イノベーションを論じる散文
企業にお勤めの諸氏におかれては嫌となるほど社長のあいさつやらでイノベーションという言葉を目にするだろう。ポートフォリオとか、コア・コンピタンスとか、コーポレートガバナンスなどのカタカナ語。そして最近ではDX、SDGsなど英語の略称まで登場し、ビジネス用語は分かったようで分からない言葉だらけだ。
今回は聴き馴染みがあるであろうイノベーションという言葉を取り上げてみたいと思う。どんなイメージを持たれるだろうか。
確か高校の英単語帳では“Inovation”を「技術革新」と訳されていたと思う。ところがこの技術革新というのも分かったようで分からない。そもそも技術とは何なのだろう。
先行研究と重複することもあるだろうが、簡単に言ってしまえば、「誰かが困っていることの解決手段」が技術であると言える。技術というと、どうしても何かを製造することをイメージしがちだが、製造された製品も何らかの困っていることの一つの解決手段に過ぎない。このあたりの議論は「ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム」を読んでもらえると参考になるだろう。
ところが、「困っていること」というのも非常に曲者である。
皆さんは最近たいそう困ったことはあっただろうか?もちろん、2021年1月現在は世界中でCOVID-19によって1日も早くこの状況が解決されることを願っているのは重々承知だが、日常生活の中でこんな製品・サービスがあったら劇的に生活は変わるというものはあるだろうか?(注*1 金が欲しいことは分かっている。筆者も10兆円超欲しい。)
組織も同様で自社の中での困ったことは力技で何とかしたり、困っていることすら自覚できないこともあると感じる。
こう考えてみると、意外と自分が知らないだけでそういった製品・サービスが既に存在していたり、別の手段で解決でき、今までと世界がガラっと変わるようなものは思いつきにくい。
話は戻るが、イノベーションとはつまり、「誰かが困っていることを解決するための今までにない手段」と定義できる。誰かというのは個人でも組織でも構わない。今までにないというのも、地理的な要素、例えば特定の国に存在していないとも言えるだろう。
一つ最近、筆者が知った事例で面白い、これはイノベーションだと思ったサービスがある。WASSHA株式会社の電気が通っていない地域での電力サービスである。具体的な事業展開としては、エアコンメーカーのダイキン工業株式会社と組んでエアコンのサブスクリプション(注*2 一定期間での利用金額を払う仕組み。例えばインターネット利用料などがこれにあたる)をこれからタンザニアで検討するようである。
タンザニアはサバナ気候だから暑い国なんだろう。しかし、2018年時点で一人当たりのGDPが日本円で10万円程度のため、エアコンを買う財力がない。電気すら通っていないところがある。タンザニアの人たちは「困っている」と感じているか分からないが、日本人からしたら暑くて我慢出来ないだろう。
そこでWASSHAは太陽光発電パネルと決済用のスマホを貸し出して、ダイキン工業はエアコンを貸し出して、使った分だけお金を払う仕組みを構築しようということらしい。
今回の投稿でイノベーションが何となく分かったと思っていただければ幸いだ。
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