見出し画像

バイスティックの7つの原則~受容~

先回の記事では「統制された情緒的関与」についてまとめました。


今回は「受容」についてまとめます。

「受容」とは何か、私自身の理解も交えながら、実際の支援の場でどのように意識しているかを記載します。


受容とは

いつも通りwikiからの抜粋になります。
“クライエントの考えはクライエント自身の個性であるため、頭から否定せず、どうしてそのように考えたかを理解する必要がある。ただし、受容とは反社会的なことなどを含めて受け入れるということではない。あるがままの姿を捉えることと、すべてを受け入れることは違う”

つまり、なぜクライエントがそのように考え至ったかを理解するために、たとえ反社会的な発言であったとしてもまずはその思考の経緯を聞き取る必要があるということ。
そして、クライエントの考えを全て受け入れるということではなく、あるがままを理解することを指して「受容」と言っているとのことでしょうか。

相談支援の中で、本人の考えや意見を聞くことがあります。一見、意味が解らないことであったり、一般的には不適切なことを話されたりすることがあります。
そのような話題に出会った時には、「いやいや、そんなわけないじゃない」と思うかもしれませんが、それだと否定になってしまいます。
なので、「なぜそう思ったのですか」のように、その考えに至った経過を確認しましょうということです。
その経過を知ることを繰り返すことで、本人の思考の癖や傾向が見えてきますし、同じような場面になった時にどうなるかという見立てができるようになります。
また、本人としては「聞いてもらえた」という実感を持つことができ、信頼関係の構築にも繋がると思います。

聞くことの根幹であり、「受容」の姿勢はその後の支援の関係性に大きく影響するので、大事にしたいポイントだと思います。

自分の意識や注意している点

先回まとめた「統制された情緒的な関与」と密接だと感じます。
ワーカー自身の価値観では「ありえない」という話題が出てきた場合でも、「それはなぜ」と冷静に聞いていくことが重要です。これは結構な労力になることもあります。

また、先述した通り、「何でもかんでも受け入れる」ということではありません。
特に就労支援の場合、いわゆる「一般論」という非常にあいまいで、エビデンスが薄い、だけど確実に存在するものと本人の意見を照らし合わせ、場合によっては「それは違うよ」と伝えることも必要になってきます。

その時には、なぜそのような考えになったのかは十分に確認し、「一方でこういった考え方もあるけれど」と一般論というやつを提示します。
その間の溝が埋まらない場合、就職してから苦労することが多くなるかもしれません。苦労が多くなることも含めて、「多くの人はこっちだよ」と伝えていきます。
本人の理解の幅や、納得の幅、その方法を確認し、できるだけ本人と一般論が折り合える形はないか確認していきます。

もっとも、「楽して稼ぎたい。週3日働いて月20万円ほしい」と言われてしまうと、そのような求人はないという現実を伝えることになるわけですが。
なぜそう考えるのかを聞いていくと、「そういうものだと思っていた」とか、本人の経験にないことがわかることがあります。こちらで情報を提供すると、「そっか」と納得される場合もあります。
この経過を踏むためにも、よく聞くことは重要ですね。

まとめ

「受容」は決して、すべてを受け入れようということではありません。
頭から否定せず、相手の考えや価値観の中身を理解しようとすることを指します。
その上で、現実を伝えていくのも支援者の役割だと思います。表面を見れば、「それは違う」という「否定」にも見えますね。

その前に「受容」という段階を踏み、相手との信頼関係を繋いでいくことが重要です。
よく聞いた上で、本人が現実に気づいている点があればそこを膨らませていき、全く現実と離れたところで考えているのなら、そこから生じる不利益を伝えていく。

「受容」は支援の根幹です。ここをないがしろにせず、相手とのかかわりを始めたいものです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?