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五味太郎作品展「絵本の時間」3


五味太郎さんは350冊以上の著作を持つ絵本作家。
サンケイ児童出版文化賞や
ボローニャ国際絵本原画展賞など
国内外で高く評価されています。
と、プロフィールは書いてみたものの
私自身は「小さい頃これ読んだ!」という
思い入れのある作品は、たぶん、なく
自分が親になってから知った作家さんです。
色使いやデフォルメ、構図と
もう全部のセンスが良過ぎます。


この展覧会は、原画展。
私と同い年の「ばったくん」をはじめ
「百人一首ワンダーランド」「ことばのいたずら」
「くじらだ!」「がいこつさん」
「きをつけて1」「まどから おくりもの」の
計7作、全ページが飾られています。
会場も広過ぎず、じっくり見て回っても疲れません。
むしろ、もうちょっと見たかった、と思わせる辺りが
展示として成功しているのだと思います。

なにより、
近くに絵本が置いてあるところがとっても親切です。
原画展の面白さの一つは、印刷物との違いを味わうこと。
絵本では厚めの塗工紙になっていても、
原画ではでこぼこのあるマットな画用紙で、
仕方ないのですが、色味もまったく違います。
人が少ないのをいいことに、
「まどから おくりもの」は
置いてあった絵本を片手に
原画と見比べながら歩きました。

1ページ目の空から全然違う。
原画は同じ黒でも濃淡や陰影があるけど、
印刷ではベタッとした黒に仕上げています。
全体的にコントラストが高く、
赤みと黄みが浅くなっていました。
原画では、かちっとしていた線が、
印刷では、ぼやけてしまうのも興味深かったです。

今回の展示で一番好きだったのは「がいこつくん」。
五味太郎初心者なので、初対面でした。
カッコよかった! と感動して絵本を見たら、
やっぱり色味も違うし、線もゆるくて、
悩んだ末に、保留にして帰ってきました。
今も悩んでいるので、近々買ってしまうと思います。

絵本にするための絵が
今回展示されている絵です。
絵本の販売価格は1000円前後ですから
画集のようにこだわった印刷はできません。
気に入らなかった部分は切り抜いて
描き直したものを組み込んでいるところを見ると、
ご本人もすごく割り切っていらっしゃるよう。
手頃な価格で絵本を楽しめる豊かさも、
もちろん理解しているつもりですが、
原画を見ると、やっぱり印刷物より魅力的。
作者は何とも思ってないのに、
勝手に複雑な気持ちになってしまいます。
と、そんな私的な悩みは置いておいて、
普段は絵本を楽しんで、
見れるときには原画展で原画を楽しむ。
結局これが正解なんですね。


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