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再掲【詩】「恋は脆い」

携帯の着信を気にしてかソワソワ落ち着かない
「ちょっと失礼」と席を立ったのはお待ちかねだったかな
戻ってきた顔はひとまずは落胆の顔ってことはまだみたい
僕は何にも気付かないフリをしてグラスのお代わりを聞いた

恋は脆いものだと僕も君も知ってる
知ってるのに二人異なるのはその後の受け止め方
僕は「だから」君は「だけど」

そんなに頼りにしたいものなのかい?
僕にもそういう時期があったみたいだけど
天邪鬼な心はその対象をすりかえていたんだ
僕が欲しがったモノは誰かにとっては到底あげられないモノだった

右の手首に巻いた時計の針の位置をチラチラ見ている
「ちょっと失礼」と今度は僕が立って君の視界から消えてやる
わざわざこの店の入り口に近い席を取った理由を君は知らない
席に戻ろうと歩く僕の視界の隅に少し慌てた君の姿が入る

恋は脆いものだと僕も君も知ってる
知ってるのに崩れた名残にしがみつこうとしてる
その惨めさを僕はいつか思い知った

そんなに夢をみたいものなのかい?
彼の話題を振ると君の声のトーンがあがる
僕にもそういう風に想える相手がいたはずなんだ
でも僕の記憶の中のその人の姿はいつからかぼやけているんだ

君がおしゃべりになればなるほどに僕は冷えていく
そんな経験を繰り返して僕は自分のどうしょうもなさに気付いた
いつまでもしゃべり続けてはいれないだろう
息を吐いたそのときに君は微かに視線を動かして誰かに気付いた

恋は脆いものだと僕も君も知ってる
知ってるのに二人異なるのはその後の受け止め方
僕は「だから」君は「だけど」

そんなに大切にしたいものなのかい?
皮肉屋な僕が舌を出しながら囁きかける
まだいくらか残ってる夢想家な僕が甘い反論をしようとしてる
でも結局は結論を出すのを諦めてしまった僕に何の価値もない

君が誰に気付いたのかは分かってる
でも君が何を感じて黙ってしまったのかは分からない
うつむいた君が今どんな想いでいるのかも分からない
僕は何にも気付かないままで「お先に」と声をかけて席を立った

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