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漏斗胸の治療記録(1. 下調べ)

この記事では、いま現在悩みを持たれている方、
または周囲の方向けに、手術前に調べたコトを患者目線で書いています。

治療法や専門医、かかる費用や入院期間について、
調べた限りで網羅的に記録していて全文はかなり長いため、気になる見出しまで飛ばしてお読みください。

※ 術後記事はコチラ


漏斗胸って、そもそもどういう物?

漏斗胸は、胸骨やその周囲が凹む先天的な骨格異常の病気です。

発症率は 1/1000〜3000 とされ、軽度〜重度まで症状に個人差があります。

凹み具合を定量的に判断する目安として4段階のグレードという基準が存在し、専門医の先生により診断をしていただけます。

私(イチ患者)の印象としては、圧迫により日常的に息苦しさ等の症状を感じている場合は重度、見た目のコンプレックスまでで日常生活に支障がない場合は軽度といえそうかと思っています。

これらは私の解釈になりますので、下記に医師の方の説明も引用いたします。

漏斗胸は胸骨の一部が陥没している病気をいい、肋軟骨の変形が原因と考えられています。 凹みの程度は人それぞれで違いがあります。 深く凹んでいる人もいますし、軽い凹みの人もいます。 凹みは左右対称の人だけでなく、左右の形が違う非対称性の陥凹の人もいます。発症のしかたにも個人差があります。乳児期から凹みが目立つ方もいれば、成長とともに凹みが目立つようになる方もいます。漏斗胸は、約1000人に1人程度の割合で起こるとされています。また家族内での発生もみられ、遺伝的な要素もあるといわれています。

慶應義塾大学医学部呼吸器外科「漏斗胸とは?


漏斗胸なのか、治療が必要か、迷っている方へ

そもそも自分が漏斗胸なのか、どう相談すればいいか分からないという場合、大前提、元も子もないですが、最終的な判断は先生とご自身で決める必要があります。

ただ患者側の心理的にどこで診てもらえば良いか等、諸々の判断が難しいと思いますので、私の手術までの経緯を残します

  1. 「漏斗胸」で画像検索

  2. 漏斗胸の諸症状について検索

  3. 手術事例について検索

それぞれ、
1は、写真の方のグレートや状況と自身の具合を比較して相対的な判断材料とする目的。
2は、幼少期から患っていると無意識な症状もあるため、他の方と一致するものがあるか確認する目的。(それが本当に漏斗胸起因かは追々)
3は、年齢や術後の改善内容を調べる事で、症状に対する手術の効果をある程度判断する目的で調べました。

これらは病的な観点ですが、見た目など審美的な意味合いで治療をする方も多いようですので、気になる場合は相談されてみると良いのではと思います。

ちなみに、女性の方向けにも傷痕などを加味して男性と異なるアプローチで治療に取り組まれている先生もいらっしゃいました。

もしその辺りも悩まれている場合は、下記のページが参考になるかもしれません。

参考:「胸のかたち」研究室〜漏斗胸専門サイト〜「女性の漏斗胸治療には特別の配慮が必要である」


漏斗胸の具体的な症状は?

下記の通りです。

一般的な症状

  • 猫背(凹みにより、姿勢が悪くなる)

  • 人より体力が少ない、疲れやすい

  • 仰向けで寝づらい、寝られない

  • 少食(胃の圧迫により、量を食べられない)

私の自覚症状

  • 胃の不快感

  • 圧迫感による日常的な息苦しさ

  • 上記に伴う心的不調


中でもとくに胃の不快感は慢性的で、20代半ば以降は明らかに強まり、
胃カメラを飲んだところ「バレット食道」という病気を患っていました。

バレット食道は、胃と食道のつなぎ目から食道下部にかけての食道粘膜(扁平上皮といいます)が、胃の粘膜(円柱上皮といいます)に置換されている状態をいいます。

巣鴨駅前胃腸内科クリニック「バレット食道とは?」


こうした不調が増えた事で本気で治療を考えるキッカケにもなったと思います。

成長過程の凹みと、自覚症状の変化

私の場合、幼少期はそもそも骨格の状態が異常という自覚すらありませんでした。

成長とともに凹みが深くなったこともありますが、12歳頃になると範囲としてこぶし大の凹みを目視できる程度にはなっていたかと思います。

20代半ばを過ぎた辺りで、胸部の違和感や体力の低下が顕著になりました。

治療法は手術だけ?

調べた限りでは現状は基本的に手術で治すしかなさそうです。

手術以外の方法として、「バキュームベル(陰圧吸引治療法)」と呼ばれる吸引力によって骨の凹みを治す装置もあるようですが、
幼少期はともかく、ある程度成長して硬くなった骨を吸引力だけで矯正するというのは、かなり厳しい印象を受けました。

一方、手術の方向で検討するとしても、状態に合わせていくつもの方法がありました。

大別して「一回法」と「Nuss法」の2つがあり、後者のNuss法はこれをベースに専門医特有の技術や他の術式を併用する、といった形のようでした。

下記にそれぞれの具体的な説明を引用します。

一回法について

主に、胸部がピンポン玉のように局所的に凹んでいるような場合に適しているそう。(個人的な解釈です)

一回の手術のみで治療が完了する点はSCE法の大きな利点ですので、筆者もSCE法を用いて手術を行う場合もあります。しかし、SCE法がナス法よりも向いているのは、「みぞおち」部分だけが局所的に陥没している、きわめて特殊な場合だけなのです。手術が1回で終了するという利点を割り引いても、大半の患者さんにとってはナス法で手術を行うほうが、長期的にみて明らかに利益が大きいと筆者は考えています。

「胸のかたち」研究室〜漏斗胸専門サイト〜「いわゆる「一回法」と、その利点および問題点」

Nuss法(ナス法)

大体はこちらが適応対象となるのではと思います。
後戻りについては、専門医の先生毎に異なるアプローチと、患者ごとの適切な対応があると思いますので、相談されてみるとよいかと思います。

ナス法は、胸腔鏡を使用しステンレスバーを体内の適正な位置に留置し、漏斗胸を整復する低侵襲手術です。
ステンレスバーは、一人ひとりの患者の胸に合わせて曲げられ、凹んだ胸を持ち上げるように胸骨の下に留置されます。ステンレスバーは外から見ることはできませんが、胸の整復は術後すぐに見ることが出来ます。このステンレスバーは最低2年間体内に留置します。

株式会社メディカル ユーアンドエイ「Nuss法とは?」


バーの挿入〜抜去で、全2回の手術となりますが、1回目の手術はかなり体力を使うため、受ける際には最低でも術後1〜2ヶ月程度休めるようしっかり準備される事をおすすめします。

ほかにも、胸骨拳上術(ラビッチ法)や、胸骨翻転術といった治療法を見かけますが、これらの詳細な方法については、どれが良い等は考えずにあくまで事前情報に留め、適している方法は専門医の先生と相談されるのがよろしいかと思います。

補足ですが、ネット上で一部の病院の方法が「新Nuss法」と表現されている事がありますが、あくまで我々患者界隈で呼んでいる非公式なものであるようです。

漏斗胸の診断を受けられる場所は?

診療科は、主に形成外科呼吸器科になるかと思います。

注意点として、クリニックなどで紹介状を書いて頂くと一応診ては頂けるのですが、専門医の先生でない場合、基本的に
「本人が気にならないのであれば、そのままでも問題ない」
といったお返事のことが多いです。

今後どうなる可能性があるか、実際に自分が治療するとしたら、といった踏み込んだ内容についてを具体的に伺う場合、やはり専門医の先生に診て頂く方が最短で確実です。

下記では、私が探した専門外来のある病院をご紹介します。

正直、全国で見てもかなり少なく、遠方の病院も多いと思いますが、稀な病気かつ大きな手術のため、足を運ぶメリットは十分にあると私は思います。
※ 実際私も東西を往復の上いくつかを受診して決めました。

ただし、どの病院が良いに関しては環境や距離、先生が合っているかなど、個人に依存する要素が多いため、あくまで参考として頂ければと思います。

※ 特徴自体も私の解釈のため、正確な情報は各公式ページ等をご確認ください

慶應義塾大学病院 (東京)

2016年に漏斗胸外来開設されたようで、比較的最近治療が始められた病院です。症例数については私が確認したタイミング(2022年2月時)では、2020年時点で、挿入66、抜去19と記載がありました。

上記の時点で(サイトの私が見たページには)独自の術式や特徴について記載はなく、Nuss法か場合により胸骨拳上術を組み合わせて行う、といった内容の記載がありました。

サイト:慶應義塾大学医学部 呼吸器外科「漏斗胸外来のお知らせ」

香川大学医学部付属病院 (香川)

永竿先生という名医がおられる所で、600例以上の手術をこなされているという記載がありました。

香川大学病院の公式サイト内の情報の他に「「胸のかたち」研究室」という専門サイトにて情報発信をされており、病気自体については勿論の事、治療方針、アフターケアについて詳しく記載されています。

こちらの特徴としては、CTデータを3次元化し構造解析ソフトウェアによってモデルに仮想的な負荷を与え力学的な計算を行い、骨の変形を予測するといったアプローチが取られており、凹みに伴う症状改善に加えて審美的な部分での改善が謳われています。

また術後フォローアップとして、先生ご自身が定期的に大阪・東京に出張されており診察をして頂けますので、普段は遠方でもとても心強いかと思います。

参考:大阪および東京での診察について

松山笠置記念心臓血管病院 (愛媛)

40年以上、症例数は1000例以上、漏斗胸の治療を行っている病院で、
医院長の笠置先生が漏斗胸の名医です。

ここの特徴は、手術方式がNuss法をアレンジした「筋層下Nuss法」というもので、バーのズレに対してのアプローチが取られています。

公式ページの説明を見ると、手術時は(凹みの程度に依るかもしれませんが)漏斗胸の凹んだ部分をエンジンジャッキを使って強制的に持ち上げ線状骨折を起こさせ自然治癒により形状改善を目指すとともに、その支えとなるペクタスバーを、筋層下と書かれている部分に入れる事で、治療中のズレを防ぐといった内容のようでした。

サイト:松山笠置記念心臓血管病院


その他、「漏斗胸外来」を見かけた病院


治療フローとスケジュールは?

かかられる病院や医師の方針により違いがあると思いますが、私の場合は下記のような形でした。

  1. サイトに記載の専用窓口からメール

  2. 初診日確定(〜1週間程度)

  3. 受診。手術適応の確定(〜1ヶ月程度)
    ※ 総合病院のため、半日程度の休暇が必要です。

  4. 諸々の検査。手術日の確定(〜4ヶ月程度)
    ※ 終日の休暇が必要です。コロナ情勢や休暇取得のタイミングで長引きました

  5. 手術(〜3ヶ月程度)

  6. 入院(2週間程度)

  7. 退院後療養

このときはコロナの影響もあったと思いますが、実際に受けるまで8ヶ月ほどでした。

退院後の行動制限は?

治療法により異なるようですが、術後 2〜3週で少し走ったりできる物から3〜6ヶ月の運動制限がかかる物までありました。
(制限の内容については、各病院の漏斗胸ページが参考になります)

ただし、いずれの方法も共通した制限があり、実体験を踏まえ退院後に困った事として多く見かけたものを紹介します。

  • 寝る/起きるの動作に痛みがあり時間がかかる、または補助が必要

    • 電動ベッドを検討するレベル(2ヶ月程度)

  • 前かがみになれない

    • ならない、で我慢(2ヶ月程度)

  • 重いものは持てない

    • 2Lのペットボトル1本でも、歩くとバーが擦れ痛い(2.5ヶ月程度)

  • くしゃみ、咳が通常通りできない

    • 抑えつつでなんとか(1.5ヶ月程度)

  • 術前と同じ速度で歩けない

    • (2ヶ月程度)

  • 治療中は体力が減る

    • 2〜3年の間はバーが入っているので仕方ないと割り切る

仕事に関しては、入院〜退院後の療養でまとめて1ヶ月ほど休暇を頂き、デスクワークのため術後3週間ほどで復帰できました。

ちなみに、立ち仕事の場合ですと術後1〜2ヶ月ほど休暇を取っている方が多いようです。

ただし、力仕事となると内容によりもう少し必要かもしれないため、この辺りは主治医の先生に相談するのがよろしいかと思います。


費用は?

通常、3割負担で40、50万のようですが、さまざまな制度を使うことで負担を軽減できるため、下記を参考になさってください。

私の場合、勤務先が加入している保険組合へ高額医療費制度の限度額適用認定証の交付を申請しました。

郵送でのやり取りとなり、多くの組合で長くとも1〜2週間程度で届くようです。

この限度額適用認定証には期限があり、事前に申請した期限を過ぎて使用することはできないため、入院期間など踏まえ注意すると良さそうです。

また、高額医療費制度の軽減はその月の1日〜末日を1つの期間として適用され、月をまたぐ場合には算出が月毎となり支払額が増えるようなので、
なるべく月初めに入院して、月内に退院できると良さそうです。
参考:月またぎの入院は損!高額療養費制度「自己負担が増える」落とし穴

次の引用は、年齢別で受けられる制度の紹介になります。

18歳以上の場合

全国健康保険協会の定める「高額療養費制度」を利用することができます。高額療養費の限度額申請をされれば、月あたりに支払うべき医療費に上限が設定され、上限を超える部分については還付がされます。例えば、ある方の上限医療費が例えば8万円であり、治療費の自己負担分が45万円である場合、差額の37万円については事後に還付がなされます。この上限額は収入に応じて異なり、2万円~12万円程度の範囲です。

「胸のかたち」研究室〜漏斗胸専門サイト〜「治療にかかる費用について」


18歳未満の場合

少子化を抑制しようとする国の方針のため、乳幼児および学童における医療費の支払いに関してはかなりの優遇措置があります。自立支援医療制度の適応申請をされれば、数千円~1万円程度の自己負担分となります。お支払になる金額はお住まいの市、区、町によって異なりますので、保健福祉課にお尋ねしてください。また、高収入のご家庭においては自立支援医療の適応とならない場合もあります。この場合には上記で述べた、高額療養費制度を利用することになります。

「胸のかたち」研究室〜漏斗胸専門サイト〜「治療にかかる費用について」


まとめ

漏斗胸は、その症例数のためか術後の事まで書かれている情報はとても少なく、私が手術を決めたタイミングでは数件の公開記事や、一部の非公開記事に限られていました。

しかしそれらを拝読し、執筆者の方とメッセージでやり取りをさせて頂けた事でこれらの情報を調べ手術に備えることができたため、末筆になりますが参考にさせて頂いた執筆者すべての方へ感謝申し上げます。

センシティブな内容のため、それらのブログをここで直接ご紹介する事は避けますが、「漏斗胸 手術 ブログ」といったキーワードで検索頂ければ、見つかるかと思います。

あわせて、実際に手術が決まった向けに入院前の準備や術後経過の情報も残していますので、もしよろしければご参考までに。

この記事が、どなたかのお役に立ちましたら幸いです。

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