平安時代の名も知らぬ誰か

久々にひとりで過ごす休日を西新宿の日本酒バーとゴールデン街のバーで楽しんだらしい恋人は、翌日のわたしの朝ごはんを作ると言って、うちに現れた。でもごはんは昨日もう十分に作ってもらった。酔っ払って忘れちゃったのかな?それを伝えると、既に作ってあるリゾットをオムライスにアレンジし始めた。酔うと料理作ってくれようとする癖、正直とってもありがたい。「このスープの味にも飽きてきたでしょ?」と言って、何やらアレンジしている。

2018年1月16日

こんなに時代が進んでも 媒体がいかに変容しようとも
愛しい人に恋文を綴りたい その気持ちは 太古も今も変わらない
平安時代の名も知らぬ誰かの 誰かを愛する熱い心と
平成時代の僕の あなたを愛する素直な心は かたい握手で結ばれる 〈恋人より〉

想いを前に 飾った言葉は途端に意味を失う
ただただ ただただ あなたのことが大好きです 愛しています 〈恋人より〉

◆       ◆       ◆

恋人とお付き合いできてからそこそこ時が経ったけれど、明日会えるってことに中学生みたいにドキドキできるし、その気持ちをずっと継続させたい。そんなお爺さんとお婆さん怖いかもしれないけど、できればそうなりたいな。
大好きだよと愛してるよを伝える手間を決して省かないでいたいし、心を込めて伝える手段を惜しまないでいたい。昨夜恋人の店を訪れたら、ここしばらく生やしていた髭が剃られて、ツルッとしていた。ベビーフェイスがますます赤ちゃんのようだ。髭がある口元にキスするのも大好きだし、髭が無い口元にも早くキスしたいよ。

2018年1月18日

今日は、昔すごくすごく好きだった人(有名なクズとして名高い)と、仕事のLINEでずっとやり取りしている。だけど、何も心が動かない。その時の流れと変化に感じ入っている。今のわたしにとっては、恋人の荒れた掌とか、乾燥してかさかさしている肩の肌とか、細い腕に綺麗についた筋肉とかが信じられないくらい愛おしくて、夢中になっている。

2018年 1月19日

ピアニストを務めた芝居の千秋楽を終えた夜、舞台を観に来てくれた恋人とそのまま過ごした。乾燥してかさかさしながら皺々している恋人の肩と胸の間あたりの肌がどうしようもなく好きなので、その皺々をこの上なく可愛がっていたら、その奇妙なわたしの様子を見た恋人が、「さっきまであんな複雑で繊細なピアノを弾いていた人の行動とは思えない」と言って笑った。

2018年 1月20日

本当に恋人とお付き合いできて良かった、としみじみと思う。それは、彼がわたしの周りの人々を大変丁寧に愛してくれることが齎す安心感が大きい。だからわたしも自分にできることをして、恋人を守りたい。あと関係無いけど、恋人ってちょっとウミガメの赤ちゃんぽい。

ー 言葉は消えてしまうから 綴ります
  類稀なる集中力と 瞬間への努力
  尊敬して愛します ありがとう。 〈恋人より〉


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