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「女子力」が役割固定を助長するとした鳥取県男女共同参画推進員の根拠が誘導アンケートだった問題について

こちらで詳細は論じたのだけど、実は朝日新聞のアンケート結果ページから全ての意見とその投稿日時が分かるので調べました。

「女子力」が役割固定を助長するとした鳥取県男女共同参画推進員

【鳥取県】歌詞の「女子力」が 問題視され ガールズバンドの歌が 公開停止になる - 示現舎

・鳥取県倉吉市で活動するガールズバンド「マーブル・キッズ」の楽曲「スタミナ納豆」の歌詞の一部に「女子力」があり、県民が問題視する申出があった
・県男女共同参画推進員がこれを取り上げ、問題視する内容の意見書を公表
・意見書には『「女子力が上がる」というフレーズは、女性の固定観念的なイメージを助長する恐れがある。県として、行政職員に対する男女共同参画の理解を進める研修が必要』と記載
・結果、配布された当該楽曲のCDが回収され、Youtube動画が非公開に
・7月22日に県の男女共同参画推進員から意見書が出されたことをマーブル・キッズ側に伝えたところ、マーブル・キッズ側から歌詞を変更するという申し出があった

示現舎の記事から事態をまとめるとこのようになっています。

鳥取県の男女参画推進員の問題

で、私が何を問題視してるかというと、鳥取県の男女参画推進員が『「女子力が上がる」というフレーズは、女性の固定観念的なイメージを助長する恐れがある』と判断した根拠です。

1:朝日新聞のWEBアンケートの結果を用いていたが、それは「女子力」を否定する記事の誘導によって形成されたものであり、実態を反映していない
2:他の学術論文等がネット検索で容易に発見可能なのに、それをまったく考慮しない「チェ―リーピッキング」が行われている
3:マイナビアンケートを根拠に『「女子力」という言葉には男性の女性に対する願望や理想が投影されていると考えられる。』としてるが、これは「男性200人」に対するアンケートと明記してあり、「男性の女性に対する願望や理想が投影されている」となるのは至極当前の話

以下では1番について決定的な証拠を突きつけます。

朝日新聞の「女子力」アンケートの誘導

朝日新聞のアンケートは「女子力」って? - フォーラムで行われたのですが、調査期間が2016年12月26日~2017年1月24日14時 で、計1621回答が寄せられています。

ところが、このアンケート期間中の2017年1月22日に「女子力」って何だ 宴会でサラダ取り分け上手な人?という記事と、(フォーラム)「女子力」って?:1 そのイメージという記事が掲載され、記事末尾に上記アンケートへのリンクが貼られていたのです。

これらの記事の内容は導入部分で【女性にばかり多くを期待されることへの「もやもや」】と記述し、【朝日新聞デジタルのアンケート結果から】として、「役割を固定する」「しんどい」など、「女子力」に対する否定的な意見のみを掲載しています。

過去にそのようなアンケートを行ったということが確認できないため、「朝日新聞デジタルのアンケート結果」は、実施期間中のアンケートを指すものとしか思えません。

つまり、朝日新聞のやっていた行為は、実施中のアンケートの結果を操作する不正行為であり、倫理観のかけらもありません。

なお、「女子力」向上、女子校がPR 知性や感性、育成うたう や、「女子力」アップ、女子校PR 「モテ」ではなく「自立する力」育むという記事が1月10日5時台にありますが、これらはどちらかと言えば肯定的に捉えている雰囲気ではあります。

しかし、いずれも有料部分があり、前者は無料部分では明確な肯定・否定は示しておらず、リンクも本文に付けられたものではありません。しかも、有料部分があるため全体の評価は分かりませんでした。後者は有料部分が多くなり、アンケートへのリンクは見つかりません。

ちなみに、8日の12時16分にオーガニック、なぜ女性に人気 社会に疲れ「最後の砦」においても「女子力アップの抑圧にすごく疲れている」と書かれている様子がディスクリプションで確認できますが、アンケートリンクは無料部分にはありませんでした。

冒頭に掲載した私の記事では、「女子力」を否定する記事がTwitterで大拡散されていることを示しましたが、ここではより直接的に、記事の掲載前後の意見投稿数を比較していきます。

朝日新聞の「女子力」否定記事のアンケートへの影響

アンケート回答1621件中、394件が1月22日の記事リリース以降でした。

実に24.3%です。

当該アンケートは12月26日~1月24日14時までの30日間のアンケート。

当該記事後の3日間(厳密には2日と9時間)は、単純に割合に直すと7.9%~10%の投稿があり得るに過ぎません。

つまり、少なくとも実に14.3%もの回答の嵩上げが1月22日の記事によってなされたと推定される、ということがわかります。

ちなみに、それまでのアンケートの回答数は以下となっています。

8日の12時16分以降77件(それまでは46件)
9日31件
10日の5時以降100件(それまでは13件)
11日24件
12日9件
13日11件
14日9件
15日8件
16日8件
17日12件
18日2件
19日0件
20日2件
21日1件

流石に全部調べるのはやめましたが、以下の傾向を指摘できます。

1:「女子力」に関係する記事が掲載された後にアンケート回答数が跳ね上がっている
2:22日に至る時点では、アンケート回答数は先細りしており、「死に体」だった。

ということで、回答の嵩上げ率は14.3%では済まず、ほぼ全てが22日の記事に由来していることが確定的に明らかになりました。

しかもこのアンケートページ、途中でも回答者の意見が見れるようになってるんですよ。これではエコーチェンバーで類は友を呼ぶ状態になりがちです。

「女子力」の言葉狩りまでの3つのモラル崩壊

ここで指摘できるのは、以下の3つのモラル崩壊です

1:アンケート期間中にその結果に影響を及ぼすような記事を書き、その記事にアンケートへのリンクを貼って【結果の誘導】をした問題。

2:鳥取県の男女共同参画推進員が朝日新聞のWEB調査結果のみを使い、検索すればいくらでも出てくる学術論文等(「女子力」に否定的な結果は確認できない)がいくらでも見つかるのに、敢えてそれらを無視した【チェリーピッキング】をして報告書を書いた問題。

3:このような意見書・報告書を鵜呑みにして公表までした鳥取県の関係者のガバナンスの問題

男女共同参画推進員が朝日新聞のアンケートが誘導的であるという事に気づかなかった点は仕方がないとしても、他のデータ無視に関しては、著しく怠慢というよりは意図的な情報操作であるとしか考えられません。

これは、鳥取県の男女共同参画推進条例に基づいて行われたわけですが、同様の条例がある自治体、同様の取り組みを行っている全国の自治体に波及しかねない事件であり、到底看過できません。

なので、鳥取県や倉吉市教育委員会の関係部署にはメールしましたが、どうなることやら。

以上

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