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なぜ人は嫌なのに満員電車に乗るのか

僕は満員電車が嫌いだ。これが好きな人などいないだろう。

めっきり減った首都圏への出張で朝夕の異常な通勤ラッシュを経験して、苦痛な長時間通勤をするくらいなら東京には住むものかと心に決めたものだ。この期に及んでも出勤者の数が減っていないことなどから勘案するに、道理としては分かっていても、止められない理由がありそうだ。

出勤しないと仕事が出来ないという事情はある程度分かるのだけれど、満員電車や東京一極集中というのは以前からあった訳でここ1~2年の話ではない。

ここ1年で地方移住やワーケーション(観光地などで働きながら休みを取る)などがにわかに注目を浴びており、僕自身も地方在住経験者として応援したい気持ちはあるが、集まりたがる人間の本能と経済合理性に逆らうことを敢えてすることになるこれら取り組みは相当な工夫をしないと成功しないと思っている。

そもそも街や都市がこれほど巨大になっていったことには、集積や規模による合理性があり、その恩恵を人間はずっと享受してきたわけで、この一度得た快を手放すことは多くの人にとって容易なことではないだろう。満員電車という現象の不快さと、都市での暮らしという快を天秤にかけたときに満員電車は仕方のないことと甘受されている。

しかし、僕はどうせだったら満員電車という存在をこの世から消してしまいたいので、経済合理性の観点から鉄道のダイナミックプライシングに賛成する。これは簡単に言ってしまえば、たくさん人が電車を利用する時間帯は運賃を高くしてしまうということだ。これは既に飛行機などでは行われているし、鉄道会社各社が本業である鉄道事業が斜陽化していることを解消するプランであると思っている。

これである程度の満員電車が解消されると良いのだけれど、東京一極集中の是正というのはあまり妙案がない。文化庁の京都移転のような話もあるけれども、実際省庁が移転したからと言って、お手本というか「俺らもやったから民間もやれ」というのは攻めの口上にはなっても実際に移転が進むとは思えない。地方に本社を構えるベンチャー企業や一部企業の本社移転などもあるようだけれども、日本全体の暮らし向きを変えるようなインパクトがあるとは思えない。

丸の内の三菱村や淀屋橋の住友村のような大手グループの企業村がごっそり移転するような非現実的なことがあれば良いのだけれど、人というのは偉くなればなるほど、リアルでの内緒話や密談を好むだろうし、近くに内緒話が出来る仲間がいた方が安心するのだろう。この傾向もいつまで続くか分からないけれども。

僕自身の今の暮らしはというと、以前から電車が満員にならない上に家賃の安い場所に住んで、それなりに都市生活を満喫している。自分の暮らし向きが素晴らしいとは言えないけれど、通勤は30分以内で満員電車に乗らなくてもいいという生活がずっと続けられたら良いと思っている。しかし、キャリアのことを考えて転職するとなると、僕の得意分野の求人はほとんどが東京勤務になっている。出来ることなら1か月に2~3回は東京の会社に出勤してあとは今住んでいるところの近くでという風になれば良いけれど世の中そんなに甘くはない。

いずれにしても、東京一極集中と満員電車の解消には、人間の本能としての集まりたい欲求と、経済合理性を越えるイノベーションが必要で、悩んでいる当事者としても今後できることを考えていきたい。

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