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阿佐ヶ谷のトルコ - 乳白色のお酒ラク

ゆっくりディナーをする時間が取れるので、気になっていたお店、世界三大料理のひとつとされるトルコ料理店へ。美味しい料理を一通り楽しんだ頃、ラクという乳白色の(強いけれど爽やかに甘い)お酒を飲みながら、恋人とたくさん話をした。
かつての恋人の結婚生活についてや、前の奥さん(という言い方を恋人はした)のことも。お酒を飲んでかなり話し込んでからの空気でないと、お互い浮上させない話題だ。恋人は正直な丁寧さで、ひとつひとつ言葉を選びながらわたしに話した。
結婚はしたが夫婦にはなれなかったというようなこと、それに纏わる一連を彼は語った。けれど今も彼女をとても大切に思っているということも。しかしどんなに話を聞いても、わたしと出会う前の彼の結婚や離婚について、理解というものはできないのだろう。

でも、ひとつだけ確信して言えるのは、全てを経て、わたしたちは最良のタイミングで出会えたということ。出会う前の恋人に起きた喜びも悲しみも、すべて受け入れて愛することができたらどんなに素敵だろう。小さな想像力でしかないけれど。そして、これからの未来を前を向いて共に創造していく特権を与えられているのは、わたしなのだ。

そのあとはわたしの音楽活動について、深く語り合った。多くの仲間たちがいて支え合えている反面、本当のところ音楽というものは孤独だ。絶対的に。そしてその孤独をひとりで抱え込みやすい。恋人はわたしが抱えた孤独にそっと寄り添いながらうまく引き出して、さらには励ましてくれることにおいて天才的だと思う。
彼が優しく語ってくれる言葉の一言一言を忘れたくなくて、ノートを取りたくなる。お気に入りの教授の講義に聞き入る素直で無知な学生のように。
ラクがもたらす心地良い酔いで少々頭がフワフワするので、ひとつひとつの言葉は心の奥底にしっかりと着地してくれるだろうか。「全部覚えていたいのに!」と悔しがるわたしを、恋人はふざけながら笑い飛ばしている。

トルコ料理店をあとにし、寒いねと言いながらも酔い醒ましに少し歩きたい気分で、阿佐ヶ谷から荻窪までの一駅分を歩き、荻窪駅付近の路地裏まで来た時、たまたま見つけたワインバーの入り口に漂う「良さげな店の匂い」を嗅ぎつけた恋人の提案で、もう少しワインを飲んでから帰ることにした。

帰宅後のセックスは、人生で一番気持ちが良いを更新したので気分が良い。大切なことをたくさん話したあとで、ふたりともすっかり心を開いていた。互いの顔をしっかり見つめ合い、名前を呼び合い、愛を伝えながらした。
結局これが、一番の気持ち良さをもたらすのでしょうね。

2018年3月9日

特別なお出かけも良いけれどなんでもない日を一緒に過ごすのもすごく好き。深夜、仕事後にやって来る恋人を待っている。明日久しぶりの脱毛サロンなのでビキニラインを剃りまくりながら。恋人が来たら頂き物のヴィンテージのワインを開けることになっている。ソムリエの試験に挑む人たちのドキュメンタリーを観ながら。
ところが、彼が玄関に入ってきた瞬間に今日は尋常じゃなく疲れていると察した。弱々しく微笑む顔から。今にも崩れ落ちてしまいそう。それなのに彼はヴィンテージワインを飲もうという約束を果たそうとする。延期でもいいんだよと伝えても聞かない。キッチンに立ち、軽いクラフトビールを一缶開けながら楽しく話し、あっという間に素晴らしいおつまみ何品かを作ってしまった。そして約束のワインを開けながらソムリエのドキュメンタリームービーを観た。しかし本当に無理もないことに、恋人は果敢に睡魔と戦うも、破れる。深い睡眠を貪るための精神世界へ旅に出た。わたしより一足先に。
ぐっすり寝てね。おやすみなさい。

2018年3月10日

具体的に好きだと思う瞬間はもちろんいっぱいあるけど、もう何がどうとかじゃなくて、存在を愛してるよ。
それが、命に寄り添っていきたいってことなのかもしれないね。ありがとう。 〈恋人より〉

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