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②元日の能登半島大地震――「国民の安全を守る」とは? 佐久・望月―式部からの発信~鳴き続ける蟋蟀(こおろぎ)でいたい(農民作家・飯島勝彦)

元日の能登半島大地震――「国民の安全を守る」とは?
 
元日から大変なことが起きてしまった。
 新年の初日を家族で祝う夕餉前の団らんを、突如震度7の大地震が襲った。
 能登半島では群発地震が続いていて、この2年間も毎年震度6前後が起きてはいたのだが、これほどの激震に遭ったのは初めてだという。
 長野県東部にあるわが家(県地図の諏訪湖から軽井沢に直線を引いた中間点)でも、居間に掛けた鏡が左右に大きく揺れ、炬燵にしがみつく時間が20~30秒間続いた。東日本大震災では庭へ飛び出したが、今回は夕闇が迫る屋外に出そびれた。佐久は震度4と表示され、前回の5弱より低かったが、室内での体感はそれよりも激しく、自然界の脅威に改めて恐れをなした。
 すでに3週間近くたったが、過疎地ゆえの道路網の脆弱が水道・電気などインフラの復旧を遅らせ、救援物資・作業機具やボランティアの活用をも遅らせている。
 むかし、能登島大橋ができた時に、「式部ドライブクラブ」で渡り初めのドライブ旅行をした。島には役所や小学校があり、イメージと違う大きさだったこと。七尾から最端の珠洲をまわり輪島へ到る道中で、若い人の姿が見えなかったこと、が印象に残っている。
 人口減や空き家の増加はわがムラも同様だが、過疎地ゆえにインフラの不備に慣らされ、災害対策がおざなりにされてきたツケを、いま被災地の方々が命懸けで払わされている。
 さらに、震源地には北陸電力の志賀原発(1・2号機とも停止中だが、2号機は再稼働を申請中)がある。「異常なし」の当初報告が、「津波の浸水で冷却水が漏れ」「変圧器の油漏れで外部電源が一部不通」など、「異常」が後になって発表されている。停止中とはいえ、放射線漏泄の危険は常にある。
 今回の脅威は、活断層の揺れが150㎞に及び、海岸線に80kmにわたる地殻隆起が起きていること。隆起は輪島市で最大4m、珠洲市で2m。道路が割れ、海岸が沖へ出張り、石川・富山両県の漁港8割が被害を受けた。また津波は半島の北東部を中心に最大4mをこえ、被害は190haに及ぶという。
 さらなる脅威は周辺に原発がひしめいていること。志賀原発では、海側敷地内の一部が逆に沈下したという。これも恐ろしい。1ヵ月前にここを視察した経団連の十倉会長が「一刻も早く再稼働できるよう心から願っている」と語った。こういう者がこの国の経済界のトップにいるのも恐ろしい。
 航空映像を見ると、日本がいかに山国であるかを認識させられ、能登半島も然りである。山襞にクモの巣のように張りつめた河川に、雨水や雪溶け水が土砂を巻き込んでダムを作り、決壊して川沿いの人家や耕地を埋める。その無数の危険な状態が、今も、雪どけの春までも続く。
 「すべてかちゃかちゃ(ぐちゃぐちゃ)だ。もうここで暮らすことなんてできない」 まだ50代の被災者のことば。
 「70年住み慣れた家だけど、もう住めないかも」 私と同じ80代の老婦人の言葉だ。築70年は我が家と同じ。その生家を、晩年になって捨てなければならなくなった心情に胸を塞がれる。
 国民の安全を守るのが国の役目ならば、地震・原発・台風等の防災対策が第一で、アメリカから膨大な兵器を買い、軍事基地を増強し、他国とともに他国を攻撃するための予算が第一ではおかしい。
 国民の安全を守る一つが食料の確保だが、6割以上を輸入頼みの状態が続いている。
 世界的な戦乱や異常気象でさすがに不安になったのか、政府は25年ぶりに農業基本法を改定し、食料不足の「有事体制」として強制作付け・強制就農を義務化するという。が、農山村の現状は住民が減り、耕地は荒廃し、若年(?)の中核農家は人口の1パーセントにも満たない。
 元日に公民館でやる集落の新年会は、インフルエンザとコロナ不安で中止すると、先月初めに回覧板がまわった。去年までは農家組合が主催したのだが、JAの都合で組合が解散になり自治会(区)の行事に変った。JAと農家のつながりは戸別対応となり、集落の農業離れも進んでいく。机上の空論と嗤うほかない。
 戦争(ありもしない)(あれば国が終わってしまう)を煽り、軍拡のために金を使うな。辺野古の大浦湾に、完成する見込みのない米軍飛行場を造るな。何十兆円の金(工事の警備料だけで、1日2100万円)は、災害の復旧と防災に。欧米並みの農産物価格保証に。漁業・林業の復興に使え。
 法律を作った者が、ウラをかいておのれの腹を肥やし、みんなでやれば怖くないと罪を犯し、それでもほゞみんなが無罪になる。肺気腫にはよくない芝居を、新年早々から見物させられている。舞台の役者と、被災地の方々と、この格差はなんなのだ――。

『信濃毎日新聞』の「やまびこ」へ 
只今上映中
「源氏物語」――大河ドラマ
「平家物語」――国会劇場
 請うご期待 (佐久市・嗤ふ悠々)
と、1月10日に投稿した。未だ載らないからボツになったようである。

 (2024年1月20日)


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