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ゾンビvsシャーク


 某国が秘密裏に開発していた生体兵器が漏れた、と言われている。その寄生生物は人間をより強靭な肉体に変貌させ痛みにも耐え、人間を不死身にし正気を失わせた。
 噛まれたら感染するその脅威は瞬く間に世界中へと広がり、人類の抵抗も虚しく陸地はゾンビに乗っ取られ、生き残った数少ない人類は海洋へと生息域を追い出されることになった。増幅した筋肉のせいかゾンビたちは泳げなかったのだ。

 大地を失った人類は、今も海洋上で漂うように生き延びている。



 全長7メートルはゆうに超える巨大アオリイカが、小さなロボティクス漁船のロボットアームに掴まれて甲板に押し付けられる。操縦桿を握った白髪にねじり鉢巻きの老人が叫ぶ。
「今じゃ!! 突き刺せ!!」
「うぉああああああ!!」

 黒髪の少年は手にした長大なモリを棒高跳びのように支えにし、高く翔んだ。空中で身体を捻って狙いを定める。イカの急所は、目と目の間! モリの射出ボタンを力強く押すと、ガス噴出でミサイルめいて発射されたモリの切っ先が巨大アオリイカの急所を貫き穿つ。巨大アオリイカの図体は赤褐色から透き通るような白色に変わる。少年と老人は雄叫びを上げる。

 その時、船体が大きく揺れる。波ではない。海の奥深くから何かが来る。老人の操縦桿近くにある漁船レーダーが巨大な影を捉える。
「いかん、奴じゃ! 掴まれ!!」
 老人は操縦席に、少年はデッキの手すりにしがみつく。

 水に浮かばないゾンビは人間を追って海中に沈み、ゾンビを海中の微生物が食らい、食物連鎖で生物濃縮が発生する。海洋生物はかつてない以上に巨大化し凶暴な生物へと変化した。
 巨大アオリイカもその一例だが、食物連鎖には更に上がある。巨大アオリイカを食らう巨大マグロが、巨大マグロを食らう食物連鎖の頂点がいる。

 海面から巨大な水柱と共に飛び出してきたのは、全長70メートル超の超巨大なホオジロサメだった。

【続く】(789文字)

私は金の力で動く。