見出し画像

【詩】「マーチ」

一年前の僕より早起きな僕が
目覚め始めた街を駅へと歩く

車の往来はなかなか途切れずに
エンジン音がBGMになっている
平日の僕のマーチ

大体毎日笑っていて声を荒らげることもない
あぁ でもこの前久々に悔し涙を流したな
公園で泣きながら鳩が歩くのを眺めていったっけ

何も変わってないように思ってもやっぱり変わってる
長らくメールしてたあの子のメアドは消してしまったし
痩せた体に合わなくなったスーツもまとめて処分した

未だに落ち着きないけど相対的に生活は落ち着いてる
お酒を飲んで騒ぐ回数も減った代償は
たまに飲んだ翌日の酷い二日酔いだったりする

お気楽な自分だと分かってても漠然とした不安はある
龍之介みたいに自分を殺すとこまではいかないけど
洋介みたいに空を飛んでみたい衝動には襲われるんだ

数年前の僕にゃなれなかった今の僕
メガネは外して脂肪を燃やして髪も短く染めて
新聞や本を乱れ読んでクラシックなんかも聴きだして

誰かが僕に聞いた 「お前はどこに行きたいんだい?」
シンプルに答えるなら 「僕は幸せにたどり着きたい」
欲張りな本音だろう? 失笑してくれていいよ

大体毎日笑っていて真顔になることもあんまりない
短いとは言えない人生を生きてきて見つけたこの術
ワラウカドニフクキタル 笑いつづけるから幸せよ来たれ

一年前の僕より早起きな僕が
目覚め始めた街を駅へと歩く

車の往来が不思議と途切れる一瞬がある
短い静けさの中に響く僕自身の靴音
それが本当の僕のマーチ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?