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通販で家庭に増えた段ボールの基礎知識

段ボール業界の激変

村上 今回と次回は、同じ会社の方に出ていただきます。段ボールメーカー、日本トーカンパッケージの方をゲストにお呼びしてます。僕も段ボールは毎日のように使っていて、しかも結構マニアックに使っていたりするので、色々知っているつもりでいたんですが、一緒にお仕事させていただき、世界が広くて深いと感じているので、今日はちょっとマニアックな話も含めてお伺いしたいと思っています。
ところで今井さん、普段、段ボールはどんな使い方をしていて、あるいはこんな風にも使えるんじゃないかとか、思ったりすることありますか?

今井 そうですね。最近はやっぱり通販で物を買うことが多いじゃないですか。今まで、段ボールは箱というイメージだったんですけど、最近は封筒のようなものも段ボールで出来ていたりとか、びっくりしますね。あと開け方がワンタッチでこんな風に開くんだとか、毎回段ボールを見ると驚きがあって、楽しさがありますね。

村上 そうですよね。特にコロナもそうですけど、宅配で荷物が届くようになり、開け方も随分変わってきてるなと思うんですけど、その辺り日本トーカンパッケージの佐藤康博さんに伺いたいと思います。佐藤さん、実際何か変化はあるんでしょうか。 

佐藤 やはり今までは飲料缶を包むとか、野菜を包むとか、ほぼ決まった箱だったんです。それがこの頃はお客様にダイレクトに届くということで、送る方もちょっと何か工夫をしたいなっていうところがあって、開封性を良くするだとか、もう一度フタができるようにするだとか、そんな需要が多くなってきてます。

村上 いきなり質問から始めてしまいましたけど佐藤さんよろしくお願いします。佐藤さんは段ボール業界が長いんですか。

佐藤 30年ぐらいやってます。

村上 30年の中の実感としては、段ボールの業界は、この数年、結構大きな転換なんでしょうか。

佐藤 非常に大きな転換期だと思います。コロナの影響もあったと思いますが、ここ2年くらいでガッツリ変わった感じがします。

村上 最近思うのは、薄いダンボールで荷物が届くことがあるなって思うんですよ。そういえば重たい荷物ってそんなに頼まなくなったなぁなんて思うんですけど、段ボールって、薄さであるとか硬さも色々違うと思うんですけど、どういう構造というか、どんな感じなんですか 。

佐藤 段ボールは3枚の紙で出来てるんですが、厚み自体は6〜7種類あるんです。

村上 どう使い分けてるんですか?

佐藤 基本はその箱の強度をどうやって持たせるかというところにかかってきます。厚い段ボールは強いので重たいものを入れるときは厚い段ボールになります。先ほど村上さんが言われたように、このごろ薄いのが多いというのは、やっぱりお宅に届く荷物はそれほど重たくないから薄い段ボールが増えているんですね。

村上 段ボールには間になみなみのやつが入ってるじゃないですか。あのなみなみが大きくなると、厚くなるっていうことですか。

佐藤 そうです。実際には規格で、決まった長さの中にどれだけ山があるかで、その厚みが決まる形になっています。なみが大きいほど厚くなるって思っていただければと思います。

村上 大きな波と、詰めているというか細かいピッチのなみもあるような気がするんですけど。

佐藤  波の高さで段ボールの厚みが決まりますから、5ミリの段ボールだとそんなに細かい波にはなれないんです。逆にいうと3ミリの段ボールだったら小さな波じゃないと作れないということになります。

村上 なみを三角形でとらえたときに、角度はだいたい決まってるということですか。

佐藤  だいたい一緒です。

村上 単純にあのスケールを大きくしたり小さくしたりということですね。

佐藤 そんなイメージです。

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リサイクル率90%以上

今井 今度、宅配便が届いたら何ミリなのか気にしてみたいなと思います。ところで佐藤さん、僕も普段から段ボールをたくさん使ってるんですけど、うちの辺りだと段ボールは資源のゴミの日に出すんですけど、あの段ボールって、その後どこに行っちゃうんでしょうか。

佐藤 実は段ボールは、リサイクル率90%以上なんです。集められた段ボールは製紙メーカーに持って行かれて水に溶かして原料として使われて、また同じ段ボールの原紙になるという流れになってます。

村上 僕の実感でいうと、段ボールの使用量がすごく増えたと個人的に思っているんですが、たくさん捨てられても、リサイクルしてるやつだけで回っていってしまうのですか。

佐藤 ほぼ、そうですね。ほぼほぼ回っちゃうんですけども、リサイクルに戻ってこない部分があって、その分は足しているようなイメージと思ったらいいと思います。

村上 何を足すんですか。

佐藤 バージンパルプを足していくということです。ようするにリサイクルの紙ではなくて、ピュアな紙といったらおかしいですが、初めて消費する紙、原料がパルプから来てる紙と考えてもらえばと思います。

村上 いまリサイクルは世の中ですごく言われていますけど、佐藤さんからすると、もっと段ボールをこういうふうに使った方がいいとか、こう捨ててくれた方がいいとか、どうみていらっしゃいますか。

佐藤 今の環境とかを考えると、もっともっとリサイクル率が上がってもいい。もっと完全に回収できるような仕組みができたら、さらに伸びていくんじゃないかなって思います。

村上 何度もリサイクルされると、汚れたりして戻ってくると、どんどん不純物が入たりとか、そういうことはないんですか。

佐藤 おっしゃる通りで、元々のパルプ、木から作った段ボールに比べてどうしても繊維の長さが短くなってく傾向があるので、強度が落ちてくるところはあります。ただしそこに薬品を混ぜて強度を増すような原紙もあるのが、今の現状です。 

村上 汚れた段ボールとか、ちょっと濡れてしわしわになっちゃった段ボールとかだと、リサイクルに出すのが忍びないかなって思うようなことがあるんですが、あんまり気にしなくていいんですか。

佐藤 全然気にしなくていいです。結局水に溶かして繊維状まで戻しますから、汚れも全部取れてしまうので、そんなの気にしないでどんどんリサイクルしていただきたいですね。

村上 迷うぐらいなら出してくれたほうがいいんですね。そうすると、どんどん循環が良くなって、繊維が短くなるのはいろんな技術でカバーしつつ、毎回同じようなものができてくるってかたちですね。
ちなみに佐藤さん、世界のダンボール事情ですが、たまに海外から荷物を送ってもらうことがあるんですけど、質がちょっと違うような気がするんです。日本のものより手触りが若干かさかさしてるようなっていう表現が合っているのかな。

今井 なんとなく、分かります。輸入のミネラルウォーターを買ったときに包まれているトレーの段ボールはなんか、ちょっと見慣れない段ボールだったりしますね。

佐藤 日本のものより硬いと思います。それは原紙にも理由があると思うんですね。やっぱり日本の原紙よりも海外の原紙の方が繊維が長いことが多くて、原紙自体の強度が強いのが海外の紙だと思います。

村上 原紙というのは、一枚の紙で、さっきのなみなみも原紙をなみなみにしているということですね。

佐藤 そうです。段ボールは3枚の原紙でできてるよって思ってもらえばいいと思います。

村上 段ボールは海外発祥なんですか。

佐藤 そうです。

今井 段ボールのリサイクル率が90%とは驚きました。ほかの素材ではなかなかない数字じゃないかと思います。もしかして段ボールで置き換えられるものがあれば、メリットがあるのかなと思いました。

(文 ネイティブ編集長・今井尚、写真提供 日本トーカンパッケージ)


次回のおしらせ


あらゆる商品をつつんで、運び、届けるのに使われる段ボール箱。その開発をしている日本トーカンパッケージの包装開発センター長、佐藤康博さんに登場いただきます。使い終われば捨てられてしまう脇役ながら、なくてはならない大切な存在ですが、どんな思いで箱を作っているのでしょうか。お楽しみに。

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