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精神保健福祉士を目指すあなたへ⑧~現場実習について~

精神保健福祉士に限らず、福祉系の国家資格には現場実習が設けられています。
大学によっては3年時に、養成校などの専門学校は夏・冬に2回に分けてなど、国家試験対策と並行しておこなうところもあると思います。
実習に入る前には、教員と、もしくは実習先の担当者と「実習計画」のようなものを作成します。実習の目的、それに沿った内容の検討をおこなうものです。

私はまず、この計画づくりに非常に悩まされた記憶があります。担当教員が厳しい方で、「全然わかんない、やり直し」みたいなことが頻発しました。
そして、立てた目的に沿って実習をおこなうこと、その視点の持ち方が難しかった思い出。本来は支援者側に対する理解を深める場所だったんだろうな、と改めて感じる。でも、自分の視点はいつも利用者に向いていたような。それは間違いではないけれど、支援者のことを見る意識が薄かったと振り返って思います。

今回は、改めてどのような視点を持てばよかったと感じているか。実習中の体験や、実習中にどういった視点を持っていたか、これらを今どう思っているかについてまとめます。
こちらは参考までに。基本的には担当教員の言うことを聞きましょう。でなければ、あなたの大切な単位が危険です。マジで多少は信念曲げてでも教員の言うこと聞きましょう。資格試験受講の要件を満たしとかないと後が辛いぞ!
実りある現場実習は、本当にかけがえのないものです。国家資格に受かっても、受からなくても、そしておそらく、福祉の仕事に進まない判断をしたとしても。

私の実習体験

私が学生時代に経験した実習先は2ヶ所。
1つは精神科病院で、閉鎖病棟、開放病棟、デイケア施設を数日ごとに回りました。基本的には病棟やデイルームに放り出されて好きに行動するような感じ。特に病棟では患者さんと同じように徘徊して、場合によっては病室に入って患者さんと話をするといった過ごし方でした。気になったことは看護師さんに質問する。のだけど、なかなかピリピリしていて質問できず。昼休みは連携室に戻ってワーカーと一緒にご飯ですが、気が休まらないし、質問もなかなかできず。
デイケアではプログラムを一緒にやって、フリーな時間にはこれまた徘徊して適宜利用者さんと話をする。
基本的には気になる人に近付いて行って話を聞く。断られたり反応がなかったりしたらお礼を言って距離を取る。そしてまた別の人を求めてうろうろといった具合。ワーカーさんはその間は基本的には病棟に不在。連携室で事務をしたり、診察に同行したりされていたんだと思います。たまに新規で入院する方がいた時には、入院説明の場面に同席させていただくこともありました。後は土曜日に利用者宅の訪問に同行とか。後はその日ごとに発生する出来事に可能な限り同行する。たとえば、症状が悪化して暴れている患者さんを薬で落ち着かせる場面に出会ったし、いつもより気分が上がっている患者さんが翌日には保護室にいる、なんてこともありました。保護室まで行ってみたけど、疎通はできず。
振り返りは毎日担当者かいずれかのワーカーさんにしていただく。この時間は実際貴重でした。その日にどういう患者さんと話して、何を思ったか。担当のワーカーさんがそれを聞いてどう感じるかを振り返る。それを通して、入院中の人の状態像や感じ方をある程度知ることができたと思います。
一方で、じゃあその患者さんに対してワーカーが何をしていたかというと、見ている限り何もしておらず。その理由を聞くことさえ頭に浮かばなかったなぁ。余裕がなかったといえばそうか。結局、ワーカーが何を考えてどう動いているかをわからないままになっていたんだなぁ。

そしてもう1つはB型・自立訓練・相談支援事業が入った多機能事業所。
こちらでは主にB型の利用者の方の施設外就労に同行して、一緒に作業する体験をしました。ここでもほとんど事業所の支援者と一緒に何かをやる、というより利用者の人にそれまでの生活歴を聞く、今のこと今後のことをどのように考えているかを聞く、という体験に終始しました。
質問の機会も設けてくれたと思うけど、そもそも何を聞けばよかったのかわかっていなかったような。

このような状態を今改めて考えると、失敗だったなと思う点も多々あります。
それは恐らく、目的を設定してはみたものの、その目標を達成する、達成に近付ける視点を持っていなかったことや、そもそも目的が過大だったのかもしれないと振り返っています。

実習中の視点

一番は障害を持つ当事者の方が何を思っているのかという点に重きを置いていたと思います。次に、そういった方と関わった時の自分の心境や行動がどのようになるか。
相手を通して自分を見ていた、というのが正直なところかもしれません。それはそれで重要な自己覚知なのかもしれませんが、自分では自己中心的だな、というか、自分本位だなというか。「自分はこう感じた」で止まっていたんでしょうが、それでは足りないと思います。

というのも、自分が設定した目的はざっくりと①当事者理解②事業理解③支援者理解の3点でした。①はまあまあ満たせたかもれませんが、②と③が行方不明でしたね。実習中はそれっぽいことを書いていたけれど、改めて振り返ると、もっと知ることができたと思います。
しかし、実習中はそこまで視点が至らず。というか、どうやって知ればいいのか、とわからないまま終わってしまった感じでした。

結局精神科病院やデイケアは地域でどのような位置づけで他機関と連携し、当事者支援にどのような役割を持ち、その中でワーカーはどのような悩みや強みを持って関わっているのかを理解できなかったわけです。
就職して業務をこなしていく中で、病院の方と関わることが出てきた。あるいは「こういう時に病院と関わっていればな」と思うことも出てきたので、逆算して病院の地域での位置づけや役割を知る、イメージすることができているだけなのです。
この点は非常にもったいないと感じました。中に入って体験できることは、就職後には限りなく少ないからです。

改めて思うこと

まずその事業における支援者の役割を知りたかった。特に、どのような時にどのように悩み、考え、他機関と連携するのか。それを具体的な事例を通して知るべきでした。
患者や利用者がどのような経緯でその機関に繋がってきて、どのような目的で利用し、具体的にどう取り組み、どのような方法で本人をアセスメントし、どのような意図で他機関に繋ぐのか。その中での関わりの難しさや、工夫している点、事業の強みを支援者自身がどう感じているのか。それらを知ることができると、同じ機関に就職するイメージを持てたり、就職後に他機関連携を考えた際に、依頼する先が明確になったりするでしょう。

そこで、もっと実習担当者とコミュニケーションを取るべきでした。毎日振り返りをしてくれた時でさえ、話すのは自分の気持ちや感想に留まっていた。そこから踏み込んで、支援者がどう感じるのか、それに対してどう日々動いているのかを同行して見せていただくこともできたのかもしれません。支援者のいない病棟で、支援者の動きを知ることはできないとなぜ気付かなかったのか。
病棟に放り出された時、「こんな感じか」と、違和感を覚えながらも納得していた自分がいましたからね。その一瞬感じたモヤモヤを実習担当や巡回教員に伝えて、調整すべきでした。しかしこれは学生にはすごく難しいことのように思う。特に社会経験のない私には、日々の実習をやり過ごすことで精一杯な面がありました。

そして今、うちの相談室にも実習生がごくまれにやってきて、さらにごくまれに一緒に訪問に行くことがあります。その時には、自分がその時のやり取りで①何を目的にしているか②聞き取って何を感じたか③今後どうしていくつもりなのかを伝えるよう意識しています(老婆心)。主の実習担当ではないので、毎日顔合わせはできないですからね。可能な限り事前に時間を作って本人の情報を伝えて、もっと余裕があればあらかじめケースをまとめて書面で渡しておきます。
本当なら本人の実習の目的も聞きたいのだけど、それは当日の同行の車内になることもあるし、目的がうちの支援に伴っていないいわゆる「社会見学」的なことになることもあるのですが。それは依頼してきた実習担当が悪い。実習生は実習先の事業所や担当者の忙しさに振り回される生き物です。かわいそうなものです。受け入れるのであれば責任持てよといつも思う。
できれば自分も担当者としてやってみたいと思うこともあるのですが、そのためには研修を受けないといけないし、法人の方針としてうちの事業所が主で受けるようになってはいないし、同僚の理解も必要だしで夢のまた夢。じゃあ自分が管理者になったら、と言われると、どうかなー。その時の事業所の雰囲気にもよるかなー。

まとめ

自分の実習は自分の心の成長にはとてもありがたい作用を生みました。姿勢は明らかに変わったものです。その点は教員からもものすごく評価された。しかし、実際にどうかな、と思うと、もっとやりようがあったのではないかと思っています。
正直、実習担当のワーカーは毎日時間を作ってくれてはいたけれど、実際は忙しかったんでしょう。そして事業所として受け入れる時のスキームは未完成だったのだと思います。
自分自身も、目的を整理しきれないまま、具体的に体験したいことを整理しきれないままの実習でした。なので、言われた通りに病棟を徘徊するしかなかった。

本来であれば、支援者の動きを理解するための現場実習であるはず。もう少し目を支援者に向けるべきでした。といっても、表面的にみれば、利用者と何気なく話す、電話をする、面談をする、作業をする、事務仕事をする、とやっていることは見えます。ですが、その中でどういう考え、意識を持っているのか、その行動の目的や意図、電話の先の相手は何者で、どういう繋がりがあるのか、書いている書類の意味はなんなのか・・・など、目では見えないところを支援者に直接聞けばよかった。これがあるだけでだいぶ違うはず。

そのためには積極的に担当者とコミュニケーションを取るべきでした。それが難しいのなら、巡回の教員と。自分の中にモヤモヤがあるなら、それを伝える。それすら整理できないなら、相手の考える「よりよい実習」について意見を聞いてもいいのかもしれません。といっても、「それを考えてきたんちゃうんかい」と言われることもあるでしょう。特に実習担当には言いにくいか。じゃあ教員に言おう。
担当者や教員も現場実習の経験があるはず。どういった経験で、どうすればよかったと思うか聞くのも、いい材料になるかも。可能な範囲、自分のモヤモヤを明確にしていくためにどう行動するかを相談できるといいのでしょうね。なかなか難しいね。

自分は仕事をし始めて、ようやくそういうことを感じられるようになりました。これから実習する方もそうなるかもしれません。そうしたら、今度は後輩に還元していきましょう。
自分自身の実習での成功や失敗があるはず。それを後輩である実習生の糧になるように熟成させていきましょう。
もちろんお互いに考え方や価値観の違う人間だけど、「精神保健福祉士」としての根っこは、実習先や学校で形成されると考えています。少なくとも自分はそうでした。
他機関と連携する時に、一番ありがたいのは、事業の内容よりも、この根っこにシンパシーを感じられる人がいるということ。
実習生に教える。それってまさしく、自分の仲間や味方を増やしているということだと思うのです。

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