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ハーブティーのお話 その14 不思議なご縁の6(完)

小さなトレイに載せられてきたのは、金杯だった。

「ようこそ、レフェルヴェソンスへ。」

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飾らないトーンで差し出されたその金杯を、そっと両手で受け取り

口にふくむ。

自然に呼吸が整い、料理への期待が高まる。

そして、それはこれから始まる

レフェルヴェソンスの世界に入る儀式のようにも思えた。

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レフェルヴェソンスの名前の由来「沸き立つ・泡立つ」を表す一皿。

シマエビとゆり根。


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生江シェフのメッセージと共に戴く定番の「アップルパイのように#42」

#42とは42作目との事。


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本来ランチのメニューにはないのだけれど

特別に用意してくださったArtisan(職人)という一皿。

この日は8農場、44種ものお野菜やハーブで彩られていた。

知り合いの農家さんのお野菜もあり、食べ慣れていると思っていた。

が、1つ1つ蒸したり、火を入れたり

ぬか漬けにしたり、ほんのり酢漬けにしたりと

様々に丁寧な仕事を施し、

お野菜へ一つの旋律が加えられていて、

全く次元の違う一皿となっていた。

お野菜がこんなにも美味しくなるんだー

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「世界を逆から眺めてみたら」と題されたアオリイカの一皿


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「定点」の蕪は4時間低温調理されたにも関わらず、しっかりと歯ごたえを残す。


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「春の海」キンキのグリエと桜のブールブラン。

磯の香りと桜の香り組み合わせは、エストラゴン(タラゴン)とのそれに似ていて相性抜群。


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「海の神 山の神」猪のロティ、ラルドにハマグリのジュ


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「太陽と水の味」一粒一粒丁寧に取り出されたハッサクの果肉


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テーブルでお点前が披露されるお抹茶と小菓子。

お料理の余韻を楽しみながら那須高原の事など会話も弾む。


「食後のお飲み物はコーヒーとハーブティーをご用意しておりますが・・」

「はい。では、ハーブティーを。」

以前のカモミール、レモンヴァーベナから

今はブレンドハーブティー「農園から。」をお使いいただいている。

(CM)


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いつも、別の器でリーフの状態のハーブもお客様にご覧いただいているとの事だった。

私達が育てたハーブだよ・・なんだか信じられないね。こんなに素晴らしい舞台に立っているんだ。

感激で胸がいっぱいになる。


そして、

キッチンスタッフの方々へご挨拶に。

私にとって夢だったフレンチレストランで働く皆さんは憧れの存在。

あーみんな、カッコいいなぁー うらやましいなー

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夢のように幸せなひとときは過ぎレストランを後にする時間となる。

角を曲がるまで、石本さんと川畑さんがお見送りをしてくれた。

近くのお寺に咲くピンクの花越しに青空を見上げ

振り返えり、大きく手を振る。



都内でいくつかの用事を済ませ

帰宅したのは深夜だった。

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翌朝、お土産に頂いた

ブリコラージュのパンをいただきながら

昨日の素晴らしい経験について振り返る。

頭の中はまだ整理されず、言葉にならない感情が残ったままだった。

農園を歩き、ビニールハウスのハーブの様子を見に行く

そっかー そうだよね。

ハーブを見た瞬間、その言葉にならないものに気づき涙が溢れてきた。

ずっと、「私が」ハーブを育てていると思っていた

ずっと、「私が」ハーブティーを作っていると思っていた。

でも

本当は、こうして沢山の人々のご縁に支えられ

それが出来る場所に立たせてもらっていたんだ。

10年前に真っ白のBMWがこなかったら・・

地元のイベント「那須の大きな食卓」での再会がなかったら・・

黙々と農園仕事をして支えてくれる奥さんがいなかったら・・・

こんなにも幸せを感じることが出来なかった。


そして・・・


そのすべてを私に与えてくれたのは

目の前にいる、このハーブだった。

ハーブが私をここまで連れてきてくれたんだ。

長い、長い、旅をハーブと一緒にしているみたいだ。(完)



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