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再掲【詩】「せめて」

静かな夜だ
君に手を振ってから車を出した夜の続き

君の優しさを思い出す
とりとめもない話に癒されている

ただ過ごしてるだけで実は辛いこの世界
その痛みはゆっくりと心蝕んでいる

だから命は消えていく
いつでもどんな時代になろうとも

たとえるなら一片の花にしか過ぎない僕らだけど
せめて僕らなりの鮮やかな色を
せめて僕らなりのかぐわしい香りを
この暮らしの中で

君は少しでも
僕と一緒にいてよかったと思ってくれてるかな
時折そんなことを考える

せめてこの生で一人ぐらいは
「幸せにしたい」と思える誰かを幸せにしたい

寂しい夜だ
君に手を振ってから部屋に一人いる夜

君の笑顔を僕の中で探す
リアルには程遠いけどそれでも癒される

ただすれ違うだけの声に傷つくこの世界
皆どこかしら傷を抱え心は荒れている

だから命ははかなくて
胸の鼓動はいつか途切れるのだろう

かなしいかな一瞬の夢にしか過ぎない僕らだけど
せめてかけがえのない輝きを
せめて悔やむことが少ない思い出を
その夜明けの前に

せめてこの生でたった一人でもいい
「出会えてよかった」と思える誰かと一緒にいたい

たとえるなら名もなき花に等しい僕だけど
せめて僕なりの色で
せめて僕なりの丈で
その願いとともに

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