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堂本印象美術館に行った話。

珍しいデザインの羊羹を、インスタでたまたま見つけた。

調べてみると、京都にある堂本印象美術館という場所で販売されていることがわかった。

なんでも作品からイメージされて製作された羊羹なのだそうで、気になった私は現地に向かうことにした。

京都三条からバスに揺られ、のんびりと到着。
バス停を降り後ろを振り向くと、澄んだ空の色に映えている真っ白な建物が在った。

堂本印象美術館とは

1966年、京都の日本画家・堂本印象によって設立された美術館。

ヨーロッパの邸宅や宮殿を参考に印象自らによってデザインされており、外観から内装まで全てが独自の世界観のもと形成されている。

壁面はまるで建物自体をスケッチブックにしたような装飾で、それがひとつの芸術品であることを感じさせる。

正面玄関ガラス戸取手は羊羹のデザインと同じ絵で、ひとつひとつ柄も色も異なり、設立者自らが監修しているだけあり各所にこだわりが散りばめられている。

堂本印象とは

1891年~1975年。本名三之助。

京都市上京区に代々続く造酒屋「丹後屋」の三男として生まれる。

幼い頃から画家を志し、27歳の時に現在の京都市立芸術大学である、京都市立絵画専門学校入学する。

第1回帝展に『深草』が初入選して以降、日本画家としてその名を轟かせる。

1929年の第10回帝展に出品された『木華開耶媛』は、作品の中でも特に人気の高い代表作のひとつである。

昭和初期には、仏画のほか、花鳥画、風景画といった日本の伝統らしさを中心としたものを描いている。

また、宗教画家としても活躍し、有名寺院の襖絵、天井絵、柱絵などを制作。

手掛けた障壁画の数は、晩年に至るまでおよそ600面に及んだ。

しかし戦後、日本画家として初の渡欧をした印象の画風はガラリと変化。

描く対象が古典的なものから現代へと焦点が当てられ、画風も抽象表現へと移行していく。

「伝統を打ち破り、新しい芸術の創造を目指すことが真の伝統だ」という理念に基づき、墨と岩絵の具を用いて描かれた『公響』は、海外からも大きな関心が寄せられた。

“概念にとらわれない“心

印象の作品を鑑賞していると、同じ人物が描いているとは思えないほど画風の幅があることに気づくだろう。

日本画特有の曲線や忠実に再現された花や鳥の羽など、どれも日本人ならば馴染みのある画風から一変し、抽象的でデフォルメ化された現代アートのような作品が目に飛び込んでくるからだ。

それでもよくよく観察すれば、表現の仕方こそ違うものの、根底にある「思想」や「理念」といったものは変わっていないことが分かるかもしれない。

描きたい思いは変わらぬまま、それを表現する方法や魅せ方を変えていく。

印象の絵からは、「変化を恐れない」「拒まない」という想いが伝わってくる気がした。

私も絵描きの端くれとして、型にはまったスタイルではなくもっと根本的に「自由」な発想で自分の世界観を持てれば幸せだ。

残念ながらその日は、お目当ての和菓子は完売しており、次回の新作に期待することにした。

カフェ「山猫軒」

美術館から道路に沿って少し歩いたところに、「山猫軒」というカフェがあった。

某小説に登場する店名と同じこともあり、内心恐れながら、半地下になっている店の扉を開けた。

店員さんが元気な挨拶で出迎えてくれ、日当たりのいい窓際の席へ案内された。

道路沿いの半地下にあるカフェだが車の騒音も聞こえず、落ち着いた木製のテーブルが並び静かな空間が広がっている。

創業1971年から続くこの店は、オーダーが通ってから作られる焼き立てのワッフルが人気だそう。

しかし優柔不断の私は、大きなバニラアイスの上に乗ったヤマネコ型クッキーのパフェに惹かれ注文。

実物の写真。


かなりのボリューム感で提供されたそれは、なんと焼き立てのワッフルも添えられており、1つで3つの得をしたような気持ちになった。

近隣に立命館大学があるせいか、店内には学生の姿が見受けられた。

通学途中にこんな素敵なカフェと美術館があるなんて、なんて羨ましいことだろう。

その日の思い付きで無計画に訪れた場所だったが、とても良い思い出になった。

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