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1.読書記録『二木先生』

どーも。ぴーまんと申します。

記念すべき交換日記の初回として、今日読了した本について書こうと思います。

一時期は小説をたくさん読んでいた私ですが、今年に入ってからはバタバタしていて本を1冊も読めずに気づけば5月になっていました。
生活も少し落ちつき、小説欲が高まっていたころ、本屋でパケ買いをしたのが『二木先生』でした。

この本は、2019年にポプラ社小説新人賞を受賞した作品で、著者の作家デビュー作となっています。
そして、この作品の中で、主人公もまた小説の新人賞に応募をしています。
気になって調べてみると、小説の新人賞というのは意外とたくさんあるようで、2023年5月締切のもので13個もの賞があるようでした。
小説家の卵たちがこれらの賞をめざして頑張っているんだな、と思うと応援する気持ちが湧くと同時に、小説家として生計を立てることができるのはほんの一握りであろうことに文芸の道の厳しさを感じます。

少し話が脱線してしまったので、本題に戻ります。
『二木先生』を読んだ正直な感想は、すごく好きでもないし、かといってつまらなかったわけでもない、といった感じでした。
お話としては面白い部分もあったけど、登場人物に惹かれなかった、というのが正しいのかもしれない。

本の背表紙にあるあらすじを載せます。

誰からも馬鹿にされてしまう高校生の田井中は、自分を地球にひとり投げ出された異星人のように感じていた。だが、ある日、担任の美術教師二木が自分以上に「普通の人たち」から白眼視される秘密を抱えていることに気づき、崖っぷちの取引を持ち掛ける——。生徒と教師のスリリングなやり取りを通じ、社会からはじき出されてしまう個性を持つ人間がいかに生きうるかを描いた驚愕のデビュー作。

『二木先生』背表紙より

とまあ、大体はこんな話。

読んでいてまず、主人公の幼さ、イタさみたいなのが「うっ」ってなることが何度かあった。
高校生の男の子だから当然かもしれないけど、イタすぎて薄目で読んじゃうような場面が私はいくつかあった。
それと比較して、二木先生の人としての出来上がり方がすごい。
表紙に二木先生と思わしき人物のイラストがあるので、そんな風貌の先生を想像しながら読んでいたけど、意味の分からない要求をしてくるガキンチョにもきちんと対応しつつ、あくまで同じラインには降りてこない態度が、完璧すぎると思った。
かっこよかった。

朝井リョウの『正欲』を読んだことのある人は、多くがこの本を読みながら『正欲』を思い出すんじゃないかな、と思う。
『正欲』で夏月が「どうせ説明したところでわかってもらえない」と言ったのと、二木先生が「わかり合えないから」と言っていたのが重なった。

終盤の流れは辛くなると同時に、ハラハラさせられる展開だった。
主人公の考えていることとか心情が、その状況に置かれた時の自分の感覚とかなり離れていて、そのために感情移入のしにくさがあったと思う。
でも、それこそが、主人公が「変わっている」「宇宙人だ」と言われる所以なんだろうし、逆に私が彼の感情に完全にシンクロしていたとすれば、私もまた「変わっている」と言われる人間であっただろう。
残念ながら?私は実に凡庸な人間なので、「普通じゃない」「変わっている」ことにある種の憧れを抱くことが往々にしてある。
でも、気を付けないといけないな、と思ったのは、「変わっている」と言われる人は言われる人なりに、その言葉に不快感を感じることもあるのだということ。
特に主人公は思春期だから、その言葉に敏感だったのかもしれないけれど。
「普通じゃない」と言われるからこそ自分を「特別」なんだと思いたい、そう思うことが自己防衛になっている主人公にとって、「自分を好きになること」に関する気づきは大きなものだったと思う。
二木先生はいい先生だ。

ただ、彼はきっとこれからも生きづらさを抱えて生きていくだろうし、同様に二木先生も今まで通りの生活は送れないだろう。
吉田くんやその他大勢のクラスメイトたちは、悠々とその後の人生も快適に過ごしていくんだろうと思うと、”少数派”はどうにかこの社会との折り合いの付け方を学ばないといけないし、なんとかそれを身につけて生き抜いていってほしいと部外者ながら思ってしまった。

以上、最近読んだ本紹介のコーナーでした!

次はようちゃんです。


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