難解な詩の読み方【解説】

難解な詩ってあると思います。僕の好きなアルチュール・ランボーとかがそうです。マラルメなどもそうかも。僕がフォローしている方が熱心に翻訳されているハート・クレインという詩人も、難解な詩を書くようです。

難解な詩って、よくわかんないですよね? 読んでもいまいち意味がわからない。頭に入ってこない。それを難解と言う。

今回のこの記事では、そんな難解な詩の読み方の解説なんてことを不敵にもしたいと思います。

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ちょっと、遠回りですが僕の体験の紹介からしてみます。

僕は高校生の時にランボーの詩に出会い、なんか凄いなとかカッコいいなとか思って、心酔的なことはしていたんですが、その実、内容はほとんど読めていませんでした。すなわち、というかそもそも、大部分のページを読んでいませんでした。難しくて読めないから。それでいて、そんな難しいランボーのことが、きっとその難しさ故に、好きでした。

ランボーの詩をまともに読めるようになったのは20代の後半になってからでした。

えっと、それだけでした。特にあまり書くようなエピソードありませんでした(汗)

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[読み方]

難解な詩には、言ってしまえば、遅読が必要です。このことに、僕は、子供の頃は気付きませんでした。普通の読書と同じような速度で読み進めるイメージを、無意識のうちに当てはめて読んでしまっていました。

遅読なんて言葉が存在するかどうかは知らないのですが、ようは、速読の逆です。1ページや1行に、普通よりも時間をかけて読むということです。

(ちなみに僕は、速読ってくだらないのかな、と思います。速読が好きな人、すみません。僕は現代哲学を何冊かかじったんですが(デリダやドゥルーズなど)、それらは、そもそも1ページの意味を理解するのさえ怪しい怪しげな本でした。速読どころではありません。そんな本を読んで、僕は遅読をするようになったんですが、速読ってものは、そんな難解な本には当然向かなくて、言葉は悪いですが、どうという事のない内容の本を読むときに行われるものなんでしょう。ごめんなさい、口が悪くなりました。)

とにかく、難解な詩は、まず、普通の読書よりもずっと多くの時間をかけて僕は読んでいます。


次に、少し具体的に見てみます。
まず、簡単めなものから見てみます。

「空(そら)を食べる」という表現の意味はわかりますか?

まあ......まあ、わかると思います。

なんか、こういう風に書いてみて、「『空(そら)を食べる』という表現の意味はわかりますか?」という文自体がもはや一種の詩というか、人をおちょくってるというか......ああ、なんでもないです。なんでもないなんでもない。

なぜなら、なぜおちょくっているかというと、「空(そら)を食べる」という表現に意味なんかないからです。一種のナンセンスです。

ただ、“その意図”は伝わると思われます。「空(そら)を食べる」という表現が“なにをしたいのかわかる”んじゃないでしょうか。なんか不思議な面白げなことを言いたい、言っているということが。


次に、一気に難しい表現を見てみます。

「呵責(かしゃく)が横断する」

こういうのが、厄介になってくると思われます。ただ、こうやって、ピンポイントでそこだけに集中して考えれば、案外意味はわかるような気はします。

意味は、ありません。

呵責っていうものは、横断したりするんでしょうか?
横断するとして、そもそもどこを? 上記の表現だけでは「どこ」の表現もない。

呵責ってなんでしょう。「良心の呵責」という言い回しに使われる呵責です。「責めること」といった感じでしょうか。そんな、生き物でも物でもない「行為」が、横断するだなどと言うのです。擬人法でしょうか? そう受け止められなくもない。

でも、例えば「列車」や「旅団」など、日常的な意味において“横断しそうなもの”は人以外にもある。「呵責が横断する」という表現では、「呵責」という、そもそも抽象的であり、横断なんていう行為をしそうに“ない”ものに「横断する」という動詞が使われている。それがまさにこの詩的表現の意匠であり、それ以上でも以下でもないレトリック(修辞)なわけです。

レトリックの意味がわからない? 逆に考えれば、レトリックとは、そういうものなのです。「心に穴が空いた」「空が泣いている」「ブルーな気分」これら全部レトリックです。言葉の上だけでの表現。


「呵責が横断する」だとさ。

......。(笑)。勝手に横断しててください。


それだけでした。


先の例とつなげてみて、

「空を食べた呵責が横断した」

はい、難解詩の出来上がり。パチパチパチ。


意味不明と言えば意味不明。でも、呵責が空を食べて、そして、横断した。それ以上でも以下でもない、ただそれだけの意味はある。そういう事でした。


そんなわけで、


ーー僕は横断を呵責した。


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