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🎄クリスマスキャロルは夜にあるので〜父の夜間外出記録

2020年12月24日午後6時半ころ、私は実家に行っていた。

サックスを鳴らす前に、玄関マットを丸めて玄関の上がり口に関所を作り、鳴らしている間に掃除しようと廊下にルンバを放つ。

客間でサックスを鳴らしていたら、玄関先で父と母が言い争っている声がする。

「今から歩いて行ったら、夜なのに危ないよ!

梨(私だ)に乗せて行ってもらい!」

母が私の名前を出している、なんでだ?

私は客間から顔を出して玄関先を覗いた。

そうすると、父がルンバを堰き止めるために築いた絨毯の関所に引っ掛かっていた。

「何、今から出かけるん?
雨降っとるよ、どこ行くと?」

聞きながらふと思い当たる。

「あ、もしかしてキャンドルサービス?

出かけるん?」

近所の教会では毎年クリスマスイブにキャンドルサービスをしており、アコーディオン演奏などをしているのだ。

「そうよ!
タクシーが捕まらんけん、歩いて行くって言うとよ!
車に乗せて行ってやって!」

「は?歩いて?

何時から始まるん?」

関所を乗り越えてやっと土間に降りた父が答える。

「7時だ。

タクシーに電話をしたんだが、いっぱいで回せないと言うんだよなあ。

歩いて行こうと思って。」

「は?
7時?
間に合うわけなかろう、車回してくるからちょっと待って。」

近所とは言っても教会までは2キロ以上ある。

既に時間は午後6時45分。

真冬、小雨が降って足元が悪い中、片目しか見えず(それも弱視)、よろよろの85歳が15分で着くわけがない。

母が言う。

「あんた(車に)乗ってきとらんとね。」

事前に分かっていなければ、乗ってくるわけがない。

うちから実家までは徒歩2分である。

「乗ってくるわけなかろ。

ちょっと車回してくるから待っとって。」

こういう時の父は止めても絶対に聞かないので送ったほうがマシなのである。

ルンバのために丸めた絨毯を乗り越えようとする父を止め、車を回してくる。

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父を乗せ、教会へ向かう。

「歩いて行く気やったん。

絶対時間までに着かんよ、着いたときには終わっとる。」

そう言うと、父は、

「電話したら、年末でタクシーが出払っていて回せませんと言うんだよなあ。」

と言うが、このやり取り、去年もしたような覚えがあるな?

父はいい加減な男なので、時間が分かっているなら事前にタクシーを予約しろと何度言っても常に直前にしか電話しないのだ。

まあそれはともかく。

「帰り何時?
どうせタクシー捕まらんやろうから、電話し。

車回すわ。」

父の返答。

「ああいや。

誰かタクシーを予約していると思うから、便乗させてもらうよ。」

こんの、クソ親父💢

なんで根本的に他人頼みなのかな?

多少の憤慨はありつつ、送って帰宅した。

当然、父から迎えを頼む電話はなかった。

(終わり)

投げ銭歓迎。頂けたら、心と胃袋の肥やしにします。 具体的には酒肴、本と音楽🎷。 でもおそらく、まずは、心意気をほかの書き手さんにも分けるでしょう。 しかし、投げ銭もいいけれど、読んで気が向いたらスキを押しておいてほしい。