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バイスティックの7つの原則~統制された情緒的関与~

先回の記事では「意図的な感情表出」についてまとめました。


今回は引き続き、バイスティックの7原則のひとつである「統制された情緒的関与」についてまとめます。

「統制された情緒的関与」とは何か。私自身がどのように理解し、日々の支援で意識しているのかを振り返ります。


統制された情緒的関与とは

再びwikiから抜粋します。
“ワーカー自身がクライエントの感情に呑み込まれないようにすること”とあります。
つまり、ワーカー自身が自分自身の感情の揺れを自覚しながら、それを出すのか出さないのかを制御した上でクライエントと関わることだと理解しています。

私たちワーカーも人間です。いろいろな経験を経て、支援の場にいます。
中には辛い経験を経て、その経験を活かしたいと考える人もいると思います。
そうでなくても、相手の話を聞く上では、大事だと言われている「共感」をするために、その時の情景や、クライエントに起こったであろう感情の変化をイメージします。
自分の中に似たような経験があればあるほど、そのイメージは生々しくなり、ワーカー自身の感情を揺らすことがあります。実際に悲しくなるし、憤りを感じることもあるでしょう。感じることそれ自体は別に問題ではないと思います。
ただ、感じたままにその場で表現してしまうことは一考した方がよいと思います。

クライエントと同じ感情を持てたとしても、それをそのまま相手に伝える必要があるかどうかは整理してよいと思います。
こういった整理ができない状態が、いわゆる「クライエントの感情に呑み込まれた状態」だと考えます。

上記の例だけなく、クライエントから発せられる様々な感情は、時にワーカー自身に向けられます。
馬鹿だな、日本語を学び直せと言われたこともあります。
まあこの例人格否定も大概なので別に怒っていいと思いますが・・・(福祉職は怒ってはいけないと思われ過ぎでは?)。

ともあれ、クライエントの言動にはやはりワーカーは感情が揺れるものです。
その時に、一方では冷静に「私は今、クライエントの悲しみに対して悲しみを感じている。さて、どのように伝えるか、伝えるべきか」と考えながら話を聞いてみることが大事だと考えます。

目的としては、そのように冷静に接することで、クライエントのニーズを中立の立場からみることができますし、感情とは別の視点でその後の支援や対応を検討することでしょうか。
最も、互いに人間なので感情を排することはできませんし、それならば機械がやればいいのです。感情を整理した上で、乗せる感情を選んでいくことがポイントなのかも。

自分が意識していること

どうしたってあらかじめ自己覚知しておくことは重要だと考えています。
自分がどのようなテーマ、内容の話題に心が揺れやすいのか。感じやすい感情の傾向はあるか・・・など。

私の場合はひとつ、家族関係のことには揺れやすいと思います。例えば親が障害に理解がないといったものや、親本意で子どもが割を食っているとか。
「親」という漠然としたものに対して、「こうあるべき」というのが自分の中には恐らくある。なので、それを満たしていない家庭で子どもが実害を受けている時には憤りを感じやすい。
また、感情では「怒り」を感じやすい傾向があると思います。「なんで」という感覚が怒りに繋がっているような。

と、これらをあらかじめ整理しておくと、家族の話題になった時に「よしこい」と構えることができます。話を聞いている中で、やはりもやもやしてくるわけです。
そこで一息「じゃあなんでこの状況が起こっているのだろう」とその背景を考えようとします。「なんでだよ」と親の概念に対する怒りを抱える前に、クライエントの家庭の状況や、可能であれば親の考えを聞いてみます。
その上で納得できない回答もありますが、そこも想定しておけばいい。
「これやっぱダメ親だー!」となるけど、この「やっぱり」とかが怒りを抑えてくれるミソになっているように思います。

この、「ダメージを負う前に自分の弱いところにガードを構えておく」という過程を踏むことで、割と冷静に自分を受け止められると思います。

それと、自分の感情を見つめた後には、それを出すメリットとデメリットを考えます。
この自分の中の「疑問」や「怒り」を相手に「質問」や「助言・指摘」という言葉にして伝える。そこに自分は何を求めているか、何を得ることができそうか、相手の反応はどのようなことが想定されるか、その反応のフォローは可能か・・・などなど。

普段からここまで考えているわけではありませんが、分解していくとこのようなことになります。
特にポイントとなる部分についてはよくよく意識しますが、近況の確認のようなことならばそこまで深くは考えていないかも。
自分は「怒り」が表出しやすいと自己覚知しているので、「怒り」のスイッチが入った時には敏感になります。実際に把握はできませんが、他の喜哀楽については、割合で出すと意識してないことが多い結果になるでしょう。


まとめ

この原則は特に大事な点だと思います。
相手に巻き込まれずに自分の感情を扱うという点。感情労働と言われる業務では特に重要なスキルかも。
感情を出してはいけない、というわけではありません。吟味して、コントロールすることが大事だよということ。

重要なのは自分の弱い部分を知っておき、相手からの攻撃(攻撃ではない)に備えること。そのために自己覚知は重要です。
またこれらは経験がものを言う部分なので、都度振り返りができるといいですね。

統制された情緒的関与を以て、相手の話を引き出し、正確なニーズ把握と合理的な見立て、方針立てをおこなう。
そんな風になれたらよいと私は考えています。あくまで理想で、ゴールなんてないのでしょうけれど。

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