ポエム「拝啓 あなたの帰りを待っています」
寒い冬のある日。
桜色のびんせんに、はがゆい思いを託す。
ペンをとりながら、雪が解けようとする頃の、あの優しい春風の暖かさと目に飛び込むピンクの花びらが脳裏に浮かぶ。
あと少し、あと少しの辛抱。
4月になったら彼が日本に帰ってくる。
『あなたの帰りを待っています。どうぞ体には気をつけて』
思いとは裏腹に、飾り気のない文章をしたためて、エアメール用の封筒に入れる。切手は日本の風景がデザインされたものにしよう。
あなたの故郷を思い出せるように。
そして、あなたの帰りを待つ私を忘れないように。
どうぞ、無事に帰ってこられますように。祈りを込めて赤いポストの中にそっと委(ゆだ)ねる。
私の思いよ、どうか遠い地で夢を追いかけるあの人のもとへ。