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野党はどこに向かうのか

立憲民主党が次のような政策を掲げたようです。

正直なところ、これを見て自民党ではなく立民党に投票しようと決める人は少ないのではないでしょうか。

この件に限らず、最近の野党の動きを見ていると、支持拡大を狙っているにもかかわらずターゲットを絞りすぎている印象を受けます。どうも戦略をミスっているような気がするのです。この点について少し考えてみようと思います。

極めて粗雑なモデルですが、まず国民の政治志向を「保守」と「リベラル」に分けてみましょう。Twitterでの議論やテレビ・新聞の報道を眺めていると、政治言論は「保守」と「リベラル」に二極化しているように見えます。

もっとも、オープンな場で政治的な主張を行う人は一部であり、日本人の大部分はそういった発言を控える傾向にあります。いわゆる「サイレントマジョリティ」というやつです。このサイレントマジョリティを補うと、世論は二極化しているというよりも、むしろ単峰型の選好になっています。多くの人は明確に「保守」や「リベラル」に分類されるのではなく、実利的観点から両者の間を揺れ動いているわけです。

国民の選好分布00

自民党は国民の選好の分布をある程度把握したうえで、政策内容を「頂点」に寄せています。確かに自民党には多くの保守派の議員が在籍していますが、政策内容が全て保守的というわけではありませんよね。一方で、立民党をはじめとする野党においては、「頂点」よりもかなりリベラルに寄った政策提言が目立ちます。

国民の選好分布01

弱小政党であれば、一部の熱狂的な支持層を獲得するためにあえて過激な立場を採用することも理解できます。しかし、野党第一党であり全有権者の1割弱の支持率を得ている立民党がこのような立場を維持するのはなぜか。その理由の一つとして選好の分布の読み間違えが考えられます。つまり、表出した議論だけを見て、サイレントマジョリティも二極化すると勘違いしているのではないか、ということです。今のスタンスのままリベラル側の山を獲得できれば巻き返しを図れると踏んでいるのではないでしょうか。

国民の選好分布03

このように考えると、立民党が支持拡大を目指している一方で、一部のリベラルにしか訴求しない政策を掲げていることを説明できます。

しかし残念ながら、「山」はリベラル側にも保守側にもありません。立民党が本気で政権交代を達成しようとするならば、野党連立よりも先にサイレントマジョリティに訴求する政策を提示するべきです。特定の政治スタンスにコミットしない彼ら/彼女らは、「保守」や「リベラル」というマクロな政治思想よりも、日常生活でのミクロな功利主義に依拠する傾向があります。そうした人達から得票するためには少なくとも、日本学術会議の人事や森友問題の追及を一丁目一番地に掲げてしまうような姿勢は改めねばならないと思われます。

なお、最初に紹介したツイートは「法改正をせずに直ちに実施できるもの」だけを挙げているとのことです。しかしこれは、現時点では直ちに実施できるレベルの政策しか考えていないという自白に他なりません。これでは「野党に任せてみよう」とはなりませんよね。そもそも自民党は与党に居座るだけで政権担当能力を証明できるのに対して、野党が同等の能力をアピールする機会は多くありません。政権の監視は重要ですが、それと並行して、ときにはそれよりも優先して(専門家やシンクタンクと協力するなどして)”現実的な”政策提言を行っていかなければ、自民党が盛大に自爆しない限り政権を得ることはできないでしょう。

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