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意見集約だけの最悪のリーダーシップ

はじめに

リーダーシップは状況に寄る。組織が生まれたての頃は、強いリーダーが引っ張っていくし、メンバーが育っていたら放っておけばいい。十人十色のリーダーシップ、それでいいと思う。ただ、僕の経験上の上で、最悪のリーダーシップがある。それが「メンバーの意見を聴くだけで自分の考えのないリーダーシップ」だ。

エンパワーメントとかコーチングとかそういった考え方があり、僕自身も状況に寄ってはこれが有効なのが分かっている。しかし、どこかのセミナーで聞きかじったような下手くそなコーチングをされるとメンバーは疲弊する。

経験の浅いメンバーに「どうしたい?」と聴くな

「お前はどうしたい?」というのはリクルートという会社の口癖だそうだ。この会社には将来起業したいとか、何か成し遂げたいという人が集まってきて、組織文化を形成している。それだから「お前はどうしたい?」が有効だと思う。同じように総合商社とか一部IT企業もそうで、元々のポテンシャルやモチベーションの高いメンバーには有効な一手だと思う。

しかし、それ以外の場合、「お前はどうしたい?」は非常に危険だ。僕のスタンスは、経験の浅いメンバーはとにかく学習と組織への適応あるのみである。もちろん、この会社に入った理由ややりたいこと、初心を捨てろというわけではなく、それが実現出来るための力をつけるというのが重要だと思う。

それなのに、下手なリーダーが「お前はどうしたい?」と聴くものだから、メンバーが頓珍漢なことを言ったりしても「フムフム、そうだね」とか「いい考えだね」と聴いてしまい、挙句の果てにメンバーは「聴いてはくれるけれど、何も実現されない」などとヘソを曲げてしまうこともある。それ以外でも「どうしたい?」と言われても右も左も分からないのに、リーダーから問い詰められるプレッシャーたるや、考えのないメンバーには苦痛でしかないだろう。

当事者意識のないメンバーでの会議は地獄

「意見を聴くだけ」リーダーは、意見集約の会議を開きがちだ。しかも、メンバーの可能性を過分に信じてしまっているものだから、その場で何も考えなしにメンバーが発言されたものも真に受けてしまう。それで色々と話が出た結果、まとめもせずに「今日は色々な意見が出て、いい会議でした」として、結局どうするのかも、リーダーの考えも言うことなく、会議は終わってしまう。大体このような会議、時間がかかる。僕は会議というものが本当に嫌いで、問題が起きた時や、これからの計画を話すのに限られた当事者で集まる会に限定して欲しいと思っている。

このリーダーシップの取り方、僕は責任回避だと思っている。自分で何も決められないものだから、メンバーに意見を聴いておけば、後で何か悪いことが起きても、「私が決めたんじゃないんです」とか「メンバーと一緒に決めたことで責任は全員にあります」と逃げの口上になってしまうことがある。責任をとらないで何のためのリーダーなのだ。

組織とリーダーの在り方

これまで話してきたのは、ある意味「民主的」なリーダーシップであり、方や「独裁的」なリーダーシップもある。僕はどちらかと言うと、政治は「民主主義」、ビジネスは「独裁主義」の方が機能すると考えているが、それでもメンバーの意見が全く通らずに、あるいは従わざるを得なくなって、自ら破滅していく組織もあるのは十分承知している。

リーダーは持論を持ち、それをメンバーに伝える。メンバーは従順に従うのではなく、間違っていることは間違えていると伝えられることが理想論ではある。そのために、まずやっておかないといけないのは、メンバーの力をつけることだ。正直僕の周囲を見ていると、メンバーの能力開発をせずに傾聴を行っていることが散見されている。

ここでのメンバーの能力とは、判断をすることに尽きる。リーダーの言っていることや組織内外で起こる事柄が、組織の制約や自分の中の基準(論理的かどうかなど)と照らし合わせてどうなのか、価値や意味を判断出来るようにしなくてはいけない。

最後に

組織は民主的な部分、独裁的な部分がまだら模様に存在している。組織や人の問題は十把一絡げには出来ないが、僕の今、周りで起きている組織のパフォーマンスの低下はこれまで言ってきたように未成熟なメンバーへの無理やりなコーチング自分の意見を言わないリーダーによる民主的組織の逆機能によるものだと考えている。対処療法的にはなるが、「私はこう考える」ということをまずはリーダー(上司、先輩)が発信してフォロワー(メンバー、後輩)に共有し、フォロワーの価値・意味判断の基準を醸成することが第一歩となるのではないだろうか。ただ、一方でフォロワー側もこれまで学校教育の中で、正解探しばかりに注力しているため、自らが価値や意味の判断をする教育を十分受けずにきているので、自分の中での基準作りには相当骨が折れることも課題ではある。



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