一緒におじいさんを助けた「同志」(3)
第一話。
第二話。
「なさじさん!昔、大雪の中でおじいさん助けた話、ありましたよね!」
2019年11月15日(金)。
私は、私の課の飲み会に参加していた。20人以上いた一次会から、二次会では6人になっていた。その中にいた後輩が「若かったときのお酒の失敗談」を披露し、順々に自分の思い出話をしていた。
8年前のあの話を覚えている人がいて、私は、その話をすることになった。
2011年12月の話。システム移行で夜遅くに帰ろうと急いでいたら、前方に酔いつぶれ歩けなくなったおじいさんを発見。このままでは凍え死んでしまう。それを若い女性が助けようとしていた。通りかかった私は彼女とおじいさんを抱えながら、なんとか家まで送った話。その後、彼女から連絡先を聞かれ、教えたんだけど、なかなか連絡が来なくて・・・
「え?え?で、どうなったの?」
同僚(私の二つ年上のお姉様)が、前のめりで追及してくる。
その日はメール来なくて。で、年も明けて。俺が渡しただけだから、こちらからは連絡の取りようもなく。こりゃ、書き間違えたか、読み取れなかったか、かな。と思って・・・
「で?で?メールは?来なかったの?来なかったの?」もう一人の年上お姉様も詰めよってくる。
あきらめかけた頃。メール来たの。一ヶ月後ぐらい。
「えー!!!」(お姉様達、大騒ぎ)
で、メールのやり取りが始まって。相手は一回り下の26歳。「近いうち会いましょうか」って、なって、会ったの。
「えー!!!ほら!ほら!ここの席空いてるから呼ぼうよ!」(お姉様A興奮)
「やりますねー!なさじさーん!」(お姉様Bも興奮)
8年も前の話だよ!いやいや、あれから連絡してないし。来るわけないでしょ。もう昔の話。
「いや、なんか送ってみたらいいじゃないですか!」とA姉さん。
まあ。まあ。落ち着いて。落ち着いて。もう昔の話だし。他の話しよう。
ひとまず、別の話題に流れ、少しずつみんなの意識も分散されていった。
飲み会の中、私は、8年前のその彼女のアイコンを探してみた。LINEのアイコンがあったはずだと思って。
あった。スタンプをひとつ、押してみた。23:16
23:21
「わ!」
「憶えてますか!?」
思いもよらず、二つ、そこに表示された。
つづく。
いつも読んでいただきありがとうございます。