【詩】「桜」
今 僕らが見上げているサクラはもうすぐ散るだろうけど
見つめている先にどんな想いが浮かぶ?
同じ景色でも多分違う色を見つけてる
そのことに苛立ちを感じていた時期も昔は確かにあったけど
今はその人の色を聞くことを少しはできるようになった
「走らないと」と思う焦りみたいなものがこの心のどっかにあって
疲れながら足をもつれさせるように過ごしていたんだ
そんな僕の裾を引っ張る誰かに振り返ったらそこに君が立っていたんだ
あれから少なくもない時間が積み重なって またこうして春が来ている
今 見上げているこのサクラはもうすぐ散るだろう
僕らのこの繋がりもいつかは消えるのだろうか
消えていくことを哀しいとも思わない過去を繰り返してきて
ようやくそんな問いができるようになった
流れていく時間の中で寂しさと優しさの色調が少しだけ深くなっていた
明確な答えなんて出せるほどに僕は嘘つきにはなれない
そんな僕を卑怯者だと指差す人もいるだろうし、首を振る人もいるだろう
ただ、ためらいつつも築いている答はあるよ
その答が出来上がったときに 誰かが隣にいてくれるだろうか
誰にも言うことはないし 君も忘れているだろうけど
君があの時くれた言葉が 今の僕にした
この身の内の冷たい理性ですらもはや苦笑いするしかない
だから、僕は今はまだここにいるんだ
今 風に吹かれて サクラの花びらがどこかへ流れてる
見つめている花はいつかはこうして散るし
抱きしめている記憶も少しずつ薄れていく
そして、時を経て、また別の花が咲くし、鮮やかな記憶を作る
それは生きていくために必要なささやかな輪廻
「永遠」なんて信じちゃいないし、認めやしない
でも、悔しいけど
君と並んで桜を見上げたそのときに想った気持ちは
恋とか愛とかはとりあえず抜きにして
出会った一人の人間として 限りなく「それ」に近いんだろう
僕にできることなんてたいしたことじゃない
「君を守る」なんて言い切るほどに身の程知らずじゃないし
寂しがりで泣き虫な君のほうが実は強い
迷いっぱなしで なかなか落ち着けない僕だけど
それでも この僕で君の幸せを精一杯願おう
どこにいても いつになっても
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