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小説メモ「物語の書き方は対比から始めよ」

 こんなもの書いてる暇があったら自分の小説を書くべきなんだが。

 さて、物語の書き方についてだ。
 用意するものをいちいち挙げると類語辞典だとか資料とか時間とかガッツとかいろいろ面倒くさいものばかりになるし本題からずれるので、最低限のものを用意していこう。

 まずは紙とペンだ。鉛筆でも構わないが黒いペンでもいい。書き仕損じは特に気にするな。紙については真っ白の、大きなものでも小さなものでも構わない。方眼か無地でいこう。横線は自由に書きづらいのでオススメはしない。
 もしこれも用意し辛いというなら脳内でも構わない。ただ記録していく必要はある。人間の記憶力は案外忘れやすいし、だからこそ忘れた頃にアイディアが結びだす。

 ここから本題だが「何を書こう」から始めるのはかなり難しい。

 SFが書きたいミステリーが書きたいラブロマンスが、そういう欲求はあるはずだが、書きたいものがすでに見えているのであれば、君はすでに本文をやたらめったらに書き進んでいるはずだ。うらやましい!
 ともかく何のために生まれて何をして生きるのか、わからないまま終わるのが嫌なはずだ。だけどストーリーの本質が欠如したままでは、楽しく書けないはずだ。
 では何から始めれば、御託はたくさんだというだろう。

 物語は「対比」である。

 君が考えるべきは「相反するもの」である。
 男に女、上に下、左に右に、前に後ろ、貧富の差でもいい。ただし敵味方はよくない。善悪はあくまで主観でしかない。とにかく、相反する何かを想像しよう。すでに物語のビジョンが浮かんでいる人で先が詰まってるのなら、既存のイメージと相反するものを考えよう。

 怒りに燃える男、を考えよう。
 彼は復讐をしたい。誰か特定個人か、それともある集団に対してか、はたまたある種族に対してか。ここを掘り進めるとより深まるが、まぁまず相反する存在を思い浮かべよう。

 慈悲深き女、にしようか。
 彼女は怒りの男にとっての「何か」だ。関連性が生まれると、そこにストーリーが芽生えてくる。

 「新人の冒険者の女僧侶が、熟練の冒険者である復讐鬼と出会う。彼はゴブリンを殺し復讐する者だ」とやればあら不思議、ゴブリンスレイヤーの完成だ。
 新人と熟練、女と男、僧侶と戦士、ここで挙げるだけでも3つの対比が出来上がる。

 逆にこれが近い相手だと、すごく文章回しがしんどくなる。

「熟練の女戦士と熟練の復讐鬼が同じ相手に復讐を果たそうとする物語」となると長続きが厳しい。「右にいくぞ」と言ったら「ええ、そっちのが合理的」とツーカーで話が進んでしまうためにトントン拍子になってしまう。
 ここまでやっちゃうと対比でできるのが「生きてるか死んでるか」ぐらいしか残されてないために、かつて仲間だった二人が、ほんの些細な運の差で一人が生き残って一人が死んで比翼の連理が永遠に喪われてしまった……ぐらいでないとワクワクしてこない。

 「ちょっと攻撃の仕方が容赦なさすぎです」「そうなのか」「そうですよ!」と嗜める描写が入れば、女と男のキャラクター性がより際立つし、ときに対立する時にその衝突と和解とが濃密に描きやすくなる。
むしろ同じ立場同士だと、さも青と藍を隣に並べるようなものだ。赤と緑、青と黄色、白と黒を並べるのだ。

 話をシンプルに戻そう。
 二人の対極的な人物を用意したら、さっき用意した紙とペンで衝突させていくのだ。

 あるたべものに出くわしたらどうするか。ある人間に出会ったらどうするか。ある出来事に巻き込まれたら、どのような選択を行うのか。そういった行動の違いと共通点を書き記していくのだ。世界観は後回しでいい。

 そういったものを順序立てて説明すれば、そこには物語が生まれるのである。

 後は整合性を整えよう。ここから世界を組み立てる必要があるぞ。
 「少年と少女が出会う物語」いわゆるコテコテのボーイミーツガールを考えてみようか。主人公の少年に不遇を与えてあげよう。満たされているものだと物語の原動力に欠ける。満たされるものを探すからこそ物語は動き出すのだ。
 主人公は貧乏でスラム育ちにしよう。すれば出会うべき少女は金持ちの権力者の子どもとかになるか。貧乏な子と裕福な子が出会う。ここで必要なのがキャラの掘り下げだ。なぜ主人公は貧乏なのだろう? 親が貧乏だから。親は貧乏なのか?

 ここで、君の自由な発想を加えていこう。

 「高度な人体改造技術が発展しているが、技術投資できる金のないものがより貧しくなる世界」「魔力や超能力による先天的な能力の差が絶対に乗り越えられない貧富の格差を生み出した世界」「暴力と混沌で支配された街で、理不尽が横行する世界」など多種多様だ。SFにもファンタジーにもマフィアものにもなれるぞ。どれを選ぶのかは君次第だ。

 ここまでくれば、もう君の中で何を書くかが決まっているのではなかろうか。
 「生身の貧乏な少年と機械仕掛けの少女が出会う物語」でも「たった一つの能力を極めた少年が籠の中の鳥のように育てられた貴族の少女と出会う話」でも「木っ端に死ぬはずだった下っ端の少年がマフィアのボスの一人娘である少女と逃避行をする」でも、なんでもいけるぞ。

 後はプロットを練り込んでシナリオ起こして、文章化してしまえばそれで小説は出来上がるぞ。脚本にして映画にしても悪くないな。

 とにかく、これが物語の書き方だと思う。
 「何を書きたいか」より先に「何と何が対比してるのか」を考えていこう。そうすれば泉のように発想が沸き起こるぞ。その発想のきっかけになるために普段からいろんな作品やいろんな事件や出来事についてたっぷりと知識を蓄えていこう。

 お互い頑張ろう。ここで筆を置く。

私は金の力で動く。