【時事雑感】インバウンド効果から見る日本の観光公害とその課題解決に向かうには…
コロナが5類に移行してからはや1年が過ぎ、日本中いや、世界中で旅行のために移動が増え、活気づいてきたなと感じるこのころ。
ましてや今日、日本では異例な円安で訪日の観光客数は2019年のコロナ前に比べ伸びている。
日本政府観光局の統計によると今年の1月から5月までだけでも約1460万人。コロナ禍前の2019年でも同時期で約1370万人であることからどれだけ活気づいているのかが伺えよう。
訪日観光客が日本に大量のお金を落としていくことは大いに結構だ。
それによって観光地への経済効果の波及は大きいものだ。
しかし、観光地へのポジティブな経済効果とは裏腹に影・ネガティブを抱え持つのも忘れてはいけない。
過日、山梨県富士河口湖市のローソンで「コンビニエンスストアの上にある富士山」が話題を呼び、多くの訪日観光客が殺到し周辺の地域住民に迷惑を被った事案は記憶に新しい。
観光地に多くの観光客が押し寄せることによって引き起こされる問題をオーバーツーリズム(観光公害)といわれている。観光客のマナーや観光客の殺到による地元ライフラインの混雑により観光客の満足度・質の低下、その地に住む地域住民への悪影響を及ぼす、ネガティブな波及効果である。オーバーツーリズムは日本だけでなく世界各国の観光地で起きている問題であるが今回は日本国内に限った話にしておきたい。
事例を挙げるとすれば、京都における公共交通機関の混雑が有名だろう。
―多くの古寺を抱える京都は日本国内問わず世界から注目される世界有数の観光地だ。京都市内は鉄道での移動よりもバスでの移動がアクセス良好なことから、常に観光地へ向かうには京都市営バスを利用する観光客が多い。もちろん、普段の移動のためにバスを利用する一般市民もいるわけだが、とりわけバスを利用する観光客で溢れかえり、一般市民ですら利用できなくなってしまう「積み残し」が慢性的であり、公共交通における被害と課題が残されている。
さらに先述のローソンの件に関しても、ローソン周辺での観光客によるごみの不法投棄、騒音、さらには道路の乱横断など…これらの問題でその地に住む住民からは不満や問題に悩まされている。
身近な問題といえばホテル宿泊費暴騰ではないだろうか。
インバウンド効果によって訪日外国人が増えた。外国人は日本人のように2泊3日というような短期観光よりも2~3週間以上の長期滞在傾向にある。
首都圏や大都市圏に宿泊する傾向もあり、一般的なビジネスホテルでもコロナ禍では5000円前後の相場で宿泊できたが、いまとなっては1万円以上するビジネスホテルもある。
コロナ禍(コロナ前)でせっかく格安で泊まれたホテルが一気に値段が高騰し、ワンランク、ツーランク下のビジネスホテルに泊まらざるを得ないなんて言うこともあっただろう。
筆者自身もその経験をしたこともある。
この日本におけるオーバーツーリズム対策として政府は、地方への誘致促進や国内の主要交通機関の強化程度で根本的な政策がなされていない。
また、旅前から意識啓発という謎の政策程度でしかない。
世界各国では政府単位で入国料徴収強化、民間単位で観光地での入園料徴収、観光地プライスの導入など観光客と現地住人の差別化を図っている。
また、マナー違反の観光客を見つければ現地の公安当局が逮捕、罰金や懲役刑を受けさせている。
世界では「郷に入っては郷に従え」の理論で海外観光客の流入を抑制しているが、日本は「郷に入っては郷に従え」の理論を用いた施策や対策ができない。
世界からの目を気にするあまり、意識啓発政策や現地住人も観光客も同じ価格提供しかできない。すなわち海外に対して忖度しかできないというのが課題解決に進まない原因なのではないだろうか。
忖度してばかりでは観光客でもマナーを守れない、犯罪目的といった質の悪い観光客も増加する一因となってしまう。
私としては訪日観光客の入国料強化徴収や観光地での訪日観光客向け価格の提供、違反者へのきっちりとした処罰をしていくべきではなかろうか。
こんな提言をして「差別的だ!」と異を唱える人も多くいるだろう。
しかし、そのようなことができないからこそ、質の悪い観光客が増加し、余計にオーバーツーリズム被害を拡大させるだけだ。
富士山ローソンの件もだが、コロナ前に比べマナーが悪い訪日観光客が増えたように感じる。
そもそも異国の地なので分からないこともあるというのは仕方ないが、当たり前のように自国の地の文化通りに動いても通ずると思って行動している人が多く、正直迷惑だと感じる。むしろ君はアウエーなのだから少しは弁えられないのか…と疑義的に感じた。
また、都内の某神社において反日思想を持つ外国人が悪質行為をしたという報道が取り上げられたのも記憶に新しいはずだ。
悪質行為を手伝った国内在住の外国籍の外国人は逮捕に至ったが、その友人は母国へ帰国、未だ逮捕に至っていない。
ここで日本の公安当局がしっかり対応すれば、多少は変わるかもしれないが、野放しにしてしまえば、日本に対する価値は失われ、世界から日本は犯罪をしても許される国というレッテルが貼られ訪日外国人によって治安は悪化するかもしれないリスクがある。
また観光地や飲食店等での訪日観光客向け価格の提供は必至であり、ビジネス的にもその企業の価値観等でもメリットは大きい。
価格が高ければ高いほど低予算層や低所得層の観光客は必然的に遠のいてゆく。さらに質の悪い客が減り、残るのは富裕層または良識を持つ観光客たち。
結果として良質的なサービスを生み出し、利益を確保し、企業価値や伝統を守ることができる。
仮に現地住人に利用されていたお店が、観光客によって人気が殺到し現地住民が利用できなくなって遠のかれてしまった場合、観光客向け価格の提供や制限・現地住人等は据え置き(従来通り)の差別化をすることで観光客にも現地住人からも安心して利用できるのではないかと考える。
諸外国においても海外観光客向けプライスを提供するところが多く、南米・ペルーでは世界文化遺産となっているマチュピチュ遺跡で入場料を取り入れた。国内でも広島県の宮島に入島料の徴収、富士山でも入山料の徴収が始まった。また国内の大手居酒屋等では観光客向け価格の提供を始めているところもあるようだ。
いづれにせよ宮島や富士山は地元・地元外問わずでの徴収ではあるが宮島においての悪戯行為が取り上げられるような話は聞かなくなった。
なお、富士山入山料については周知が甘い影響か、抑制につながるかは未知数だ。
訪日客が増えること、そして日本の良いところを知ってもらえることは良いことだ。そしてたくさんのお金を落としていってくれることはうれしいこと。
しかし受け入れる側としては一部の旅行客の悪質な行為やマナー違反によってもう二度と来てほしくない、もういっそのこと閉鎖するとうんざりする現地住人も少なくない。
私としては「訪日客が増える」ということよりも「良識を持った訪日客が増える」ことを願ってやまない。
そう。それはお互いに気持ちよく過ごすため。
fin.
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