ほら、私が我慢すれば…。

本当は打ち明けてしまいたいような心の苦しさを、誰にも言わないでおくことが多い。今はきっと相手も忙しいだろうから言わないでおこう、とか適当に言い訳かまして自分の奥底にしまい込んでおくのだ。私が一番心を開いているであろう恋人にすら、いや恋人だからこそ？ 本当は話したいけれど話せずにいることがいくつもある。

当然、相手はそんなことに全く気づいていない。気づかないまま幸せに生きてくれと思いながら、どうかこの私の抱える苦しみに気づいてくれと願ってしまう。

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実生活の私は真面目でヘラヘラした人間だ。大抵、さほど努力もせずに（実際していないところもあるが）楽に人生のレールを外れずに生きている人間に見えるだろう。
それは人に心配をかけずに済む点では良いのだけれど、しんどい時に人に頼れない原因にもなる。

真面目なのは元々の顔つきと変なところで発揮される完璧主義のせいでそう見えているだけだ。ヘラヘラしているのは出来るだけ人に攻撃されないため。私は普通にめちゃくちゃ性格が悪いので、心の中で暴言を吐く時もあるし、自分が傷つきたくないので本音はほとんど話さない。でも私の本音に気づいてほしい。
本当は自分の思っていることを全部ぶちまけて、「辛かったんだね、ごめんね。もう大丈夫だよ」と優しく抱きしめてもらえる悲劇のヒロインになりたい。ただ私は常識的な大人なので、感情のままに自分の思いをぶちまけることは（それが必要かつぶちまける空間の心理的安全性が高い場合を除き）ない。「善い大人」になりたい私は、ぶちまける代わりに、放出したかったはずの思いを全て自分で消化しようとする。

それは、嫌なことも苦しいことも悲しいことも、全部一人で飲み込んで、飲み干してしまえる人が「善い大人」なのだと思ってきたからだ。それこそが正しい大人の姿なんだと21年間思い込んできた。だから、苦しみや悲しみは出来るだけ押さえ込んできた。そうしたらその苦しみ達は、気づけば黒い霧となって心全体を侵食していた。霧が晴れる前に、新しい霧が生まれる。その繰り返しの中で、一体私の心が健康的だったことなどあったのかさえ忘れてしまった。

そろそろ社会に出るような年頃になって、私は1人で私の感情を処理できない。そんな未熟な自分が本当に嫌いだし気持ち悪いので早く消えてほしい。

だいたい「あなたに話したい」なんて言うのも、自分が話して一方的にスッキリしたいだけなんだよな。私はどこまで行っても自分本位で浅ましい。だから私の心の奥にあるものは固く閉じて鍵をかけて、より奥の方へ追いやっておかないと。

私が言わなければ、きっと物事は円滑に進む。私が言わなければ、余計な心配をさせずに済む。それなら私だけがこの苦しさを、不安感を、焦燥を、感じ続ければいい。私にしか被害がないなら、それは被害者がいないことと同じ。