に1年前に戻って来たとして、その戻って来た経緯に何かがあったとして、1年前に戻って来た瞳を元気づけるために、圭吾と美奈子は瞳をお笑いライブに誘ったのかもしれません。
雅彦と瞳の親子関係は、常に笑いが絶えない関係性のようにも見えます。
「笑い」に救われるということも、ひとつのテーマになるかもしれません。

そして、圭吾は葬儀屋で勤めているとのこと。
もしかしたら、雅彦の葬儀に関わってくるかもしれませんね。

個人的に私はSnowManファンなのですが、深澤くんはこういうナチュラルな役柄のお芝居を見てみたかったので、個人的に今後楽しみです。


1-6. 佃中央病院

帰宅した瞳。雅彦は夕飯を作りながら缶ビールを飲んでいる。
「全然病気には見えないんですけど。ビール飲んでるし。」と瞳。

-瞳「人間ドッグ毎年受けてるじゃんお父さん。それでいきなり末期癌って、そんなのはね、あり得ないよ。」
-雅彦「去年だけさ、なんか忙しくて人間ドッグ行けてなかったんだよね。まあ仕方ないな。運が悪かった。仕方ない仕方ない。」
-瞳「病院教えて。どこの病院の何先生に言われたの?癌って。言えないんでしょ?ほら言えないんでしょ、やっぱり。」
-雅彦「…佃中央病院のコムラ先生。消化器内科のコムラタツロウ先生。」
-瞳「は?それ今考えてるでしょ?」
-雅彦「じゃあ行って聞いてくればいいじゃない。」

ようやく父の話を本当だと思ってきた瞳。
いや、瞳は初めて聞いた時から、冗談だろうと思いつつ、どこかで本当なのではとずっと気になっていたんでしょうね。
ビールを飲む父親に嫌味っぽくつっかかりながらも、話題に出してみた瞳から、父を気にする娘としての思いが感じられます。

膵臓癌というのは、なかなか自覚症状がなく発見しにくいものだと聞きます。
雅彦がもし去年の人間ドッグを受けていたら。
忙しさを理由に、人間ドッグや健康診断を飛ばしてしまうことって、ありますよね。
自分には「まさか」が訪れるなんて誰もが思っていないから。
こういう物語を見ると、考えさせられます。

私自身は、身近にこのような病気で亡くなった方がいないのですが、同じような経験をした方にとっては、このドラマの視聴は辛い気持ちになることもあるかもしれませんね。


1-7. 余命3か月

朝、職場に電話をして午前中の休みをもらった瞳。
雅彦が言っていた佃中央病院の医師のもとを訪れ、CT画像の説明を受ける。
膵臓癌で、骨にも転移している、治療を受けても5年生存率は2-3%、治療を受けなければ余命僅かであること。医師は雅彦に、「ご家族と一緒に桜を見られればいいですね」と伝えたと話す。
医師の説明を呆然と聞く瞳。
医師によると、雅彦も診断結果を受け止められない様子で、セカンドオピニオンを求めたという。

瞳は雅彦に電話をかけ、セカンドオピニオンを求めた病院が聖堂国際病院であることを聞きだし、その足で聖堂国際病院を訪ねる。
診断は同じで、肝臓にも転移しており、余命は3か月ほどだと話す医師。
-瞳「でも…治療を受ければ、長生き出来るんですよね?2-3%の人は5年以上生きられるんですもんね。」
-医師「それはお父様にもお伝えしたのですが、自分が100人のうちの2人か3人に入るとは思えないとおっしゃいました。」
-瞳「…え?」

病院を後にし、呆然としながら歩く瞳。
職場から草野さんの陣痛が始まったとの連絡を受け、助産院に向かう。

ついに、瞳が現実を突きつけられました。
病院で話を聞きながら呆然とする表情がとてもリアルでした。

雅彦は、一人で診断結果を知らされ、余命宣告をされ、セカンドオピニオンを求め、瞳の知らない間に一人で命と向き合っていたのですね。
治療を受けない決断をしたという雅彦。
おそらく治療を受けても、苦しい日々になるはずで、その先に幸せが待っているとは限らない。
だったら残りの時間を、娘と過ごし、自分らしくいることを選んだのでしょうか。
瞳に治療中の負担をかけたくなかったのでしょうか。
瞳の前では、あまり深刻にならずに元気でさっぱりしたお父さんでいる雅彦ですが、どんな気持ちで一人で病院にいたのかと思うと、とても切なくてたまりません。


1-8. 命のはじまり

助産院にやってきた草野夫妻。陣痛が5分間隔になり間もなく出産というところ。助産師としてケアにあたる瞳だが、病院で医師から聞かされた話がどうしても頭をよぎる。

一方、桜鈴会病院の緩和ケア医である阿波野のもとを訪れた雅彦。
今は薬が効いていて痛みは抑えられていると話す雅彦。
積極的治療はしないと決めている。
-阿波野「ご家族は、椎名さんのご決断を理解してくださっているのですか?」
-雅彦「私が癌だということを、やっと信じ始めた頃じゃないでしょうか。」
-阿波野「本当にいいんですか、椎名さん。」
-雅彦「いいんですいいんです。先生、いいんです。」

瞳。妊婦の子宮口も開きいよいよ出産という状況、命の誕生に向き合う。

回想シーン。
まだ幼い瞳を連れた雅彦、クレープ屋さんに並び、二人でクレープを買う。
瞳の高校卒業式、卒業おめでとうと号泣する雅彦、瞳と二人で写真を撮る。

草野夫妻、無事に出産を終え、元気な男の子が誕生する。
赤ちゃんを取り上げて、夫妻に渡す瞳。
響く赤ちゃんの元気な泣き声。涙を浮かべる瞳。

このシーン、新しい命の誕生と向き合う中で、どうしても瞳の頭の中をよぎる父のこと。
終わろうとしていく命と、はじまろうとする命。
この二つが交互に描かれ、命の誕生と同時に瞳の目に浮かぶ涙。
構成が見事で、命のかがやきが際立って、とても心に残りました。

いつも通りに、真面目に仕事をしながらも、どうしてもよぎってしまう家族のこと。
新しい命の誕生にほっとしながらも、終わろうとしている父の命を思ってしまう表情。
奈緒さんのお芝居が、とても悲しかったですね。

瞳の仕事を助産師に設定した脚本のねらいが見事に表現された場面だったと思います。
これからのストーリーの中でも、いやというほど命のはじまりとおわりが対比されるのかもしれません。
涙で前が見えなくなりそうです。

もちろん号泣しながら観ていた私ですが、草野夫妻の旦那さんに渡された「出産」「ファイト」の手作りうちわには笑いました。
「頑張れ!」と声をかける夫に「うるさい!」と怒鳴る妻。
このコミカルな描写が福田靖さんの脚本らしくて、こうやって笑いをいい感じに入れてくれることにほっとします。

そして阿波野先生役の光石研さん!待っていました!!!
存在の安心感たるや。
今後の父娘にとって欠かせない存在になるでしょうから、今から楽しみです。

自分の病気のことを、家族はやっと信じ始めた頃ではないかと話す雅彦。
いつかその時はくるとは言え、この年齢で瞳を残していかなければならないことは、雅彦にとってもそう簡単に受け止められる話ではないはず。
それでも、自分で緩和ケアセンターを訪れて、命を終える準備をする。
娘が少しずつ受け入れていくことを願う。
雅彦の父親らしい思いが、痛いほど伝わります。


1-9. たった一人の家族

仕事を終え、帰宅した瞳。テレビを見ている雅彦に話しかける。

-瞳「今日さ、無事に男の子生まれた。いいお産だった。」
-雅彦「うん。そっか。」
-瞳「幸せな人生歩んでほしいな。あの赤ちゃん。」
-雅彦「…俺みたいに悔いのない人生を。な。」
-瞳「…お医者さんに会いに行ったよ。」
-雅彦「…ああそう。」
-瞳「…ほんとだったんだ。」
-雅彦「…やっと信じてくれたか。(テレビを消して) 去年の9月頃からさ、腰痛くて整体に通ってたろ、俺。でも全然治んなくて、12月に整形外科行ったんだよ。そしたら内科で診てもらってくださいって言われちゃって、そこでCT撮ったら、膵臓癌。よくあるんだってさ。膵臓癌って気付かないうちに進行してて、骨盤に転移して腰の痛みで初めて分かるってパターン。もう肝臓にもさ、転移してたから、ステージ4。参ったなあ。俺まだ62なのに。」
-瞳「…で?お医者さんに治療受けないって言った?言ったの?」
-雅彦「あ、治療ね。受けない受けない。まあお葬式はぱーっと明るくやろうよ。」
-瞳「(雅彦の元へ寄って) 待ってよ。いや受けるでしょ普通、治療。治る可能性あるんだから。」
-雅彦「100人のうち2人か3人ね。」
-瞳「その中に入るかもしれないじゃん。」
-雅彦「いやいや…」
-瞳「わかんないじゃん!」
-雅彦「3年前さ、職場の同僚が膵臓癌だったんだよ。肝臓に転移して今の俺と同じ。そいつはさ治療受けたんだけど、副作用で苦しんで苦しんでさ。病院から1回も出れないままさ、1年半で亡くなっちゃった。なんか俺さそういうの嫌なんだよね。無駄な抵抗して病院のベッドで縛りつけられて人生の最後を過ごすなんて。まあ痛みだけ抑えてもらえれば、まあ最後の3か月は、楽しく過ごしたい。」
-瞳「(涙を拭いて) 無駄じゃない。無駄じゃないよ!お父さん怖がりじゃん。死ぬの怖くないの?」
-雅彦「それ言うなって。もう俺決めちゃったから。」
-瞳「じゃあ私は?どうすればいいの?そんなあっけらかんとお父さんに、そんなあっけらかんと言われたって、そうだねとか言えないよ?お母さんいなくなって、お父さんもなんてさ、そんな…。たった一人の家族なんだよ?」
-雅彦「あの、誰だっていつかは死ぬんだからさあ。家族だっていつかは…、お前には申し訳ないけど、まあ俺の終わり方は俺に決めさせてくれよ。」
-瞳「お父さん!」
-雅彦「瞳!お前はもう大人だろ!」
-瞳「関係ない!…お父さん。」
-雅彦「大丈夫瞳は!」
-瞳「死なないでよ…。死んじゃやだ!ねえお願いだから治療受けて。私のために治療受けてよ!」
-雅彦「わかんない。」
-瞳「お父さん!」
-雅彦「わかんないから。」
-瞳「…馬鹿!!」

部屋を飛び出す瞳。涙を必死にこらえていた雅彦。

ついに父娘が病気について話をしました。
圧巻のシーンでした。

父の話を静かに聞きながら、父の考えも理解しながらも、やはり生きていてほしい、生きるために治療を受けてほしいと伝える娘。
娘の話を静かに聞きながら、涙をこらえて努めて明るくあっけらかんとしているように見せ、治療は受けないと話す父。
最後に「馬鹿!!」と言って瞳が部屋に戻ってしまうシーンも、本当の父娘ならではの感情が溢れるシーンで。
大人になったとはいえ、父の前では娘である瞳と、一人の人間として自分の人生の終わり方を考えながらも、父親として出来るだけ弱音を吐かない雅彦。
親子すぎて…。涙なしには見られませんでした。

木梨さんのお父さんが、どこまでもお父さんなんだよなあ。
まだ62だよの一言で、受け入れられない雅彦自身の本音が見えましたね。
でも、どうしたって受け止めるしかなくて。
怖くないのかと聞かれて、そんなこと言うなよと言った雅彦の表情が、辛くて。
とても苦しいシーンでした。


1-10. 自分のことは自分で決める

翌朝、雅彦と顔を合わせずに家を出てしまった瞳。
そこへ、昨夜瞳から電話を受けたまきがやってくる。
-まき「どうして治療を受けないの?」
-雅彦「俺はさ、仕事好きだし、やり残したこともたくさんあるし。とにかくただの癌患者になりたくないんだよね。残された時間を楽しく過ごさせてもらうよ。」
-まき「そりゃあさ…わかるけど…わかるけどさ、残される方の気持ちにもなってよ。ね?瞳の事も少しは考えてあげなきゃ。」
-雅彦「姉ちゃん俺たちだってさ、両親早く亡くなっちゃったじゃん。瞳はもう28歳。あいつはもう大丈夫だよ。ちゃんとやってけるさ。俺は幸せだよ、姉ちゃんも瞳も俺のこと心配してくれて。でも自分の事は自分で決めさせてもらうよ。治療の事も、人生最後の締めくくりも。」

瞳の結婚は許したのかと聞くまきだが、「それとこれとは話が違う」と未だに許していない雅彦。

一方瞳は、朝早く出て一馬と会っていた。雅彦の事を話す二人。
この状況を受けて、結婚は延期した方がいいと思うと話す一馬。
瞳も納得し、予約していた式場 Lily bridalの担当者 黒沢にキャンセルの連絡を入れる。
今日は一馬のお笑いライブの日。見に行くと話す瞳に、「こういう時こそ笑って元気出さなきゃ。ため息ばっかりついててもいい考えは浮かばないよ。」と優しく言う一馬。
カズマルくんのギャグ「どんまいどんまい!」で、笑う二人。

まきちゃんがいてくれることが、瞳にとっては心の支えですね。

瞳はもう大人だ。
最後は自分で決めさせてもらう。
これは雅彦の本心であり、そう自分に言い聞かせて自分を鼓舞しているようでもあり。
からっとした言い方をされるけれど、いつもどこか切なくて。
まだ62歳。やり残したこと、というよりも、当たり前にやるはずだったことが、たくさんあるはず。
3か月なんて、本当に短いですよね。

一馬役、信頼と実績の濱田岳さん!
穏やか~な、いい人そうな、売れなそうな(笑)配役が素晴らしい!
この一馬も、瞳を支える存在として、そばにいてくれてよかった。
一馬はずっと売れないでほしい(笑)
でも、雅彦と瞳のために、二人を笑わせる存在であってほしい。

式場の話が出てきますが、最後、3月25日、桜が咲く中で結婚式をあげるのでしょうか。
そこに、雅彦はいるのかな。


1-11. 3か月後に

お笑いライブの会場。圭吾と美奈子と見に来た瞳だが、ぼーっとしてしまう瞳。カズマルくんの出番になり、笑顔を取り戻した瞳。会場中、誰も笑わない中、カズマルくんのネタで笑っているのは瞳のみ。

「やっぱり全然面白くない!」と、客席から聞こえる男性からのヤジ。
瞳たちが振り向くと、そこには雅彦の姿が。驚く瞳。
全然面白くない、結婚なんて認めない!とステージ前まで歩いてきて騒ぐ雅彦。雅彦が瞳の父親だと気付く一馬。
言い合いになる雅彦と瞳。一馬のことをボロクソに言う雅彦に対して、一人の少年が「パパの悪口言うな!パパは頑張ってんだ!」と立ち上がる。その少年は、一馬の元妻との息子 龍之介だった。
一馬がバツイチ子持ちであることを知り、驚き引き気味の雅彦、圭吾、美奈子。ますます結婚はあり得ないと叫ぶ雅彦。感情的になった瞳は、絶対に結婚すると言い張り、3月25日に結婚式を挙げると客席に叫ぶ。
-雅彦「おい、俺その頃死んじゃうんだぞ!」
-瞳「死んじゃうんだったらもうどうだっていいでしょ。ていうか私たちの結婚がそんなに嫌なんだったら治療受けてよ!」
-雅彦「治療受けたら諦めるって言うんだな、結婚を!」
-瞳「諦めない!!」
訳が分からず大混乱の圭吾と美奈子。親子喧嘩を仲裁する一馬。

-雅彦「俺はもう治療受けない!3か月後に死ぬ!」
-瞳「私は3か月後に結婚する!」

式場に、キャンセルのキャンセルで連絡を入れる瞳。
家に戻り、「死ぬまでにやりたいことリスト」をノートに書く雅彦。

最後、わーっとした言い合いで笑える感じで終わる脚本。やっぱ最高です。

濱田岳さんの絶妙に面白くないネタの仕方が本当に絶妙で面白いですね(笑)
「カップ焼きそば」を噛んだ時、深澤くんが素で笑っていたように見えました。
あれは濱田さんが素で噛んだのでしょうか(笑)
東大中退で、バツイチで、子持ち。
息子は8歳なので、浪人せず東大に入っていたとしたら、20歳前後で東大を中退して、そこからお笑い芸人を目指し、30歳の頃に子供を授かったはず。
その後離婚したようですが、収入の安定しないお笑い芸人をしていながらも、息子は妻ではなく自分の元にいる。
元妻側に事情があったのか、いや、離婚ではなくもしかしたら死別?
一馬のバックグラウンドも気になるところです。


ここで第1話は終了しましたが、中盤でぐわっと泣かせながら、最後は怒涛の勢いで締める構成、1時間があっという間で、でもとても見応えがありました。
さすがのメンツの制作陣で、映像がとても綺麗で。
光の具合とか、質感?
生っぽくて、でも美しくて、涼しげな色が引き締めてあたたかみのある色がやわらかく差してくるような映像が素敵でした。
次回予告では瞳が一眼レフを手にしていたので、やっぱりカメラを引っ張り出すのかなと思います。

「春になったら」。
今期の注目作品です!




この記事が参加している募集