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『僕と魔女についての備忘録』(「ベツフラ」)を読んでいます。

前回に引き続きベツフラ内の作品のお話。

▼『僕と魔女についての備忘録』三つ葉優雨

異端な家族の穏やかな日常に漂う、すきま風のような切なさ。

“人間の青年と魔女の、すれ違う生涯と恋…☆”
――「ベツフラ」1号 商品ページより抜粋

100年以上の時を生きる“魔女さん”が、親に捨てられた少年“”(わたる)と過ごした日々を描く物語。
2歳で捨て子となった渉は森の中で魔女さんに拾われ、言葉を話す黒猫“蛍”とともに暮らすようになる。
親でもなければ人間でもない女性との、普通じゃない家族の暮らし。けれども渉の暮らしには、“普通の幸せ”と、“普通じゃない幸せ”のどちらもが満ち溢れていた。
いま、魔女さんの目の前にあるのは、机に乗り切らないほどのたくさんのノート。
渉が“忘れたくないこと”を書き記したノートたちから、二人の日々が紐解かれていく。

……あらすじはこのような感じです。
僕のあらすじで伝わっているか自信は無いのですが、とても切ないお話です。
作中で描かれる渉と魔女さんの交流は、本当に幸せそうに語られているのです。美味しい栗ご飯を作る渉を魔女さんが褒めちぎったり、「捨て子だ」と学校の友人から後ろ指をさされても、二人で絆を毅然と確かめ合ったり。普通とは違っていても、何人も貶めることのできない穏やかな幸せが二人の暮らしには流れています。

そんなほっこりした日常が描かれていながら、すきま風のようにひんやりした切なさが、この作品には常に漂っているように感じるのです。

数百年の時を生きる魔女と、短すぎる人間の生涯。
渉が魔女さんに話したがらなかった、“忘れたくない”たくさんのこと。
普通の幸せの傍らで、普通の家族ならきっと生まれなかった気持ち。

ほんの少しずつ生まれていくすれ違いも、それを正そうと踏み込めば、優しく温かな時間は壊れてしまうかもしれない。
二人の繊細な関係と、“魔女”というワクワクと危うさ・妖しさが隣り合わせな題材とが重なり合っているのが、僕がこの作品に苦しく、もどかしくも惹かれていく魅力だと思っています。

絵が好き。

三つ葉先生の絵が好きです。
『僕と魔女についての備忘録』のタイトルに対してこの絵、最強だと思いません?

僕が三つ葉先生の作品に触れたのは前作の『share』が最初だったのですが、そのときも『僕と魔女についての備忘録』に感じたようなひんやりした絵の雰囲気が素敵だなぁと思ったものでした。

上でも書いたように『僕と魔女についての備忘録』は「穏やかだけど、踏み込めば壊れてしまいそうな繊細さ」が続きを読みたい気持ちを掻き立てる魅力だと僕は思っていて、そのドキドキは『share』でも感じていました。
この「不安定な心地よさ」を涼やかな絵で表すのが三つ葉先生はとてもお上手だなあ、堪らないなあと僕は魅了されています。
ヒロインのミステリアスな魅力が艶やかな『花園さん、結婚するんだって』も好きです。

なんて偉そうに語りながら恥ずかしいことに過去作を全部読んでいるわけではないのですが、『山岡くんのヒミツの恋バナ』をはじめガーリーな絵柄の表紙もめちゃくちゃかわいいなあ!とテンションがあがっており、こちらもこれから読むのが楽しみになってます。

僕と魔女についての備忘録
魔女さんと渉がこれからどれだけの言葉を交わし、すれ違い、心を溶け合わせていくのか、とても楽しみです。この作品超好きです。
4話が更新されてまだ走り始めたばかりの物語ですので、ぜひぜひ1話から追いかけてほしいと思います。


今回はここまで。次回はベツフラじゃない作品になるかもしれません。

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