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再掲【詩】「sharp」

デスクに散らばった数枚のレポート用紙
ボールペンで書き込まれた数字と文字
エクセルには落とさない
いくつかを忘れるとしても頭に叩き込むつもり

メールにはロックをかけている
そのドアを開ける鍵に
思い当たるヤツはなかなかいないだろう

ニュースをクリックして訃報を次から次へと見ていく
人は意外とあっさりこの世界から去っていく
そう言い切る理由は僕が対象の歴史を知ろうとしないからだ

リンクは思いがけないところから始まり
結局は途切れてしまう
何処かでぶつかる「Not Found」

それでも僕らは生きていく
この身体を動かすゼンマイが切れるその日まで
この心の中のガラス球が輝きを失うその日まで

本当に大事なものは
写真にもメモ帳にもHDDにも遺さない
総てこの泥の塊の中に抱いていく

時間は残酷にも僕らを老いさせる
再インストールできるわけはない
たった一度きりの瞬間を積み重ねて過去を増やす

「君が好きだよ」そう綴った想いも枯れていく
微笑みながら触れ合った感触も忘れていく
それを哀しいことだと思ったことも消えていく

闇の中で孤独と恐怖に震えて
明日の朝陽を待ち望んでいる
まず「生きている」 それが僕の日々のPortal

出会いは思いがけないかたちで始まり
必ず終わりを告げる
これ以上はとべない「Not Found」

それでも僕らは生きていく
この身体を動かすゼンマイが止まるその日まで
この心の中のガラス球が輝きを失くすその日まで

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