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何を受け継ぎ、何を伝えていくか

一線をこえない挑戦

今井 前回は、一つは「自分都合ではない生き方」という点についてお話しさせていただきました。相手がいる自分だけが生きてるというよりは、そこには自然があったり、別の方々がいたり、あるいは地域住民がいたり、かならず相手がいるので、そこに寄り添っていく生き方をされている方が多いなということを共通して感じました。

村上 そうですね。僕はゲストの方にお話を聞きながら、一方で自分ではどうだったかと頭の中でぐるぐるしながら、ゲストの方それぞれのフェーズでどんなとこで悩んだのかを意識しながら聞いていました。僕は南極観測隊員だったんですが、南極では自分一人の都合ではなくて、でもゲストみたいなのはいなく、みんな一律なんだけど、やっぱりそこには超えちゃいけない所があるんです。60年以上続いてる観測隊の中で、これまでの先人たちが繋いできてくれたものをここで途切らせてはいけないとか、あるいかこの先どう繋げていくか、それが大前提にあって、目の前でどうアクションをするかすごく意識してたと思うんです。例えばこの先もう一歩行けばすごく素晴らしい観測データが得られるかもしれないシチュエーションが仮にあったとしても、そのクレバスを超えることで万が一事故が起きるかもしれないとき、そこは超えないということを常に意識していたんです。ギリギリの挑戦をしえ得られたデータと言うよりも、観測隊として積み上げてきた力であればその場所に行ってこのデータは取れるに違いないという中でのチャレンジをするというのが大前提にあったと思うんです。
失敗と敗退って、全然違うんです。敗退は自らその状況をちゃんと分かっていて、自ら引くこと。もちろん「何で行かなかったんだ」みたいな批判もされるかもしれないけど、でも自分の中で「あえて引いたんだ」みたいなところもあるわけです。そこには「自分の力量が足りてなかったから行けなかったんだ」とか「環境がこうだったので、そこをちゃんと分析したから行けなかったんだ」みたいなことが根底にあると思うんです。その一線は僕も常々意識しながら行動してきたと思っているんです。
今までのゲストの皆さんも、色々状況が違うと思うんですけど、たとえば横浜でアートを通したまちづくりをされていた大越晴子さんには、相手がいて、人がいて、やりたいことをやって攻めた結果、まちのイメージにいいイメージを与えようとしている。恐怖心と、だからと言って逃げ回るわけではなく、その先にこれをしたらきっと次に繋がる価値があるんだというところのせめぎ合い。これは僕の視点になっちゃうんですけど、僕はいろんな方々の話を聞きながらそれがあったし、ゲストの方々もそのシーンはイメージされていたんじゃないかなという気がするんですよね。

愛着を持つこと、押し付けないこと

今井 なるほど。 大越さんは、今までアートに全く縁のなかった人たちに話をしてそこに関わってもらい、興味を持ってもらった人にはボランティアとしてかかわる機会を設けるなど、いろんなステージを用意して、多様なかかわり方の場所を用意しているのがすごく立体的だなと感じました。「リスクがハザードに落ちなければやってもいい」というのはがってんさんがおっしゃっていたことでした。挑戦するということはそういうことなのかなと思いました。
もうひとつ、皆さんに共通することとして、自分の場所、自分の町、あるいは自分の分野にすごく愛着を持つことを大切なこととしてあげる方が多いと感じたんです。
例えば大越さんはもちろん横浜という町を好きになってもらいたいということで活動されてますし、桑原さんも復興って何なんだろうって言った時に、益城町という町を好きになる事が最大の防災なんじゃないか、親しい友達や、親しい近所の方々を作っておくことが本当の防災なんじゃないかというようなお話も繰り返しされていて、僕もハッとさせられました。皆さん森であったり自然だったりもふくめ、自分のフィールドを愛するということかと思っていて、こんかいでこのポッドキャストも50回目ですが、これから50回、100回と目指す中でいろんな分野への愛について聞きたいなと思たんです。

村上 当然、苦労もたくさんあるし、思った通りに行かないとか、特に桑原さんのような防災の世界ではいろんなことを言われたり、おそらく辛い目に合うこともある中、それでも続けていくにはやっぱり、自分はここがすごく好きなんだ、そういう部分も含めて好きなんだという愛着は確かにすごく節々感じました。
一方で、これは僕の感覚も少し重ねちゃうんですけど、好きすぎてしまうと、ほかの人にも同じ現場を見せれば愛着を持ってもらえるんだって思いがちだと思うんですよね。でもそういう感覚は11人の方、あまり持っていなかったんじゃないかという気もします。たとえば10人に「これいいでしょ」って見せたら、、3人は同じように「いいね」って言うかもしれないけど、のこりの人に「よくわからない」って言われる感覚。それを持ってると思っているんです。いいねと言ってもらっても、自分が愛してるところとは違うところを見て「好き」という人もいるかもしれない。そこのところ、すごく共通すると思うんです。

今井 辻さんもゲストが見てる風景が全然違ったりするっておっしゃっていました。また、子供たちをナビゲートするがってんさんも、何かを教えるためにナビゲートしているわけではなく、何を感じるかは自由に任せているっというか、「プログラムを壊す」というお話もされていました。どこに向かって行くかはその人それぞれ。ただ自分としてはってのがやっぱりあるなと感じます。

村上 そういう意味では、自然との距離感とか間の取り方みたいなのと同時に、自分の愛すべき土地の話を次の訪問者に対しても押し付けすぎないと言うか、そこにもちゃんと距離感をもって、そっと「どう?」みたいなところがゲストの方に共通していたと思います。それは懐の深さになると思うんです。いろんな見方が自分のフィールドにはされていて、いろんな愛され方、愛し方があるし、嫌うことだってあると思うし、そういったいろんな意見の中でこのフィールドがこのまま続いていくために、今一番近い場所にいる自分は何ができて、何ができないんだみたいなところがあると思いました。さらには自分の寿命が有限な中で、原さんなんかは、自分は先に死んじゃうけど木は100年、200年と次の世代につなげていく中で、何を託していくのか。それがうまくいかなかったという話もありましたけど、そういったつなぎ続けていくのかみたいなところがあるのかなと感じました。
 これから51回目ですが、すこしこんな話が聞けるといいのかなみたいな着地点が見えてきたんですかね。あまりそういうものは持たない方がいいような気もしますけど。

今井 これからもどういう話が展開されるかわからないところが冒険的な感じがしています。自分たちの想定していたもの以上の所に行くには、あらかじめ想定しない方がいいのかなと感じます。

村上 ゲストの方次第ではありますけど、「引き継ぐ」ということに興味を持ったんです。原さんの林業だけではなく、自分が現役の中でできることはここで、その次、またそのさらに次、みたいなところを意識しながら、今自分がやることはなにか。逆も然りだと思うんです。自分も先代や先々代から引き継いでるというところの世代交代をどう意識しながら続けていくか。改めて聞いてみたいなと思いました。
ちょうど、がってんさんと、辻さんは師弟関係です。まさにここは世代交代なわけです。ちょっと次くらいにぜひ師弟同士をお呼びしてそのあたりのお話伺いたいなと思います。

今井 長く共同生活もされていたという話も伺いましたね。

村上 あいかわらずこの番組は、僕らが聴きたい話を伺い勝手に聞いて、皆さんに聞いてもらっているわけですが、次回以降も続けていきたいと思います。

今井 次回以降もよろしくお願いします!

(文、ネイティブ編集長・今井尚、写真提供・原薫)

次回のおしらせ

次回は新たな試みです。しまなみ野外学校の木名瀬裕さん(がってんさん)と、北海道天塩川のカヌーガイドをする辻亮多さんのお二人をお迎えしての座談会です。実はお二人は子弟の関係。伝えてきたこと、受け継ぎ、自分自身の仕事として展開し、そして次につないでいくことについてお話を伺います。お楽しみに!

The best is yet to be!

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