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【詩】「Miscast」

指先一つ動かすだけで世界情勢が見れる今日この頃
親指か人差し指かはたまた小指か
一本の指だけで僕らは情報の波に呑まれることができる
あぁ、でも頭の悪い僕にはひとつも理解できないや

「日経」は見ただけで頭痛がする
スポーツ新聞の紙面で誰かのスキャンダルに時間を潰してる
何にも知らなくても ほら時間は過ぎていく
誰かの小難しい話には分かったような顔とありきたりのコメントで

夢は見る 夜毎迎える浅い眠りの中で
でも現実の朝に目覚めれば スペースは窮屈で置き場がない
だから 僕はリアリストだよ
だけど それはミスキャスト

だってそうだろ 溺れてるだろ 「自分」をつくりあげることに
素直な自分、嘘つきな自分、卑屈な自分、嫌味な自分
臆病な自分、明るい自分、泣き虫な自分、ピエロな自分
あふれてる 無数の人格のごった煮で「僕」ができる

一人じゃありえないよ 一人じゃない そう言い聞かせる
でも この体を動かす僕は一人だけだ

誰かのプロフィールの束を見てその狂騒ぶりに呆れながらも
心のどっかでうらやましさを感じてる
斬った張った惚れたの世界にいることを望んだわけじゃないさ
でもそういう自分が強がってることも分かってる

匿名者たちが集まり仮面をかぶり「真実」を述べるパーティー
誰かをふるいにかけて誰かにふるいにかけられて
残るのはいつだってそう思いこむしかない「嘘」の塊だよ

恋はする 満員電車の中でも人ごみの中ででも
でも時間を重ねていくと 色はいつだって色褪せていく
だから 僕はペシミストでいい
だけど それは似合わないミスキャスト

だってそうだろ 笑ってるだろ 「自分」をかばうために
「いつも笑ってる」と言われてそれに反発もしたけど
もう何にも考えてないと思われてるならそれでもいいやと
あきらめた そう思えば普段の暮らしがちょっと楽になった

ひとつじゃありえないよ ひとつじゃない それは分かり切ってる
でも この僕の中にある「心」はひとつだけだ

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