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朝日新聞がHPVワクチンを否定する論調の発端だとする論文
2016年9月22日付で以下の論文が公開されました。
HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)に関する朝日・毎日・産経・読売・日経の各新聞社の1138の記事のうち、全文が入手できなかった12の記事を除外したものを対象にしています。
そこでは、2013年3月8日の記事(朝日新聞の記事)がHPVワクチンの副反応やリスクが喧伝される「発端」であると指摘しています。同年の6月14日に厚労省がHPVワクチン接種の積極勧奨を取りやめています。
※副反応と副作用は別。
2013年3月以前は、ネガティブ-ネガティブ(青)とネガティブ-ニュートラル(ライトブルー)の記事の割合はわずか3.3%で、ポジティブ-ポジティブ(ダークレッド)とポジティブ-ニュートラル(ピンク)の記事の割合は59.5%だったとしています。
ところが、2013年3月以降、ネガティブ-ネガティブとネガティブ-ニュートラルの記事の比率は合計で53.6%に増加し、ポジティブ-ポジティブとニュートラル-ポジティブの記事の割合は8.1%に急落したとしています。
朝日新聞 HPVワクチンの副反応「スクープ」記事
子宮頸がんワクチン重い副反応 中学生、長期通学不能に 2013年3月8日9時28分https://web.archive.org/web/20130308164252/https://www.asahi.com/national/update/0308/TKY201303070493.html
この記事はWEB上からは1か月後には削除されていました。
現在に至るまで、この報道について何か謝罪したとか撤回したとかいうことは聞きません。
なお、朝日新聞は副反応に関する報道をその後も継続していますが
参考:子宮頸がんワクチン接種、通学できぬ少女 推奨中断2年2015年6月14日03時48分https://web.archive.org/web/20151011141859/https://www.asahi.com/articles/ASH6B0H1DH69UTIL05H.html
2016年の副反応に関する論文が撤回されたことを2018年に報道しています。
参考:HPVワクチンの論文撤回 英科学誌「不適切な方法」
2018年5月13日 19時47分https://www.asahi.com/articles/ASL5D7J3ZL5DULBJ00D.html
政府の情報発信がメディアに負けたことをも意味する
この論文からは、日本政府当局の情報発信がメディアのそれに負け、不十分だったということが伺えます。
添付の図表では、HPVワクチンに関する政府の情報は、メディアのセンセーショナルな報道のあった2013年3月以降に増えたにもかかわらず、有効性に関する記事よりも副反応に関する記事の方が圧倒的に増えたのが視覚化されています。
メディアの限界を示唆する論文
この研究の考察部分では、「我々の研究は、リスクと利益のバランスを科学的に落ち着きをもって議論できる環境を作り出すためには、既存の新聞では限界があることを示唆する」としています。
また、そのような議論の土壌を作ることについては、「ソーシャルネットワーキングサービスやオンラインメディアに参加する個々の医師が増えていることから、草の根のリスクコミュニケーションがそれらを通じて行われることで、公衆がバイアスの無い情報にアクセスするためのオプションを提供することで寄与し得る」としています。
Twitterで個々の医師が発信しているものなどはまさにこれですね。
また、この研究では新聞記事のみを対象としており、「テレビ番組やインターネットメディアなど、世論に影響を与える可能性のある他のメディアのコンテンツは調査していない」とありますから、この観点からの検証をするとまた違った視点が得られるかもしれません。
以上
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