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【詩】「響き」

どうもがいたって消せない過去
どうしたって消えない記憶

楽しい今日で上書きしても
虚しさがどっかはみ出してる

いつから深く眠れなくなった?
独りで寝ても二人で寝ても
深みに落ちていかずに浅瀬をうろついてる

疲れた心で起き上がり
眼鏡に手を伸ばすそんな朝たちに

この僕の中でずっと響き続けるのは
もう逢えない人が遺したその言葉


「どうして心を開いてくれないの?」
「なんで私を見てくれへんの?」

こっちが問いたい
君の目の前にいるのが僕なのに
違う僕を探しているのはどうして?

どこまで人は求め過ぎてしまう?
「ここまでよ」と引かれた線を
思い上がって平気で踏み越えてしまう

そんな繰り返しが溜息を濃くして
苛立ちの時間が増えていくんだろうけど

どこかにリセットボタンはないかい?
叶わない願いを浮かべてしまう
もしも戻ることができるのなら?
ただ どこに戻ればいいのかが分からない

今以上の僕は後ろにはいないんだろう

せわしい心で時間をかきわけ
ちっちゃい窓から晴れた外を見つめる

この僕の中でずっと響き続けていくのは
空の向こうにいる人が遺したその言葉


永遠にはなるはずのない ちっぽけな生
幼い感情だったさ それでも幸せだった
誰かと誰かが出会うことで生まれた結晶は
ひょっとしたら輝きを失うかもしれない

それでも輝いていたことを否定しないで

どうもがいたって消せないその過去
どうしたって消えないその記憶
これからも引きずって生きてくだろう

あのときの
苦しみも悲しみも寂しさも何もかも
時間が確実に薄れさせてくれてるけど

冬の終わりに声を出さずに泣いてしまうことがある
この胸の中の穴は塞がらないままだ

戸惑い続けている心で
誰かといつか並んで見た景色を独りで見つめる

この僕の中でずっとずっと響き続けているのは
もうこの世界では逢うことのない人がくれたそのことば

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