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「魔法を解く」という魔法

ディズニーランドにはいろんな魔法が仕掛けられていて、訪れた人は知らないうちに魔法にかかり、ディズニーランドに魅了されていきます。

その魔法は園内の設計やデザインだったり、キャストのおもてなしだったり。おそらく人間工学や行動経済学、社会心理学といった分野の理論が用いられていると思います。

ディズニーランドだけでなくUSJもそうですが、テーマパークのマーケティングはビジネスの文脈ではお手本として語られることがけっこうあります。

有名であれば有名なほど、うまくいっていればいっているほど、その魔法を真似すべくさまざまな人が考察し、検証し、ネタばらしをしていきます。もちろん、『USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?』のように仕掛け人自身が明らかにするケースも。

では、もし魔法に魅了され心酔していた人が「それはこういう仕組みだよ」と種を知ってしまったら?

もしかしたら、多くの人は「なーんだ」と白けてしまうかもしれません。あるいは、「そんなすごい仕組みがあったんだ!」と感銘を受け、ますますはまり込む可能性もあります。

最初に仕掛けた魔法が解かれたとき、相手がどんな反応をするかはそのシチュエーション次第です。

仮に、あなたが知らず魔法にかけられているとしましょう。例えば……相手からいくつかのプレゼントをもらっているとします。あなたはきっとその相手に会うたびに、あるいは相手のことを考えるたびに、頭の片隅で「お返しをしなければ」と思うのではないでしょうか。

この魔法は一般に返報性の原理と呼ばれており、企業もよく利用しています。企業がなぜか無料でコンテンツを提供していることがありますが、それはお客さんになってくれそうな人に無償でプレゼントを贈ることで、受け取った相手に「お返しをしなければ」と思わせようとしているからです。

企業は公にはそんなことを明言しません。SNSやnoteなどで「タダでコンテンツをあげるのは商品を買ってもらうためです」なんて言えば、簡単に魔法が解けてしまうからです。種を明かされたら、あなたはきっと白けてその企業を嫌いになってしまうでしょう。

ここで、種明かしのシーンを特別なシチュエーションに置き換えてみます。あなたは無料でプレゼントをもらっていた企業の中の人と、たまたまイベント会場で出会い、ちょっと話し込みました。

そのとき、相手が「実はうちの会社がタダでプレゼント(コンテンツ)を配ってるのは善意じゃなくて、返報性の原理を利用してるからなんだよ」と話したとします。「ここだけの秘密にしといてね、あなただけに話したから」と付け加えて。

さて、あなたにかけられていた魔法は解かれてしまいました。プレゼントはあなたからのお返し(商品の購入など)を期待しての策略だったのです。でも……不思議なことに、あなたはその事実に憤慨することはなく、その企業のことを嫌いにもならないでしょう。

なぜなら、あなたは「魔法を解く」という魔法にかかってしまったからです。

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