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スマホなどの利用時間(スクリーンタイム)とeスポーツの関係

こんにちは、NASEF(North America Scholastic Federation/北米教育eスポーツ連盟、以下NASEF)日本支部です。

今回はNASEFの活動ではなく、eスポーツと教育を語る際に頻出する用語「スクリーンタイム(Screen time)」についてお話ししてみたいと思います。

スクリーンタイム、その意味は?

「スクリーンタイム」という単語はiPhoneのiOS 12に同名のツールが導入されたこともあり、見覚えがある方も多いかもしれません。おおまかな意味は「画面の時間」という直訳通り、「一日にディスプレイを見ていた時間」です。

でも、なぜこれがeスポーツと教育を語る上で頻出するのでしょう?

実は諸外国では、未成年(特にティーンエージャー未満)向けのスクリーンタイムについて様々なガイドラインや推奨時間、あるいは法規制が出されているのです。2018年に英国Telegraph誌で取り上げられた例を挙げると:

・米国(米国小児科学会):スクリーンタイムのガイドライン

・英国(英国国立医療技術評価機構):保護者に向けて助言を提供
・台湾:保護者が子供に過剰なスクリーンタイムを許した場合に罰金刑

などがあります。いずれも主旨としては「乳幼児~ティーンエージャーのスクリーンタイムが長くなるほど健康や発育に悪影響を及ぼす」ということを述べています。「未成年とスクリーンタイムの関係」は様々な研究が行われており、その結果は(研究の主旨や手法、目的がそれぞれ異なることもあり)一致してはいません。

例えば上記の英国国立医療技術評価機構のWebサイトで公開されている文書(PDF)の一部では肥満や運動不足との関係性について言及されていますが、この文書発行時点では「各種研究目的がスクリーンタイムを減らすことに注目しすぎていて、それ以外の要因との関係を判断するには懸念が残る」としています。

筆者考察

ここからは筆者の個人的な印象になりますが、こういった議論や研究では、傾向として「スクリーンタイム」は受動的なコンテンツ消費と定義されることが多く、その結果として他者との交流スキルやコミュニケーション機会を失う、学習/睡眠時間に悪影響が出る、運動する機会が減るという議論になることが多いように見受けられます。

しかし、同じ2時間のスクリーンタイムでも、
・ベッドの中で眠くなるまで暇つぶしに動画を視聴する
・適切な環境下でeスポーツを通じ協調性やコミュニケーション手法を学ぶ
・動画を見て作ることに興味を持ったから動画編集についてYouTubeで学ぶ
といったようにその「中身」は様々です。

デバイス(PC、スマホ)、メディア(動画、ゲーム、アプリ)、用途(暇つぶし、学習、娯楽)が増えたからこそ、これらをひとまとめにして論じるのは、「筋が悪い」のではないか?というのが現状に対する筆者個人の印象です。

「良い」スクリーンタイム

そして「中身」によっては、スクリーンタイムの評価は大きく変わりうるのではないかと考えます。

現在デスクワークに従事する大人ならば、一定以上の(各種若年層向けガイドラインをゆうに超える)スクリーンタイムを避けられません。そんな2020年を生きる若者にとってもスクリーンタイムを避けることは難しいものです。
それならば、「未成年にとって良い影響を与える」スクリーンタイムを生み出す環境を整えることのほうが、より健全な議論になるのではないでしょうか。

実はこのアプローチ、既に実践に移している国があります。次項ではそちらについてご紹介しましょう。

英国British Esports Associationの取り組み

先日NASEFは日本に続き英国とも国際連携を発表しました。その英国の「British Esports Association(英国eスポーツ協会、以下BEA)」は設立当初の2017年からeスポーツと健康・睡眠といったテーマについて積極に情報発信し続けてきた団体です。

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たとえばこちらの投稿(英語)では「練習の時間と頻度」について具体的なアドバイスを提示している他、リーグ・オブ・レジェンドのトッププレイヤーであるFnatic Rekkles選手(世界トップクラスの現役選手です)による実体験を交えたアドバイスも紹介しています。またこちらの投稿(英語)では「運動・睡眠・食生活」に関するアドバイスも提供しています。

筆者はBEAの設立者Chester King氏が来日した際にお話したことがあるのですが、同氏はeスポーツタイトルが「チーム競技で、コミュニケーションが重要で、高度な戦略を練る必要があり、感情コントロールが必要になる」という条件を満たす場合、そういった”学び”を適切に促進する環境さえ整えばスクリーンタイムは時間つぶしではなく成長の場になると考えている、と語っていました。プレイヤーの1日のスケジュールマネジメントや身体的健康の維持・運動を研究、推奨するBEAの設立者もこのように考えているのです。

さまざまな点でビジョンを共有している私たちNASEFとBEAが今後も活動を続けていけば、より有益な成果・エビデンスが提示できる日がやがて訪れるかもしれませんね。

おわりに

もちろん小学生低学年以下の児童とスクリーンタイムの関係についてはさらなる研究結果を待つべき点もあるでしょう。しかし、ティーンエージャー以上若者については「スクリーンタイムの中身」を考慮し、「より良い環境(ガイドライン含む)作りに着手することが重要では?」という考え方は今後日本でもしっかりと鑑みていく必要が生じることになるかもしれません。

私たちNASEF日本支部でも、また有益な情報が公開され次第紹介していきたいと思います。今回はこれを締めくくりにさせていただきます。

それではまた、次の記事でお会いしましょう。

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北米教育eスポーツ連盟(略称NASEF)は、教育を受け、想像力に富み共感力のある人材を育て、すべての生徒が社会におけるゲームチェンジャー(改革者)になるための知識やスキルを身に着けるために取り組む教育団体です。