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読書日記:清涼院流水『コズミック』『ジョーカー』

悪名高き?メフィスト賞受賞作とその続編を読了。今更感もあるが……
今回は話の展開や犯人・トリックについて触れるため、未読の方は要注意。

作者によって『コズミック 流』→『ジョーカー 清』→『ジョーカー 涼』→『コズミック 水』の読み方がおすすめされていたので、今回はそれで。
結果として、まあまあ面白かった。このとんでもない世界観はなかなか見かけないし、2冊を貫く徹底的な言葉遊びの趣向も楽しめた。
しかし、これは発表からかなり経った現代においての感想なので、当時はかなりの問題作としてバッシングを受けていたというのも頷ける。

『コズミック』は、謎の人物・密室卿から「1200の密室で1200人が殺される」という予告が届くところから始まる。読む前は普通に密室トリックものかと思ったが、「流」を読んでびっくり。これではトリックの施しようがない。ここらへんで、これはまともなミステリではないな、きっと型破りな結末があるのだろうと察した。
そんなこんなで『ジョーカー』へ。正直純粋なミステリとしては三流もいいところだとは思うが、独特な世界観と雰囲気にはなるほど引き込まれるものがあった。虚構と現実の境を曖昧にさせるのも面白い。
しかし、それにしても解決編はちょっといただけない。
氷のトリックや三人同時死の推理は良いにしても、決して解けない密室なんて登場させてしまうのはいかがなものか。こういうのはミステリという枠組みで「足の先っぽ枠線踏んでますよ!」と遊ぶのが楽しいのであって、解かれることのない密室は一線を越えたネタな気がする。
ラスト、少年を犯人に指摘する流れも、根拠に乏しく正直微妙だった。始終言葉遊びを氾濫させたこの作品でも、意外な犯人を解決の後に登場させるにはそれなりの現実性が必要なのかもしれない。
そして『コズミック』に戻る。『ジョーカー』のトンデモっぷりを見た私は、珍しく勘を鋭くしてしまった。つまり、なんとなく結末が読めてしまったのだ。何となく頭には浮かんでいたのだが、『1200年密室伝説』が作中作?だと明かされた際に確信。細かいところには気付くことができなかったので、推理したとは言い難いのだが。まあ、面白い真相ではあったし、言葉遊びも楽しかったので、十分楽しむことができた。

凝っていて素晴らしい作品だったが、文章の拙さが目立った。というか正直辛かった。これはのちの作品では改善されているのだろうか? 読んでみたくはあるのだが、分量が多く、真相はバカバカしく(バカバカしいのがいいのだが)、それで読みづらいとなると、うーん……。
まあどちらにしても、しばらく清涼院流水はいいかな、という感じ。このところ、乾くるみ『Jの神話』、井上真偽『探偵が早すぎる』、小林泰三『時空争奪』、蘇部健一『六枚のとんかつ』とかなり変化球な作品を読んでいて、現在はサークルの課題本でミステリではない『ラブかは静かに弓を持つ』を消化している。そろそろ、オーソドックスでド直球な本格ミステリを読みたいものだ。芦辺拓『殺人喜劇の13人』に目を付けている。


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