恋人の声が、音声として、好きなのだ。

恋人の誕生日の日付になった瞬間は、私たちが出会った場所であるバーで迎えた。わたしたちを良く知り、引き合わせてくれた女性バーテンダー(わたしにとって母のような人)からシャンパーニュを振る舞ってもらった。居合わせた客たちもグラスを傾けて祝ってくれた。
バーを後にし、もう一軒行きたいところはあるかと聞くと、彼が「いつもみたいに過ごすのが一番」と言うので、結局森へ。そして本人の誕生日なのにわたしのごはんを作ると料理を始め、二、三日分のストックをあっと言う間に作ってしまった。

そのあとは、長いセックス(この前の予言通り69を特にふんだんに取り入れて!)をして眠ってしまった。ふと目覚めた彼はわたしを抱きしめ、少々寝ぼけながら「●●●●●(わたしのフルネーム)が、太っても痩せても大好き、生きてても死んでしまっても大好きです」と言った。できれば痩せていて生きていたいが、ありがとう。

2017年12月7日

デートしようってなれば、全力を尽くして良い時間にしようとしてくれる恋人最高か。1日過ごせる時はもちろん、わずかな時間にランチだけとかでも真剣に充実させようとしてくれる。でも、会いたいっていう4文字は余程のことがないと発さない。恋人は忙しく、いつもとびきり明るいけれど肉体は疲れているはず。次に会えた時、思い切り会えた喜びを表現しようと思うことで乗り切る。
好きになりすぎると、すごく弱くなる側面を認めざるを得ない。人も物事も。その弱さを強さへと昇華させるには、もっと心を鍛えなきゃ…

2017年12月10日

忙しかった1日を終えて恋人の店に。日曜の夜遅くだというのに繁盛していてカウンターが埋まっている。恋人の立ち位置前にあたる席に座って彼と言葉を交わすことはできなそうだけれど、お客さんに料理やワインについて説明する恋人の声が聞こえてくるだけで十分幸せだなと思う。わたしは、単純に、恋人の声が、音声として、好きなのだ。
カヴァのあとに頼んだ、チャコリ(スペインの白ワイン、香りを立たせるために高い位置からジョボジョボと無造作に注ぐ動作が特徴的)が、とても大盛り。今日はとても忙しかったと先ほどLINEで訴えていたから、彼からの労いを感じる。

◆       ◆       ◆

食事を終えると、恋人は店の外でわたしを見送りながら「今から行って大丈夫?」と聞いた。もちろん大丈夫。わたしは、あなたを拒む理由など、ひとつもないのよ。生きる限り、拒むことなど、ひとつも、ないのよ。

そうしてわたしが拒むわけもない恋人はわたしのうちにやって来て、携帯から明日の仕事の食材を発注し、さくっとシャワー借りるねと言って浴室へ行き、そのあと仕事場でもらったかぶの葉でわたしに翌日のスープを作った。


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